AP通信
2008年3月11日
全席売り切れとなったマジソン・スクエア・ガーデンのエキシビションで、
ロジャー・フェデラーはピート・サンプラスを下す
文:JAY COHEN


ニューヨーク( AP )――マジソン・スクエア・ガーデンにおける第3セット・タイブレークの最中、過去と現在がネットを挟んで対峙していた。

一方には息を切らしたピート・サンプラスがいて、エネルギーを掻き集めようとしていた。ニューヨークのファンに、地下鉄で帰宅する際の話題となる今一度の思い出深い勝利を贈るために。

もう一方にはロジャー・フェデラーがいて、悪戯っぽい笑顔を浮かべていた。年齢が元世界ナンバー1――彼の欲する14のグランドスラム記録を所有する男――を捕らえようとしているのを知っているかのように。

実際に、若者が要求を満たした。

現在のナンバー1であるフェデラーが、月曜日夜のエキシビションで6-3、6-7(4)、7-6(6)の勝利を挙げた。その試合はおよそ全て――笑い、傑出したショット、むらのあるプレー、魅力的なテニス――を満たしていた。

さらにタイガー・ウッズの姿も目撃された。

「テニスにとって素晴らしい夜だった」とサンプラスは言った。

もし目を少し細めて見たなら、それは年を取ったサンプラスではなく、かつてのサンプラスだったと断言するであろう場面があった。もしラケットが空気を切る唸りを聞いたなら、フェデラーは絶対的に全力を出していたと確信するだろう場面があった。

さらに、サンプラスが怒ったふりでラケットを投げつけるのを見たら、あるいはフェデラーが1ゲームで放った4本のエースを祝うべき人差し指を上げるのを見たら、試合の勝敗は大して重要ではないと言える場面もあった。

「今夜は、勝ち負けはそれほど問題ではなかった」とフェデラーは語った。「僕たちは共にベストを尽くし、楽しもうとしていた。そしてそうなったよ」

約2時間半の間、19,690人の時に無秩序で騒がしい群衆を前に、これら2人の生きて呼吸するテニス界の偉人はコートを共有した。フェデラーは超モダンな黒一色の装いで、サンプラスは保守的な白のウェアを纏っていた。

それはピストル・ピート対フェデラー急行の対決だった。

それはサンプラスがその日早くに、「善玉対悪玉」とくすくす笑いながら言ったものだった。

一方は26歳で他方は36歳である事を考えれば、確かにその対決は「どちらがより優れているか?」の議論を解決するものではない。誇りだけが懸かっていたのだ。そして、率直に言って、各自がどのくらい激しく試みていたのか、誰が知ろう? しかし、それはテニスのプロフィールを高め、2人の男たちに若干の金――フェデラーに100万ドル、サンプラスにはそれより少なく――をもたらした。そして、各々の世代のベストであるサンプラスとフェデラーの対決を見たと人々に言わしめた。

「ハラハラする展開の試合になった」とフェデラーは言った。

リングでアリとタイソンのボクシング対決を見たとは誰も言う筈がない。あるいはゴルフコースでのホーガン対ウッズの対決とは。

ウッズはフェデラーの友人だが、彼は直接それを見なければならないと決心した。彼は満足げなドナルド・トランプ、リージス・フィルビン、アナ・ウィンター等と共に、最前列に座っていた。彼らは NBA のニックスや NHL のレンジャーズがプレーする場所に準備されたハードコートを囲んでいた。

「恐らくこれが、こんなにも多くの人々がやって来た理由だろう。現役ナンバー1の選手が史上最高と目されるプレーヤーと対戦する機会には、滅多にお目に掛かれないからね」とフェデラーは語った。彼はツアーで喫した最近2回の敗戦に影響していたと思われる単核症から回復したところだった。

それは4回目のフェデラー対サンプラスのエキシビションだった。昨年末にアジアで行われた3戦では、フェデラーが2勝した。彼らは再戦の可能性を認め、サンプラスはフェデラーの意向にゆだねるとした。

2人が公式に対戦したのは2001年ウィンブルドンただ一度で、頭角を現しつつあったフェデラーが、引退へと向かっていたサンプラスに、センターコートで5セットの末に辛勝した。

それはオール・イングランド・クラブにおけるサンプラスの31連勝を終わらせ、彼が7つのタイトルに上積みする事はなかった。フェデラーはその後ウィンブルドンで5年連続優勝を成し遂げ、この夏には延長を狙っている。

サンプラスは2002年USオープンで最後のグランドスラム・トロフィーを獲得した後、公式試合をする事はなかった。フェデラーのスラム・タイトルはすでに12を数え、記録の保有者は変わり――さらにこの若者は18、19にまで行き着けるだろうとの予想をサンプラスは表明している。

「ロジャーには、僕との対戦よりも、気に掛けるべきもっと重要な事柄があるんだよ」とサンプラスは言った。

この夜、サンプラスは彼に6年連続ナンバー1の記録を成さしめたサーブ&ボレーのスタイルを披露した。そしてフェデラーは、200週以上の連続ナンバー1在位記録を享受する力添えのオールコート・ゲームを披露した。

両プレーヤーとも、時には真剣に取り組んだ。また時には、サンプラスがラケットをコートに叩きつけたり、ラインズマンに判定を変えるよう頼み込んだりと、面白さを優先させた。

あるボレー・ウィナーの後、サンプラスは陽気なゴルファーと観客へ、ウッズのように握りこぶしを振り上げてみせた。卓越性とストイックさが目立ったプロキャリアの間には、滅多にしないものだった。

観客はそのすべてを味わい、フェデラーを声援し、そしてサンプラスを敬愛した。「まだやれる、ピート!」とスタンドからは声が掛かった。

結局、彼は充分ではなかったが。

「僕が第2セットを取って、観客によりテニスを提供できて嬉しかったよ」とサンプラスは語った。「勝利に結びつけられなかったのは、ちょっとガッカリだけどね」



YouTube の映像が下のリンクで見られます。

http://www.youtube.com/watch?v=1MVody03iA8


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