メトロウェスト・デイリー・ニュース
2012年1月11日
サーブ&ボレーヤーはどこに消えてしまったのか?
文:Bob Tremblay


テニス界の伝説的偉人ビル・チルデンは、偉大なベースライン・プレーヤー―――彼自身のような―――は常に偉大なサーブ&ボレーヤーに打ち勝つ、と語ったとされる。チルデンの時代には、それは真実であったかも知れない。彼はお決まりのように、ネットへと突進してくるプレーヤーを制圧したのだった。そして、現代においても真実と言えるかも知れない。より大きくなったラケットを手にする逞しいプレーヤーは、凶悪とも言えるトップスピンを生み出す事ができるため、ネットプレーは自殺的行為となり得るのだ。ラファエル・ナダルの非常識なほどのトップスピンをボレーしようとした者は、誰もが同意するだろう。

しかしながら、近年のテニス史における真相は、チルデンの声明を支持しない。例えば、テニス界最高のベースライン・プレーヤーの1人であり、史上最高のリターナーとも言われたアンドレ・アガシは、テニス界最高のサーブ&ボレーヤーの1人であるピート・サンプラスとの対戦で、負け越していた。2人は1989〜2002年の間に34回対戦し、サンプラスが20勝を挙げた。5回のグランドスラム決勝対決では、サンプラスが4勝した。確かに、ウィンブルドンの芝生のような速いサーフェスで戦われる試合は、おしなべてサーバーが有利になる。それで? チルデンがプレーしていた時代、4つの内3つのメジャー大会は芝生でプレーされていたのだ。

女子のサイドを見てみると、テニス界の偉大なベースライン・プレーヤーの1人であるクリス・エバートは、テニス界最高のサーブ&ボレーヤーの1人であるマルチナ・ナヴラチロワに対して、負け越していた。2人は1973〜1988年の間に80回対戦し、ナヴラチロワが43勝を挙げた。14回のグランドスラム決勝対決では、ナヴラチロワが10勝した。

もう1人の偉大なサーブ&ボレーヤーであるジョン・マッケンローは、2人の偉大なベースライン・プレーヤーであるビョルン・ボルグとジミー・コナーズに対して、同じく勝ち越している。マッケンローとボルグは14回の対戦で、7勝ずつを挙げたが、4回のグランドスラム決勝対決では、マッケンローが3勝した。一方マッケンローとコナーズは、1977〜1991年の間に34回対戦し、マッケンローが20勝を挙げた。9回のグランドスラム決勝対決では、マッケンローが6勝した。

サンプラス、ナヴラチロワ、マッケンローの成功は、より多くのサーブ&ボレーヤー を生み出すのでは、と考えるだろう。しかし、そうはならなかった。また、現在のプレーヤーの高い身長―――イボ・カルロビッチは6フィート9インチ(約206センチ)である―――は、サーブ&ボレーをいっそう広めるのでは、と考えるだろう。しかし、そうはならなかった。対照的に、マッケンローは5フィート11インチ、サンプラスは6フィート1インチ、ナヴラチロワは5フィート8インチであった。

大きくなったラケットはより多くのトップスピンを生み出す事ができるが、同じくより速いサーブを生み出す事もできる。アンディ・ロディックはテニス界で最も速いサーブを打つ1人だが、サーブの後にネットへと詰める事はめったにない。もし彼がネットへ出ていたら、どうだっただろうかと考える者もいる。

技術的には、ボレーはテニスにおける最も簡単なショットである。ラケットを立てて、ボールに向ける。ラケットを自分の前に掲げて手首を固める。ビンゴ。さて、もしボールがロケットのように、あるいは足元をえぐるように返ってくるなら、そのショットはもう少し難しくなる。とはいえ、左利きのプレーヤーがアドコートでワイドへサーブを打ち、右利きのプレーヤーがコートから追い出されると、リターンはさほどダメージを与えるものとはなりにくく、サーバーにボレーを打つための広いオープンコートを与えてしまう。テニス界で最も偉大なプレーヤーの3人が左利きであった事は、偶然ではない:マッケンロー、ナヴラチロワ、ロッド・レーバー。なぜ左利きのナダルがサーブ&ボレーをあまりしないのか、唖然とさせられる。彼のサーブはまずまずで、彼はボレーができるのだ。

遅くなった現在のボールは、サーブ&ボレーヤーにいかなる有利性ももたらさないとはいえ、強力なサーブの威力をさほど減じる事はない。現在のプレーヤーの多く、特にヨーロッパ人と南アメリカ人は、遅いクレーコートでテニスを始めるが、それは彼らがスピードに対する調整ができないという意味ではない。そうする事は彼らに必要となるだろう。新たなサーブ&ボレーの達人が現れるのは、時間の問題に過ぎないからである。もし歴史が何らかの教訓を与えるとすれば、それは、これらのベースライン・プレーヤーは、大いにトロフィーを掲げるだろうという事である―――準優勝者として。


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