ニューヨーク・タイムズ
2012年11月4日
かつてのスター達が秋のニューヨークにテニスを持ち帰る
文:Nicholas McCarvel


9年前、マーク・コロナードはステート・ファーム・クラシックのコートサイドに座っていた。女子ツアーで唯一、フェニックス地域で開催されていた大会の会場である。そして「この大会には活気がまったくない」と考えていた。

12カ月後、アリゾナ州スコッツデールで開催されていた大会は、カタールのドーハへと移動した。大会がこの地にやって来てから、ほんの4年後の事だった。2006年、フェニックスは男子のプロ大会、アリゾナ・テニス・クラシックも失った。

しかし2008年、「テニス通の市議会議員」コロナードの奨励によって、アリゾナ州サプライズの地域社会・レクリエーション事業部の部長は、ハイレベルのテニスを地域に取り戻す方策を模索し始めた。合衆国テニス連盟を通して、市は引退したアメリカ人テニス選手ジム・クーリエと連絡を取った。彼の会社インサイドアウト・スポーツ社は、これまで一連のシニアツアー大会を開催してきたのだ。

2年後、フェニックス地域はプロテニスを取り戻した。ロジャー・フェデラーやセレナ・ウィリアムズではなく、クーリエ、アンドレ・アガシ、ピート・サンプラスといった引退したスター達が参加したのだ。「我々はフェニックス地域の空隙を満たしたのだ。この地は、僕が現役時にATPツアーでプレーした場所だった」とクーリエは語った。「大きなテニス地域で、彼らはまさに支援すべき新しいイベントを必要としていた」

サプライズ大会は12都市で開催されるパワーシェアーズ・シリーズとして知られるツアーの1つで、トップレベルのイベントを北アメリカから作り出すべく、合衆国で新しいテニスシーズンを始める援助をした。月曜日、ツアーは初めてマジソン・スクエア・ガーデンで開催される。ナスダック・インデックス・カップと銘打った大会にはアガシ、サンプラス、ジョン・マッケンロー、パトリック・ラフターが出場する。

「我々は皆に、1晩3時間のテニス大会を提供する」とクーリエは語った。「我々はテニス界の中に住み分けの場所を作ったのだ」クーリエの1晩3時間のフォーマットは次のようなものだ:4人のプレーヤーが出場し、各1セットの準決勝を行う。短い休憩(地元によるショーが入る)の後に、決勝戦が行われる。8ゲームを先取したプレーヤーが優勝。

「このフォーマットは出場するプレーヤーに向いている」とクーリエは語った。この秋に出場するプレーヤーには、イワン・レンドル、マッツ・ビランデル、マイケル・チャン、トッド・マーティン等もいる。

マジソン・スクエア・ガーデンは、2008年から毎春テニス・エキシビションを開催してきたが、秋に大会が行われたのは2000年、WTA 最終戦が最後にニューヨークで開催された年だった。月曜日は、秋季テニスがニューヨーク市へ帰ってくる事を意味する。1990年には、WTA 60大会のうち25が合衆国で開催された。今年、合衆国で開催されたのは59大会のうち11だけだった。

一方、男子ツアーは1990年に、82大会のうち18が合衆国で開催された。今年は? 67大会のうち11だけである。

間もなく10になるだろう。S.A.P. オープンは1894年から、何らかの形式でベイエリアに存在してきた。しかし2014年にはメンフィスへと移動する。そしてメンフィスの ATP 大会はブラジルへと移動したのだ。南アメリカは、2016年のリオ夏季オリンピック大会への支援が増大し、2014年には新しい秋季大会のシリーズが始まる。

「テニスは選手の名前に惹きつけられるもので、今それはロジャーとラファだ」と、先週サンプラスは語った。「僕の世代には、それはアンドレ、僕自身、ジム、マイケルだった。現在、アメリカのテニスはさほど支配的ではない」

それが、アガシやサンプラスといった立て役者が参加するパワーシェアーズ・シリーズが成功モデルを作ってきた1つの理由である。そして、すでにプロツアーの開催権を失った都市―――ボストン、シカゴ、フィラデルフィアのような―――にとって、シニアツアーはファンにアピールするのだ。今月後半にツアーはサンノゼを訪れ、最後の S.A.P. オープンは2月に開催される。

「かの地はテニスで成功を収めてきた実績がある」とクーリエの共同経営者、ジョン・ヴェニソンがサンノゼについて語った。「それで我々は、シニアツアーを開催するのに適した場所だと考えたのだ。まずは1年契約で、先行きを判断する」

パワーシェアーズ・シリーズは2005年に1イベントで始まり、今年は12にまで成長した。昨年、ツアーは1晩で5,000〜7,000人のファンを動員した。イベント数を増やす計画はないが、ツアーは女子テニスを加える可能性を検討してきた。「男子・女子テニスの合同開催は、ファンにとって魅力的な経験だ」とクーリエは語った。「女子テニスを引き入れたいと考えている」しかし、中心となる女子プレーヤー達は、複数回のツアーではなく、1回限りのエキシビションにのみ興味を示している、と彼は指摘した。

「我々としては、できれば完全な女子ツアーを立ち上げたいのだ」と彼は語った。


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