テニス・グランド・スタンド
2011年11月18日
ミロシュ・ラオニッチはトロントの対決でピート・サンプラスを下す
文:Melissa Boyd


木曜日の夜、トロントで天才児が彼のヒーローを打ち破った。エア・カナダ・センターで行われたエキシビション・マッチで、カナダのトッププレーヤー、ミロシュ・ラオニッチが地元ファンの前でピート・サンプラスに7-6、6-1で勝利したのだ。

カナダの新星とアメリカの偉人は、名前と生まれ年の下2桁の数字が刺繍されたトロント・メープルリーフスのジャージを着てコートに登場し、大喝采に迎えられた。

ミサイル・ミロシュとピストル・ピートの待ち望まれた「対決」は強烈なサーブ、見事なネットプレー、巧みなタッチ、そしてネットを挟んだ両者の微笑が特徴的だった。子供時代のアイドルと対戦するチャンスが何を意味するか述べる時、 ラオニッチは哲学的だった。

「僕の心に深く刻み込まれるものだ」とラオニッチは語った。「決して消える事はないよ。この機会は多くの事をもたらしてくれる。僕自身にとっては学び、そして成長する事。同じくカナダのテニス界にとってはテニスを奨励する事だ。それが最終的な目標だよ」

サンプラスは今年の初め、 ラオニッチが初の ATP タイトルを獲得したサンノゼの SAP オープンで初めてラオニッチに会ったが、20歳のカナダ人を高く評価した。

「ミロシュは素晴らしい若者だ」とサンプラス語った。

「彼は意欲に満ち満ちているようだ。行く手には大いなる未来が開けているよ。僕は若いプレーヤーを見る時、持っている武器に注目する。そして彼はサーブという大きな武器を持っている」

その夜、メイン・イベントの前には、ウィンブルドン・ジュニア・女子ダブルス・チャンピオンのユージェニー・ブシャールと元世界21位のアレクサンドラ・ウォズニアックが1セットの試合を行った。両者ともよく競い合ったが、ウォズニアックが6-4で勝利を収めた。

祝祭の催し物は有名人によるダブルスから始まった。4人のプレーヤーは俳優のヘイデン・クリステンセン、元 NHL プレーヤーのブラッド・メイ、トロントのテレビタレントのリック・カンパネッリとゴード・ステリック等とコートに立った。映画「スター・ウォーズ」でアナキン・スカイウォーカー役を演じたクリステンセンは、かつてジュニア・テニスを経験し、プロに対しても堂々としたプレーを披露した。
サンプラス、ラオニッチ、ウォズニアック、ブシャール
エア・カナダ・センターでテニスイベントが催されたのは初めての事だった。19,000席を有する当センターは、アイスホッケーのメープルリーフスの本拠地なのだ。

イベントはカナダのテニスファンにとって、特別な喜びとなった。彼らはテニス界最高の偉人を目撃しただけでなく、2010年の夏以来初めて、ミロシュ・ラオニッチが母国でプレーするのを見たのだった。ラオニッチもまた、この出会いを簡単に忘れる事はないだろう。



グローブ&メール
2011年11月17日
ミロシュ・ラオニッチはアイドルのピート・サンプラスと出会い、そして打ち破る
文:Rachel Brady


若者と彼のアイドルは肩を並べて座っていた。一方はもう一方の、驚くべきスピードで正確なサーブをライン際に打ち込む能力について褒めそやし、自分たちのテニスマッチを競い合ったものにしておけるだろうか、と思いを巡らしていた。

若者はミロシュ・ラオニッチで、彼のアイドルはアメリカのテニスの偉人ピート・サンプラスだった。木曜日、彼らはメディアとの気軽な会合に並んで参加していた。―――そして間違えないように―――トロントのエア・カナダ・センターで催される友好的なエキシビション・マッチで、ラオニッチのモンスターサーブをどうやってリターンし、カナダ人のビッグゲームにどう対処しようかと神経質に思いを巡らしていたのは、アイドルの側だったのだ。

「僕が彼のアイドルだったという事をミロシュが理解しているよう望むよ―――僕は彼の父親であっても不思議はないんだからね」と、40歳のサンプラスは冗談を言った。そして気楽にやるようラオニッチに頼み、近頃は背中の具合が良くないのだとつけ加えた。

「僕は今でもサーブ&ボレーをかなり上手くこなせるが、ミロシュをブレークするとなると、難しいね。彼のサーブを毎日見ている訳ではないから」

キング・オブ・スイングと対戦し、しかも彼を7-6(7-4)、6-1で打ち負かせた事は、オンタリオ州ソーンヒル出身の20歳の新星にとっては、想像すらした事のなかった出来事かも知れない。彼はテニスに夢中だった子供時代、サンプラスの試合ビデオを何百回も見て学んでいたのだ。

「彼が僕のプレーを見たのより2000時間くらい多く、僕は彼のプレーを見てきたと思うよ」と、ラオニッチは笑いながら言った。彼は2011年シーズンを世界156位から始め、大躍進の1年間で最高25位まで上り詰めたのだった。

「この機会がもたらしてくれるものは、とてもたくさんある。このような一夜は、カナダでテニスが発展する助けとなっていく」

初めて共にコートに立ち、まずラオニッチとサンプラスはお楽しみのダブルスでウォーミングアップを行った。そこでは、ハイソックスと白いテニスウェアを身につけた「スター・ウォーズ」で有名な俳優のヘイデン・クリステンセン、元 NHL プレーヤーのブラッド・メイといったカナダの有名人たちに、彼らはロブを上げていた。サイドラインのコーチはマイクで冗談を連発し、トロント・ラプターズ(NBA のチーム)のマスコットがボールボーイを務めた。

しかしメインイベントが始まると、雰囲気は明らかに、より競技的になった。身長6フィート5インチのカナダ人は最初のサービスゲームで、その夜に放った何本ものエースの1本目をサンプラスの足元に炸裂させた。するとアメリカ人は、降参だと言わんばかりに自分のラケットをファンに手渡した。それらのサーブをリターンするのは厳しかったものの、14回のグランドスラム・チャンピオンはボールに突進し、クロスコート・ウィナーを叩き込み、そして小気味よいドロップショットを放ち、若い対戦相手と「逐一ポイントを比較してみれば」対等に渡り合った。少なくとも第1セットでは。

2002年に引退したサンプラスは、今なおあの生来の、おなじみのモーションでサーブを放ち、年月の経過とともに男子プロテニス界から姿を消していったサーブ&ボレー・ゲームで戦った。

エア・カナダ・センターにおける初めてのテニスイベントで5,705人の観衆を前に、タイブレークまで持ち込んだが、最後はラオニッチが7-6で第1セットを勝ち取った。

世界31位のラオニッチは時速218キロのサーブを連発した。サンプラス自身も数本のエースを炸裂させ、一度など拳を握ってガッツポーズさえ作り、1990年代にアンドレ・アガシ等のライバルと熾烈な戦いを繰り広げた当時の片鱗を見せた。第2セットはラオニッチが彼のヒーローを6-1で下し、試合を終わらせた。

最近のサンプラスは、若干のチャンピオンズ・ツアー以外にはあまりテニスをしていない。彼はサーブ&ボレー・テニスの衰退を悲しんでいるが、ラオニッチのゲームには心を打たれ、現在のパワー・ヒッティング主体のツアーにはよく合っていると語る。試合後にコート上のインタビューで、サンプラスはラオニッチのサーブを「ビッグサーブ以上のものだ」と称した。

「彼は正しい道を進んでいると思う。だが、まだとても若いから、いまは辛抱強くあろう」とサンプラスは語った。

「チャンピオンになるには時が必要なんだ。すべての要素はそろっている。彼がすぐにも来年のウィンブルドンで優勝する、といった期待は慎もう。それにはある程度の時間が必要だ。だが彼ならできるだろう」

「僕はこれからの年月、彼に注目していくよ。彼は飛躍を遂げつつあるところなんだ」


*下のリンクから、ピートとラオニッチのインタビュー、ウォームアップの映像が見られます。
A peat and the interview of ラオニッチ and the image of the warm-up are seen from the link under *.

http://www.theglobeandmail.com/sports/video/video-sampras-impressed-by-milos-raonic/article2241107/?from=2240723


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