ESPN.com
2011年6月17日
ピート・サンプラスがビッグ4について語る
文:Ravi Ubha


ピート・サンプラスはウィンブルドンを支配した。彼はオール・イングランド・クラブで7回の優勝を果たした。この1世紀以上で最多のタイトルである。彼は破壊的なサーブで対戦相手を圧倒した。多分、テニス界でこれほど優れたセカンド・サーブはなかっただろう。

そこで、今年の大会を論じるにあたって、現在も熱心にゲームを追うサンプラスより適した者はいるだろうか?

サンプラスは ESPN.com との電話インタビューで、最愛のグラスコート・メジャーでは、友人のロジャー・フェデラーが世界ナンバー1のラファエル・ナダルとノバク・ジョコビッチよりも「わずかに」優位であるとした。フェデラーはフレンチ・オープン決勝戦に進出して「自信をにじませている」とサンプラスは語った。

サンプラスはナダルを「四半世紀に一度」現れるかどうかの「マシン」と称賛したが、彼のプレーにかかる負担については懸念を示した。また今年43連勝を果たしたジョコビッチは、現在「オーラ」を身につけていると示唆した。スコットランド出身のアンディ・マレーはビッグ4の最後の1人だが、ウィンブルドンで彼にかかるプレッシャーは、他の選手とは比べようもないものだとサンプラスは語る。

フェデックス(フェデラー急行)

フェデラーはパリでジョコビッチの連勝を終わらせ、多くの人々を驚かせた。その2日後、もう少しのところで、決勝戦でナダルを打ち破ったかも知れなかった。

フェデラー―――彼はサンプラスの元コーチ、ポール・アナコーンの下で、初めてローラン・ギャロスを戦っていた―――は、クレーでナダルに対して今までよりも多彩さを披露した。彼は自身7回目となるウィンブルドンの栄冠を狙って、より快適なサーフェスに戻ってくる。

サンプラス:「ウィンブルドンが巡ってくると、あのサーフェスで倒すべき男としてロジャーを置かない訳にはいかない。彼はフレンチ・オープン決勝で素晴らしいプレーをして、クレーにおける史上最高の偉人の1人に敗れたんだ。彼は自信をにじませていると思うよ」

「ロジャーは、特にフレンチの決勝戦では、異なった事を試みているのだと思う―――もう少し攻撃的になり、ボールを早く捕らえる事。もちろんクレーでラファに対しては、とても難しい事だ。そして僕はそれが好きだ。彼は向上を望み、現在でもそれを楽しんでいる。ポールは戦術について話し、精神面で彼を手助けしてきたのだと思う。ポールはそれがどんな事か、偉大な選手が何を体験するか知っている。その事がロジャーの助けとなっているのだと思う」

ディフェンディング・チャンピオン

ナダル自身も認めているが、今回は彼にとって最高のフレンチ・オープンではなかった。ジョコビッチに4回敗れ、その2回はクレーで、彼はいつもの自信に欠けていた。しかしながら、彼は6回目のタイトル奪取に成功した。

ナダルはいつも通り、疲労にもかかわらず列車に飛び乗ってロンドンの Aegon 選手権に出場し、準々決勝で敗れ去った。一方フェデラーとジョコビッチは、ウィンブルドンの前哨戦をスキップした。

ナダルは3回目のフレンチ・オープン - ウィンブルドン連続優勝を目指している。

サンプラス:「ウィンブルドンが巡ってきてラファのゲームを見るといつも、彼には少しばかり弱点があると感じるかも知れない。しかし毎年毎年、彼は素晴らしい成果を挙げている。倒すべき男たちを打ち負かし、そして気がつくと、彼は2週目に残っていて、とても良いプレーをしている。彼は2年ほど前からウィンブルドンで良いプレーをするために必要な事を見定め、その部分を向上させてきた」

「彼はマシーンだ。彼はウィンブルドンに先がけて調子を整えなければならないと感じていて、僕はそれに敬意を払っている。だが心と身体に休息を与える必要もある。彼がクウィーンズで早期敗退したのは、むしろ良かったかも知れないね。再調整して、そしてもう少しパリを楽しむために。彼はまさに四半世紀に1人現れるかどうかというアスリートだ。彼は前進し続ける。ラファが、年齢を重ねるにつれて、スケジュールと身体に配慮するよう望むよ。それが彼の調子を維持できる唯一の方法だ」

今年の有力候補

フレンチ・オープンの第2週に生じた予定外の4休日は、ジョコビッチのリズムを混乱させたかも知れない。休みが明けて、24歳の彼は厳しい課題に直面した。つまり絶好調のフェデラーと遭遇したのだ。

それでも、彼の2011年の記録は41勝1敗と光っている。ジョコビッチ、目下テニス界きってのリターナーは、前3シーズンの大半で実力を出し切れなかった選手とは別人である。

サンプラス:「彼が可能にしてきた事は信じがたいほどで、非常に堅実だ。彼は精神面の答えを見つけ出し、本当に素晴らしい進化を示してきた。彼は今や、オーラを身にまとっていると思う。偉大なプレーヤーへと変化したのだ」

「テニスの歴史を振り返ると、僕が躍進して支配し始めた頃、そしてロジャーを見ると、我々は共におよそ23歳だった。ノバクは2008年のまだ若い時にメジャーで優勝した。どのようにプレーする必要があるか、誰と対戦しているか、そして自分らしく快適である事を理解するには、数年を要する。そしてノバクは峠を乗り越えたのだと思う。彼のゲームと運動能力を考えれば、現在の位置に驚きはないよ。彼のゲームを破ろうとしても、彼には穴がない」

サンプラスはリターナーとしてのジョコビッチをアンドレ・アガシと比較する:「どちらがより優れたリターンを持っているかは言いがたい。現在のプレースタイルは、ほぼ一通りだからね。僕がプレーしていた時代には、様々なスタイルがあった。もし彼がゴラン(イワニセビッチ)、(ステファン)エドバーグ、あるいは(ボリス)ベッカーといった選手たちと絶えず対戦していたら、どれくらい上手く彼がリターンするかについて、実感を得られただろう」

「だが彼は素晴らしいリターナーであり、今後もそうであり続けるだろう。彼のサービスブレーク確率を見ると、途方もないものだ。それは世界最高だと思うよ」

地元の期待

数字については多くの者が承知しているが、ここに思い出すべき事柄がある:1930年代以降、メジャーで優勝したイギリス人は存在しない。そしてもし優勝者不在が終わるとしたら、その夢見るような出来事はウィンブルドンで起こってほしいと、おおかたの地元民は望んできた。

マレーは今まで3回のグランドスラム決勝戦に進出するほど優れた選手だが、それでもなお肝心の時にベストを発揮する事はできなかった。マレーは2009年と2010年にウィンブルドンで準決勝に進出したが、短気になりがち(少なくともコート上では)の彼は今週クウィーンズの大会で優勝し、期待を高めた。

サンプラス:「僕は彼を本命の1人と見ているが、他の3人と比べると完全に同等とは言えないだろう。いつであれ、もし彼が良いプレーをして、そして観客の支持を得るとすれば、何らかの運命を引き寄せられる可能性も高いだろう」

「動向や発言に関する国やメディアのプレッシャーという点で、彼は他の男たちよりもずっと多くの事に対処している。彼らと対戦するだけでも厳しいうえに、そのすべてが加わるんだ。他のいかなる選手も経験した事のないものだ。多分ベッカー、だがドイツにはメジャー大会がなかった。僕の世代ではティム(ヘンマン)だが、彼は毎日マスコミに話をしていた;それは彼の頭の一角を占めているかのようだった。アンディがその騒音を無視して、自分のテニスをする事ができるよう望むよ」

「彼が時に気持ちをかき乱されているのを目にする。よく自分の陣営に向かって叫んでいる。彼は多感な男で、それが彼をタフにしている―――すべてのポイントに打ち込んでいるんだ。だが彼がもう少し速く気を取り直し、もっと建設的な何かへと気を静めるのを見たい。彼は少し感情の起伏が激しいが、それは問題ない。このスポーツでは、前の出来事を引きずらない事が重要だ。まずいポイントをプレーしても、先へと進むんだ」

ウィンブルドン撤退

ピート・サンプラスはたとえ友人で時折の練習相手であるロジャー・フェデラーが決勝戦に進出しても、今年はウィンブルドンに行かないと語る。

フェデラーにとってタイトルはウィンブルドンでの7つ目で、オープン時代の男子記録でサンプラスと並ぶ事を意味する。サンプラスは2009年にオール・イングランド・クラブで、フェデラーが自分のグランドスラム記録を凌駕する場に立ち会った。2002年に引退して以来、彼がこの大会に戻ってきた唯一の機会だった。

「恐らく行かないだろう」と、サンプラスは電話インタビューで語った。「記録を破る場面には立ち会いたかった。だがもし彼が今年決勝へ進出しても、僕は恐らく家にいて、テレビで見るだろう」

サンプラスは引退当初は活動を休止し、その後にいくつかのエキシビションやシニアツアーに出場してきた。それでは、39歳の彼にとって解説は次のステップになり得るだろうか? クリス・エバートはウィンブルドンに戻り、解説者席にいる。

サンプラスはノーと答えた。彼は今でも、居住するカリフォルニアで多くの時を過ごす方が好きなのだ。

「僕は自分がしてきた事を言わば楽しんでいる。時々プレーする事、それは僕の体調を保ち、少しばかり若さを保たせてくれる」とサンプラスは語った。彼は熱心なゴルファーでもある。「妻や子供たちと一緒にいるのが好きなんだ。今でもテニスが好きだし、それを見たり話をするのが好きだが、解説のために旅行するのは気が進まない。僕はまあ、ロスにいる事を楽しんでいるよ」


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