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ブリーチャー・レポート(外野席からのレポート) 2010年12月4日 サンプラス:ゾーン状態を見る価値のあるベストの1人 文:Tribal Tech |
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先週、私はここロンドンで、ATP ツアー最終戦を見に行った。ナダル/ベルディヒ戦は、第1セットはタイブレークまでもつれ込む接戦だったが、結果的にはナダルがベルディヒをほぼ型通りに打ち破った。いつものようにナダルは堅実な試合運びで、彼の運動能力は信じがたい見ものである。 私はこの3年間に、フレンチ・オープンでナダルのプレーを2回見てきた。彼はかなり容易にモヤとアルマグロを下していた。だが、こう考えずにはいられなかった。ナダルはゾーン(そう、神話の領域!!)に入り込む選手だとは思わないし、彼のプレーは対戦相手を一方的に叩きのめし、人々がその後何年間も、その事を話題にするようなテニスではないと。 |
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そしてこのテーマに関して範囲を広げると、この25年間でゾーン状態のプレーをした選手は、そう多くなかった。 もちろん、1人の選手がもう一方に対して素晴らしいプレーをした例はあった。2008年フレンチ決勝戦でナダルがフェデラーに対して、1991年USオープン決勝戦でエドバーグがクーリエに対して、あるいは1989年ウィンブルドン決勝戦でベッカーがエドバーグに対して、などである。 だが私は、ピート・サンプラスがゾーン状態に入ると、対戦相手を完全に圧倒する1人の選手であったと思う。現在の世代では、ロジャー・フェデラーが多くの相手に対して、明らかに似通った事をしてきた。 しかしながら、サンプラスは誰もそれを予想していない試合で、そして彼に対抗しうると見なされた相手に対して、それを為したという事実を私は気に入っている。例えば、2007年オーストラリアン準決勝での、ロディックに対するフェデラーの出来ばえは驚くばかりだった。しかしロディックは才能の点で、明らかにフェデラーより下の部類にいたし、今もそうだ。そして私の目には、そもそも生来の才能があるプレーヤーとは見えない。 |
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さらに最近では、2008年オーストラリアン準決勝でツォンガがナダルを粉砕した様は信じ難いほどだったが、その後のツォンガは、そのレベルにはほど遠いプレーである。嘆かわしい事だ。現代のゲームにおいて、アンディ・マレーやノバク・ジョコビッチのような選手は非常に優れているが、彼らのいずれも、始めから終わりまで真に対戦相手を圧倒するパワーは持っていない。彼らはむしろ粘り屋である―――両選手とも非常に才能があるとしてもだ。 ゾーン状態のサンプラスを見て興味をそそられるのは、彼がプレーするペースである。彼は常に、すぐにでもサーブが打てる用意ができていたのだ! レンドル、ナダル、クーリエ、ベッカー、ジョコビッチについて考えてみれば、これらの男たちは非常に慎重なペースでプレーをした。特にサーブを打とうとする時には。したがって彼らのゲームは、自分が何をしようとしているか / いたか、が重要なだけでなく、対戦相手のリズムと集中をくずす効果も担っているのだ。 サンプラスのサーブは非常にリズミカルだったため、まるで相手をせかしているように見え、それは彼らに無力感を感じさせる事にもつながった。サンプラスが意図的にしていたのかは分からないが、確かにそういう影響が生じていた。 |
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ゾーン状態の選手がもう1人のトップ選手である対戦相手を圧倒した顕著な例には、以下のような試合もある。 2000年 ATP マスターズ決勝戦:グスタボ・クエルテンがストレートセット(3セット)でアンドレ・アガシに勝利。バックハンドが好調な時、クエルテンには驚くべきショットを繰り出す能力があった。さらに、非常に優れたファーストサーブを持っていた。アガシはグスタボのリズムを崩すべく、あらゆる事を試みたにもかかわらず、彼はアガシにチャンスを与えなかった。 2007年オーストラリアン・オープン決勝戦:セレナ・ウィリアムズがマリア・シャラポワに6-1、6-2で勝利。私の意見では、セレナの最も優れたプレーぶりだった。彼女はシャラポワのサーブを事もなげにリターンしていたが、注目に値する出来ばえだった。 |
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2000年USオープン決勝戦:サフィンがストレートセットでサンプラスに勝利。サフィンが1試合で、あれほど多くの見事なパッシングショット・ウィナーを放った事はなかった。そして二度となかった。サフィンはまた、6フィート5インチの男でもコートを巧みに動き回れる事を示した。 2004年USオープン決勝戦:フェデラーがヒューイットに6-0、7-6、6-0で勝利―――何というスコア! フェデラーは第1セットでヒューイットを圧倒し、第2セットでヒューイットはサービング・フォー・ザ・セットを迎えたが、ブレークされる。フェデラーはタイブレークをものにし、第3セットではヒューイットを圧倒した。 以下はサンプラスがゾーン状態に入り、ほぼ完璧なテニスをした試合である。 1999年ウィンブルドン決勝戦:サンプラスがアガシに6-3、6-4、7-5で勝利。アガシはこの試合に、ブックメーカーと解説者(私ではない!)によれば、少しだけ優勢な立場として臨んだ。恐らく彼らは新しいチャンピオンを期待しており、そしてサンプラスはその年の前半、好調ではなかったからだろう。 |
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そしてアガシの出足は非常に好調で、最初の7ゲームでは、サーブを含めてすべての面でサンプラスと対等だった。しかし3オール、サンプラスのサーブで0-40から、あとは知ってのとおり、サンプラスは別の次元に行ってしまった。第1セット後半から第2セット前半にかけて、サンプラスが続けざまに勝ち取った5ゲームは、1人のプレーヤーが、実際にとても良いプレーをしているもう1人のトップの対戦相手に上回るプレーをした、歴史上でも最高のテニスだと考える。 1999年 ATP ファイナル決勝戦:サンプラスがアガシに6-1、7-5、6-4で勝利。スコアからも明らかで、サンプラスは非常に良いプレーをし、アンドレはしょげ返っていた。彼は試合後の観客へのスピーチも辞退したほどだった。アンドレはラウンドロビンでピートを負かしたが、決勝戦では散々に打ちのめされた。アナウンサーがピートにこう尋ねた時、彼は試合を要約していたのだった。「あなたはこの試合を、来シーズンへのテストにしたいと言いました。これはあなたのテスト法ですか!?」と。 |
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1993年USオープン準々決勝:サンプラスがマイケル・チャンに6-7、7-6、6-1、6-1で勝利。サンプラスは第1セット・タイブレークを7-0で失った! しかし次の第2セット・タイブレークを勝ち取ると、第3セット2-1の時点から、続けざまに11ゲームを勝ち取ったのだ。チャンは第4セットの終わりに、かろうじてベーグルを避ける事ができた。 しかし、サンプラスがプレーする様は信じがたいものだった。その時点では、彼はチャンに対して1勝6敗だったが、巨匠のレッスンのごとく右に左にとウィナーを連発したのだった。それはサンプラスのキャリアにおいて、ハードコートではそれほどサーブ&ボレーをしていない時期だった。 サンプラスが披露した他の顕著なマスタークラス: 1990年USオープン決勝戦:アンドレ・アガシを6-4、6-3、6-2で破る。 |
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1997年デビスカップ準決勝:パトリック・ラフターを6-7、6-1、6-1、6-4で破る。 1997年オーストラリアン・オープン決勝戦:カルロス・モヤを6-2、6-3、6-3で破る。 2000年USオープン準々決勝:リチャード・クライチェクを6-7、7-6、6-4、6-2で破る。 1995年ウィンブルドン決勝戦:ボリス・ベッカーを6-7、6-2、6-4、6-2で破る。 「ゾーン状態の」サンプラスのビデオ3本 http://www.youtube.com/watch?v=oAsmtp1nSqE http://www.youtube.com/watch?v=5Q84AZ1Qsys http://www.youtube.com/watch?v=ozxjmfIuvEo |
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