テニス-X
2010年8月28日
ハードコート・グランドスラムの短い歴史
文:Dan Martin


ハードコート・テニスは、グランドスラム大会では相対的に新しく導入された。それにふさわしく、荒々しいジミー・コナーズが1978年のUSオープン優勝によって、ハードコート・スラムの初チャンピオンとなった。ジョン・マッケンローが翌3年間のUSオープン・タイトルを獲得し、コナーズは1982年と1983年に再びタイトルを勝ち取った。1984年にはマッケンローが優勝し、ニューヨークにおける合衆国の覇権を維持した。1982〜1984年に準優勝だったイワン・レンドルは、1985〜1987年にわたってタイトルを獲得した。ハードコート・グランドスラムの最初の10年間は、3人の男だけが優勝のトロフィーを持ち帰ったのだった。

1988年、オーストラリアン・オープンはより遅いハードコートを採用し、マッツ・ビランデルがハードコート・グランドスラム大会で優勝を遂げた4番目の男となった。ビランデルは1998年のニューヨークでも優勝し、メルボルンでは1989年にレンドルが優勝した。つまり、ハードコートで開催された13回のグランドスラム大会で優勝したのは、4人の男だけだったのだ。1989年USオープンではボリス・ベッカーが優勝し、ハードコート・スラム大会でタイトルを獲得した5番目の男となった。1990年のオーストラリアではレンドルが優勝したので、1990年USオープンでようやく、ピート・サンプラスがハードコート・スラムに優勝した6番目の男になった。私だけかも知れないが、1990年USオープン以前にハードコートで戦われたグランドスラム大会は15回もあったのに、サンプラスがハードコート・スラムで優勝したやっと6番目の男であるという事実は、奇妙に思える。

さらに驚きなのは、パトリック・ラフターが1997年USオープン・タイトルを獲得した時、ハードコートのグランドスラムで優勝した10番目の男に過ぎなかったという事だ。その時までには、30回のスラム大会がハードコートで行われていたのだ。ハードコートで開催された最初の20回のUSオープン、そして最初の10回のハードコート・オーストラリアン・オープンで優勝したチャンピオンは全員、複数のグランドスラム大会で優勝を遂げている。さらに印象的なのは、これらの男たちは皆、少なくとも2回はハードコート・グランドスラム大会で優勝したという事実である。

ペトル・コルダが1997年USオープンでピート・サンプラスを番狂わせで破り、その後に1998年オーストラリアン・オープンでタイトルを獲得したように、あまり目立たなかった選手がブレークした例もあった。それでもなお、1998年から2010年までに、1回限りのスラム優勝者がハードコートから出現した事はほとんどなかった。2002年のトーマス・ヨハンソンの優勝は、最も驚くべきハードコート・グランドスラムの結果として際立っている。アンディ・ロディック、ノバク・ジョコビッチ、フアン・マルティン・デル・ポトロの3人が、ハードコート・タイトルを持ち帰った1回だけのスラム優勝者として、コルダとヨハンソンに加わる。ロディック、ジョコビッチ、デル・ポトロは、このリストが減少するかも知れない、現在でも大いに可能性のある現役選手ではあるが。

クレーと芝生における1回限りのスラム優勝者リストと比較すると、近年のハードコートは2倍のチャンピオンを生み出してはいるものの、まぐれ当たりのような1回限りのスラム優勝者が誕生する可能性が低い事は明らかである。1978年以降に、クレーと芝生で誕生した1回限りのスラム優勝者を数え上げてみよう: ヤニック・ノア、パット・キャッシュ、マイケル・チャン、アンドレス・ゴメス、ミハエル・シュティッヒ、トーマス・ムスター、リチャード・クライチェク、カルロス・モヤ、ゴラン・イワニセビッチ、アルベルト・コスタ、フアン・カルロス・フェレロ、そしてガストン・ガウディオは、フレンチ・オープンあるいはウィンブルドンで唯一のグランドスラム・タイトルを獲得した。

ブライアン・ティーチャーが、1980年に芝生で行われたオーストラリアン・オープンのシングルス・タイトルを獲得した事は、2002年にトーマス・ヨハンソンが獲得した驚くべきタイトルには及びもつかない。要するに、より平等だと喧伝されるサーフェスが、ツアーのシンデレラ・ボーイ達に提供するチャンスは、より少ないように見えるのだ。この事は、2010年に誕生するUSオープン・チャンピオンの歴史における位置づけにとって良い前兆と言えよう。

以下に、ハードコート・スラム大会でタイトルを獲得した男たちを年代順に並べる。それはまさに、オープン時代における名士録である。(カッコの中は、獲得したハードコート・スラムタイトルの総数)

1.ジミー・コナーズ(3)
2.ジョン・ マッケンロー(4)
3.イワン・レンドル(5)
4.マッツ・ビランデル(2)
5.ボリス・ベッカー(3)
6.ピート・サンプラス(7)
7.ステファン・エドバーグ(2)
8.ジム・クーリエ(2)
9.アンドレ・アガシ(6)
10.パトリック・ラフター(2)
11.ペトル・コルダ(1)
12.エフゲニー・カフェルニコフ(1)
13.マラト・サフィン(2)
14.レイトン・ヒューイット(1)
15.トーマス・ヨハンソン(1)
16.アンディ・ロディック(1)
17.ロジャー・フェデラー(9)
18.ノバク・ジョコビッチ(1)
19.ラファエル・ナダル(1)
20.フアン・マルティン・デル・ポトロ(1)


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