シドニー・モーニング・ヘラルド
2009年10月17日
テニスプレーヤーは最高のアスリートだ、とサンプラスは語る

最高? ………ロジャー・フェデラーとピート・サンプラス、2007年。

もちろん熱烈な討論をひき起こすためだが、テニスプレーヤーは広い世界全体で最も素晴らしいアスリートである、とピート・サンプラスは主張する。

来週マカオで開催される、長年の競争相手アンドレ・アガシとのエキシビション・マッチに向けて準備中のサンプラスが語った、議論を呼び起こしそうな主張は、世界じゅうにいるライバル・スポーツの熱狂者の感情を間違いなくかき乱すだろう。

とりわけ、ボクシング、体操、クロスカントリー・スキー、サーフ・ライフセービング、トライアスロン、バスケットボール、 ハンドボール、サイクリング、スカッシュ、サッカー、 AFL フットボール―――順不同―――などの選手は全員、自分たちこそが地球上で最も優れたアスリートであると主張する筈だ。

しかしサンプラスは、テニススターにはたくさんの優れた点があると言う。

「人々はあまり話さないが、つまり、テニスでは、選手たちは驚くべきアスリートなんだ」と、伝説的なアメリカ人は「ATP ワールドツアー・アンカバード」で語った。

「彼らは劣勢にありながらも………いいプレーをしていなくても、挽回する―――2セットダウンになっても挽回する決意を抱いて、ずっとやり通す事ができる」

「NBA(北米プロバスケットボール・リーグ)を見て、選手がしている事を見ると、僕は『それが最高のアスリートだ』と思う」

「だが(同時に)僕の意見では、テニスプレーヤーが最高のアスリートだと思うんだ」

「偏った見方をしている訳ではないよ。何が必要かを僕は知っている。ハンド・アイ・コーディネーション(手と目の連繋)。それに個人競技では、すべてが自分の責任だ」

どのスポーツが最も偉大なアスリートを輩出しているかという悩ましい問題には、もちろん、真の答えは決して得られない。そして恐らく、裏庭でのバーベキュー用の話題として取っておくのが最善なのだろう。

しかしサンプラスの条件付きの意見は、確かに一考に値する。

彼はまさに、危機を切り抜けるサーブ、息を呑むようなバックハンド、無比のプロ意識を持ち、14のグランドスラム・タイトルを獲得し、記録的な6年連続年末ナンバー1を成し遂げ、キャリア賞金総額4,300万ドルの―――統計的に唯一ロジャー・フェデラーより少ない―――男なのだから。

たとえサンプラス自身はそう言うとしても、運はほどんど関わらなかった。

「大いなる事だった」と、サンプラスは自身の最高の業績、6年間も自分のスポーツの頂点に立った事について語った。

「5年間1位の座をキープして、6年目の終わりは競り合ったレースになっていた。(マルセロ)リオスが僕をプッシュしていたんだ。ヨーロッパで過ごし、ナンバー1の座を得るために7週連続でプレーしたのを思い出すよ」

「僕は1位の座がほしかった。(ジミー)コナーズが5年連続記録を持っていたが、僕は6年にしたかったんだ」

「どんなスポーツでも、堅実であり続けるのは難しい。それが6年連続となると、多くの努力が必要だ。いささかのストレスも伴うし、大きな業績も必要だ」

「6年間も圧倒的な存在でいるのは、容易な事ではなかった………。その過程で、僕はいろいろな事を犠牲にし、いくつかの大試合にも勝利した。だが簡単ではなかったよ」

それゆえに、サンプラスでさえフェデラーに驚嘆するのだ。彼は今年、15回目のメジャー優勝を遂げてアメリカ人のグランドスラム記録を上回った―――わずか27歳で。

サンプラスが2002年USオープンで14回目、そして最後の優勝を遂げたのは31歳の時だった。だがスイスのスーパースターが早くも新しい基準を確立した事に、驚きはしない。

「彼がこの記録を破ろうとしていると、僕は数年前に受け入れていたよ」と、謙虚なチャンピオンとの稀なインタビューでサンプラスは語った。

「つまり、彼は楽々とタイトルを獲得していた。もちろん素晴らしい選手で、ただただテニス界を支配していた」

「だからそれは時間の問題にすぎないと承知していた。ウィンブルドンでなくとも、USオープンか、あるいは翌年のメジャー大会で」

「いずれは記録を破ろうとしていた。だから苦い思いはまったくない」

「もし何かあるとしたら、彼が可能にしてきた事に驚嘆しているよ」

引退して7年が経ち、女優ブリジット・ウィルソンとの幸せな結婚生活も10年目を迎え、テニスの欠けた空虚感を満たすのには、気分の浮き沈みがあるとサンプラスは認める。

「僕は今でもそれを理解しようとしている―――引退とは進行中の仕事だ」と彼は語った。

「2人の子供―――6歳と3歳―――がいて、子育ては大変だが生活を楽しんでいる。ゴルフをしたり、ポーカーやバスケットボールをしたり、他の楽しみもある」

「人生は素晴らしい。不満なんて言えないよ。かつて僕はテニスコートの中心にいる事を望んだ。それ以外には、言わば脇へ下がっている事に満足していた」

最近はゲームをしたいという切望を、時にはシニアサーキット、たいていはエキシビションに出場する事で満たしている。

「今でもまずまずのプレーをしているよ」とサンプラスは語った。

彼の言う事はまったくもって正しい。ワシントン生まれでロス育ちのサンプラスは、一昨年にアジアで行われたエキシビション・シリーズの1試合では、フェデラーに勝利さえしたのだ。

「今でも良いプレーをして、かつてのようにサーブを打つ事ができ、ボレーをしているよ」と彼は語った。

「それで僕には充分だ。家にいても、集中力を保つ事ができる。シャープさを保ち、健康や体形を保てる。それが僕の求めているものだ」

「人々の前でテニスの試合をする事が必要な訳ではない」

「カムバックする気はないし、若い選手を何人か打ち負かそうという気もない。そういった事は気にかからないよ」

ライバルを抑え、オール・イングランド・クラブのセンターコートで王族を魅了する事よりも、むしろイチゴ&クリームを夕食に食べる事の方が、サンプラスにとっては難しい。

「ウィンブルドンが懐かしい」と彼は語った。

「メジャー大会を恋しく思うよ。勝利する高揚感、多くの観客の前でプレーする事が懐かしいね」

「ストレスやプレッシャー、旅はもういい。そういった日々を懐かしいとは思わないよ」

「だが活動的でいる事、集中心は恋しい。でもそういう時代は終わり、今は何か他のものへと移っている」

「1年のうち何週間かは恋しく思うが、それ以外は、かなり満足しているよ」


*このインタビューの映像は、下のリンクから見られます。
http://www.youtube.com/watch?v=J3NqBpAdtl0


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