テレグラフ(イギリス)
2009年7月5日
ピート・サンプラスは歴史が作られるのを見るために、海を越えてくる
文:Andrew Baker


「来てくれて、ありがとう」と、ロジャー・フェデラーはピート・サンプラスに語りかけた。
サンプラスはいかにも彼らしく、自分のグランドスラム記録に好意をもって
別れの手を振り、旅をした甲斐があったと感じていた。


彼、そしてセンターコートに参列する栄誉に浴したすべての人々は、ドラマと質で昨年のウィンブルドン決勝戦をさえしのぐ試合を目撃した。

持続する攻撃性は言うまでもなく、ゲーム数の記録を塗り替えた決勝戦を戦い抜いた後、 フェデラーとロディックは試合後のインタビューでも、礼儀正しさで優ろうとしていた。

自身の史上最多グランドスラム優勝の記録が抜き去られるのを見るため、海を越えて来てくれた事に対して、スイスの達人はサンプラスに感謝した。そしてロディックは、同国人の名誉を守りきれなかった事で「ピストル・ピート」に謝罪した。

政権交替:ピート・サンプラスはウィンブルドン決勝戦のためにセンターコートに参列すると決め、直前にはるばる合衆国から急行した。


「ごめんね、ピート」とロディックは語りかけた。「僕は挑んだ。彼を振りきろうとしたんだけど。そして偉大なチャンピオン達の前で、ここでプレーするのは喜びでした。僕は今でも、いつか自分の名前がこの大会の優勝者として記される事を望んでいます」

ネブラスカ出身の男は、ウィンブルドンの観客の前でプレーできて幸せに思うと語った。「僕は声援を受けた幸せ者です。それに対して感謝します」と、温かい拍手喝采に向けて語りかけた。「ロジャーにおめでとうと言いたい。彼は正真正銘のチャンピオンです。得るものすべてに値します。見事でした、ロジャー」

フェデラーはロディックが「信じ難いほど素晴らしい大会を送ってきた」と述べ、「あまり悲しみすぎないで」と助言した。「僕もいささかの辛い時を体験してきました。これは1回の決勝戦にすぎないが、それが心に堪える事を知っています。アンディは戻ってきて、再び優勝を狙うでしょう。テニスでは勝者は1人しかおらず、今日は僕に運があったのです」

フェデラーは15回目のグランドスラム・タイトルと、もうすぐ父親となる事は、引退が近い事を意味するものではないと語り、素早く彼のファンを安心させた。

「それで僕がテニスをやめる事はありません」とフェデラーは語った。「ここに戻ってきたいし、テニスを続けたいと望んでいます。今年はちょっと途方もない年です。オーストラリアン・オープン決勝戦で負けた時には、物事が上手く運ばないように思えました。しかしそれを切り抜け、そしてパリとウィンブルドンに続けて優勝する事ができたのです―――驚くばかりです」

サンプラスは、ロディックに自身の記録と自国の名誉を守ってほしいと望んでいたに違いないが、ロイヤルボックスでは見事に冷静さを保ち、両選手に称賛を送った。

「素晴らしい試合だった」とサンプラスは語った。「だが、負けたアンディには厳しいものだったね。彼は勝つに値するプレーをした。だから彼が負けたのではなく、ロジャーが彼を負かしたんだ」

サンプラスは間際になって旅行を決めたため、ぎりぎりの段階でベビーシッターを手配しなければならなかった。

「土曜日、準決勝の後にここへ来ると決めたんだ」と彼は語った。「僕の両親が子供たちを見ている。大変な骨折りだが、それは報われたよ。スポーツにとって素晴らしい機会だった」



スカイ・ニュース(オーストラリア)
2009年7月6日
サンプラス―――フェデラーはベストだ



ロジャー・フェデラーが記録的な15個目のグランドスラム・タイトルを獲得し、ピート・サンプラスはスイスのスターを史上最高の選手として讃えた。

「彼にその称号を捧げなければならないと思う」とサンプラスは語った。先月にフェデラーがフレンチ・オープン優勝を遂げた後、彼は14のタイトル記録を共有していた。

「批評家は(ロッド)レーバーの名前を挙げる。また、(ラファエル)ナダルはメジャー大会で何回か彼を下してきた。だが彼はすべてのメジャーで優勝し、今や15回の優勝を成し遂げた。今後さらに何回か優勝しようとしている。僕の考えでは、彼(が史上最高)だ」

フェデラーは第2セットのタイブレークで4つのセットポイントを逃れ、最終的にアンディ・ ロディックを5-7、7-6、7-6、3-6、16-14で破り、センターコートで6個目のウィンブルドン・トロフィーを獲得した。

「途方もない試合だった」とサンプラスは付け加えた。彼はカリフォルニアから飛行機で駆けつけ、ロイヤルボックスから試合を観戦したのだった。「アンディは素晴らしいプレーをして、チャンスもあった。1セットアップとして、タイブレークでは6-2リードとしたが、何本か(ショットを)ミスしてしまった。だがロジャーは偉大なチャンピオンだ」

「彼は懸命に戦った。第5セットは素晴らしいテニスだった。見ていて楽しかったよ。勇壮な試合だった」


サンプラスはBBC1のインタビューに付け加えて、フェデラーが記録を塗り替えたのを見られて嬉しいと述べた。「ロジャーは友人で、素晴らしい選手だ。いい奴だよ。彼は今や15を獲得した。上手く行けば17、18も可能だろう」

「彼はまだ27歳だし、ここでも、USオープンでも、すべてのメジャー大会で何年も優勝を狙うだろう。彼が前進し続け、健康なら、18あるいは19に達する事もできるだろう」

「彼は素晴らしい男で、謙虚だ。それが好きだよ。彼は言わば楽々とプレーする。試合で苦労しているようには見えない。彼はとても容易に、そういったレベルでプレーするんだ。ビッグサーブを打ち、素晴らしいフォアハンドを持っている。バックハンドは堅実で、彼はすべてを備えている」

「彼は自分を信じている。伝説的な偉人であり、偶像的存在だ。15のメジャータイトルを獲得したが、それには多くの努力を要する。彼はテニスというゲームの名誉となる人物だ。動きが滑らかで、素晴らしいアスリートだ」

「アンディには気の毒に思うよ、本当にね。彼は狼狽し、心をかき乱されていた。これは彼のチャンスで、あと一歩及ばなかっただけだ。だがロジャーが最後にはまさった。ほんの少しだけ余裕があったんだ」

レーバーもセンターコートで試合を観戦したが、付け加えた。「信じ難いほどのテニスだった。特にあの第5セット。エラーよりウィナーが多かったし、彼ら双方のサービング能力は驚くべきものだった」

「ロジャーはボールをインプレーにできる選手の1人で、奇跡的なフォアハンドやバックハンドを生み出す」

「アンディは常に脅威の存在だ。あの凄まじいサーブを持っているからね。だが最後の最後には、恐らく少し疲れていたのだろう。何本かミスヒットがあって、2本ばかりイレギュラー・バウンドがあると、トラブルに陥るものだよ」

(左から右へ)ビョルン・ボルグ、ピート・サンプラス、ロジャー・フェデラー、ロッド・レーバーがトロフィーを囲んでポーズを取る。彼らは長年にわたり、それを掲げてきたのだ。

ビョルン・ボルグは、フェデラーがさらにグランドスラムで優勝し続ける事ができると考えている。「彼は今や15のタイトルを持っている。そして少なくとももう3年は確実にプレーを続けようとしている。鍵となるのは、怪我を免れる事だと思う」

「もし健康な状態なら、彼はさらに多くのグランドスラム大会で優勝できるだろう。彼は今でも優勝を熱望している。コートに出る時はいつも、非常にプロフェッショナルだ。プレーする時は常に100パーセントを出し切る。従ってさらに多くの決勝戦で彼を見る事になるだろう」


ピートのインタビュー映像

http://news.bbc.co.uk/sport1/hi/tennis/8133424.stm

http://news.bbc.co.uk/sport1/hi/tennis/8135332.stm


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