ブリーチャー・レポート(外野席からのレポート)
2009年11月8日
サンプラスのランニング・フォアハンド:この30年で最もエキサイティングな
グラウンドストローク

文:Tribal Tech

ウィンブルドン、イギリス――2009年7月5日、 ロンドンのオール・イングランド・ローンテニス・アンド・クリケット・クラブにて。ウィンブルドン・チャンピオンシップの13日目に、元ウィンブルドン・チャンピオンのピート・サンプラスが観客に手を振って挨拶する。

オープン化時代には多くの偉大な選手が存在し、特定のストロークが彼らと結び付けられてきた。ジミー・コナーズのスカイ・フック、イワニセビッチの左利きサーブ、ボリス・ベッカーのダイビング・ボレー、シュテフィ・グラフのバックハンド・スライス、モニカ・セレシュのフォア・バック両手打ちショットなどが挙げられるだろう。中でもピート・サンプラスのランニング・フォアハンドは、歴史上最も有名かつ最も破壊的なショットの1つとして、そのカテゴリーに入る。

ピートが14年のキャリアで見せてきたショット、ストレートに、クロスにと放たれるショットには、精度、驚嘆すべきテクニック、多様性、角度、圧倒的なペースにおける極限のトップスピンがあった。このショットについて論じる時、興味深い幾つかの事柄がある。

まず第一に、ピートはこのショットをプレッシャーの下で遂行する事ができた。偉大な選手の証である。彼は対戦相手のサービスゲームをブレークするために、決定的な場面でセットを勝ち取るために、そして彼自身のサービスゲームをセーブするために、このショットを打つ事ができたのだ。またサンプラスの優れた運動能力と力強さは、相手のショットに追いついて捕らえ、徹底的なウィナーを放つ事を可能にした。このようなマジックを行うのは、およそあり得ないように見える時に。

そこに、注目すべき戦術的な筋書きがある。ピートはラリーの最中に、バックハンド側に位置する事が多かった―――それは意図的でもあり、状況によるものでもあった。サンプラスはこのプレーをイワン・レンドルの戦術から学んだ。イワンもまた、破壊的なランニング・フォアハンドを持っており、トップスピン・バックハンドのラリーをして、短いボールを得るチャンスに備える事が多かった。そしてチャンスを得るや、インサイド・アウトのフォアハンドを打ってプレーの主導権を握るか、あるいは右側に動いて強烈なランニング・フォアハンドのウィナーを放ったものだった。

サンプラスはイワンからそのプレーを取り入れ、さらに高いレベルにまで引き上げたのだ。サンプラスはまた、インサイド・アウトのフォアハンドに巧みで、そのショットでネットを取ったり、対戦相手をコートの端まで追い出すのに用いていた。もしくは、サンプラスが右側に動いて、あの信じがたいウィナーを放ったのだ。状況によるものとは、次の事だ。時が経つにつれて、クーリエ、チャン、アガシ、ムスターといった選手たちは可能な限りサンプラスのバックにボールを集め、自分がポイントをコントロールしていると思った時にのみ、彼のフォアハンドを狙うようになったのだ―――そして痛ましくも自分が間違っていた事を知るのだった。

私が1つ気付いた事として、キャリア最後の12カ月には、サンプラスは振られた時に、ランニング・フォアハンドをストレートよりもクロスに打つ事の方が多かった―――恐らく運動能力がわずかに低下したため、そしてネットの低い部分を通す事でエラーが起こりにくくしたのだろう。ストレートに打つには、ネットの高い所を越えさせるためにより多くのトップスピンを必要とし、したがって精度がいっそう肝要となるのだ。

幾つかの映像で、史上最高のショットの1つを楽しんでほしい。私は Youtube にチャンネルを持ち、この3カ月間で垂涎ものの素晴らしいランニング・フォアハンドをアップロードしてきたのだ!

http://www.youtube.com/watch?v=w5rxZhVjrVM

http://www.youtube.com/watch?v=j1ksF_0Lx_Y

http://www.youtube.com/watch?v=rF_cL1NbIKs

http://www.youtube.com/watch?v=YFiOslvMvXY

http://www.youtube.com/watch?v=peqzhoF2SjE

http://www.youtube.com/watch?v=SnUZtuOGKUA

http://www.youtube.com/watch?v=ShVJFn-q-48


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