ASAP スポーツ
2009年1月15日
SAP オープン電話記者会見:ピート・サンプラス


司会:みなさん、今朝は早くからピートとの電話記者会見に参加してくださり、ありがとうございます。ピートは2009年 SAP オープンに戻り、2月9日月曜日の午後7時、同じアメリカのジェームズ・ブレイクとエキシビション・マッチを行います。昨年のエキシビションではトミー・ハースと対戦し、勝利を収めました。ピートは現役時に5回 SAP オープンに出場し、1996年と1997年に優勝しました。今回はピートとブレイクの2度目の対戦となります。最初の対戦は昨年の12月にバトン・ルージュで行われたチャリティ・イベントで、ピートがブレイクを下しました。このチャリティはハリケーン・アイクとグスタフの犠牲者救済に役立てられました。

では始める前に、ビル・ラップからひと言があります。ビル?

ビル・ラップ:おはようございます、ピート。電話に出てくださる事に、もう一度お礼を述べたかったのです。我々はあなたがサンノゼの HP パビリオンに戻ってきてくれる事を歓迎し、とても興奮しています。まず2つの質問があります。96年にあなたがアガシとここで、世界ナンバー1の座をかけて対戦した決勝戦をよく覚えています。その試合について少し話をしてもらえますか。次に、ここ SAP オープンの第1夜にジェームズ・ブレイクと対戦する事についても、聞かせてください。

ピート・サンプラス:アンドレとの対戦は覚えているよ。ナンバー1の座をかけた試合だった。たしか数週間前に、彼はオーストラリアンで優勝していたと思う(実際はボリス・ベッカーが優勝)。そして僕はとても良いプレーをした。言わば少しばかりゾーン状態に入り、3と2か何かで勝利したんだ。コートに出ていくと会場は満員で、素晴らしい気分だったよ。

サンノゼでプレーするのをずっと楽しんできた。だからあそこに戻ってジェームズと対戦するのが楽しみだよ。彼とはもう何年も親しい友人なんだ。彼が向上するのに手を貸すよう努めてきた。ジェームズと対戦するのは、僕にとっては挑戦だ。バトンルージュでの対戦では、僕はかなり良いプレーをしたが、彼は優れた選手だ。動きが素晴らしい。多くの事をとても上手くこなす。

昨年はトミー(ハース)と対戦したが、観客は素晴らしかった。戻るのを楽しみにしているよ。コートも気に入っていた。速すぎず遅すぎずで、ジェームズのようなトップ10、15の選手と対戦するのは挑戦だ。試合を競い合ったものにし、良いプレーをして皆が楽しんでくれる事を望んでいる。

Q. 一般的に、こういった勝利がすべてではないというタイプの試合に臨む時、どのように対戦相手にアプローチし、どのように対していくのですか?

ピート・サンプラス:
ジェームズのような場合?

Q. はい、ジェームズ・ブレイク。

ピート・サンプラス:
これらの試合は楽しいものだが、同時に競技的である事が僕には重要だ。そして僕は引退して6年になるが、ジェームズは日々競技の場にいる。僕としてはあまりばつの悪い思いをしたくないよ。競い合ったものにしたい。もし1セットでも取れたら、素晴らしいね。

楽しみであり、挑戦でもある。自分をシャープにしておける。スポーツにおいて言わばやる気を保たせてくれる。僕はそう多くは出場しなくて、以前ほど堅実でないからね。かつてほど上手く動けないから、競い合ったものにするには、より努力が必要だ。

楽しみにしているよ。ジェームズは素晴らしい選手だ。何年もの間、素晴らしい技能を披露してきたし、USオープンでは一度、準決勝進出目前まで行った。彼のゲームとは相性がいいんだ。1カ月ほど前にバトンルージュで彼と対戦した。楽しいが、同時に我々にはプライドがある。彼は僕に負けたくないし、僕は彼に負けたくない。だが僕が負けても、それはそれで問題ないよ。10年前には、あなたと2日間も話をできなかった。今は良い機会だ。

戻るのを楽しみにしているよ。サンノゼで昨年は観客から素晴らしい歓迎を受けた。今年も同様だといいね。

Q. もう1つ。最近はフェデラーのプレーを追っていますか?

ピート・サンプラス:
まあ、そうしないのは難しいよ。今年、彼は僕の記録に並ぼうとしていて、さらに破る可能性も高い。その途上にいると思う。彼はこの先に努力が必要だと承知しているだろう。ナダルが彼をプッシュしているし、今やマレーも加わってきている。だが彼はやり遂げるだろう。時間の問題にすぎない。全盛期を過ぎても、彼はウィンブルドンで優勝をあてにできる。テニス界にとってワクワクする事だ。僕は記録を破られる訳だが、それでかまわないよ。

僕はここで言わば、彼が記録を破るのに備えているのさ。

Q. 備えていている際の気持ちはどんなものですか? つまり、ハンク・アーロンは「記録は破られるためにある」と言いました。あなたも同じ心構えですか?

ピート・サンプラス:
うん、記録は破られるためにあるんだ。自分の記録が永遠である事を望むか? そりゃそうだ。だが破るに値する者がいるとすれば、それはロジャーのような男だ。彼はもちろん偉大な選手なだけではなく、良きお手本でもある。良き友人だし、現在の僕が記録についてできる事は何もない。我々は異なった時代にプレーしているんだ。

だが彼が記録を破ろうとしている事は受け入れてきた。つまり、彼が容易く8〜9回のメジャー優勝に達した頃、記録を破るのはただ時間の問題だと承知したんだ。彼は24歳で、すでに幾つものメジャー・タイトルを獲得していた。だから彼が14を飛び越えていこうとしていると認めていた。彼は記録を破り、さらに2つほど加えると思うよ。

Q. ジェームズとアンディのゲームは見ますか? 彼らはグランドスラム・タイトルを狙えるでしょうか?

ピート・サンプラス:
まあ、ジェームズとアンディを見ているよ―――恐らくアンディにはより爆発力があり、優勝は分からないが、メジャーを狙える能力があると思う。ウィンブルドンかUSオープンで絶好調になり、何人かをコートからサーブで吹っ飛ばせる。

だが我々が見てきたように、強烈なサーブの他にもう少し何か必要だと思う。できればゲームにもう少し何かを加え、もう少し中へ詰める必要がある。だが言うは易く行うは難し、だよ。

彼らは良い状態にあると思う。だがナダルやロジャーを見ると、彼らには言わばもう1つギアがあり、ジェームズやアンディよりもずっと少ないエネルギーで、とても良いプレーができるんだ。彼らを90年代の世代と比較するのは不当だよ。だが皆は彼らがロジャーやナダルと並び立つ事を望む。現実に直面しよう。ロジャーやナダルはより優れた選手だ。より一貫して優れた選手なんだ。だがジェームズやアンディも、どこかで1回限りの勝利を掴む事はできる。

彼らは良い状態にあるよ。テニス界で本当の最上位には属していないが、それでオーケイだ。現実に直面し、ロジャーとナダルは世界最高の2人だという事を認めなければならない。マレーや他の選手たちも、まあ同じ立場だよ。

Q. 彼らはそれを受け入れてきた、折り合いをつけてきたと思いますか?

ピート・サンプラス:
うん、彼らも世界の1位と2位になりたいと思い、メジャーを目指して戦っているけどね。幾つかのメジャーでは競えると思う。だが年に10カ月間、一貫してそのレベルでプレーする事はできないと認めてきたと思うよ。それは―――難しいよ。彼らはまだそのレベルではない。

Q. 外部から見て、エキシビション・テニスは、他のスポーツのエキシビションよりもファンを興奮させるようです。それは少しばかりドラッグのようにも見えますが、あなたはテニスに感動を与え、人々は実際にそれらの試合に活気づいています。

ピート・サンプラス:
うん、娯楽の要素がある。選手たちはそれぞれの態度で臨んでいると思う。僕が現役の頃や、メジャー大会のためにプレーしている時には、仕事に精を出して、まっすぐ先へ進むだけだ。人々はテニスを正しく認識しているが、エキシビションは観客と共に楽しんだり、違った事をしたり、いつもとは違うショットを打つ事ができ、観客はスポーツにおける違ったものを見たがる機会なのだと思う。テニスでは、毎日まあ言わば同じものを見る訳だからね。

ジェームズと僕が対戦する時には、競い合うが、同時にくつろいでもいる。そして楽しみつつ少し違った事もしたりするんだ―――ジェームズがあっちへ打ち、僕がそっちへ打つとか決めたりはしていない。試合の中で、観客が楽しめるような好機がそこかしこに訪れたら、それをする。いつもとは違ったやり方で、より娯楽的になるんだ。

Q. あなたはフェデラーに言及しましたが、彼は今年に恐らく新記録を樹立するかと思われます。あなたはその場にいるつもりですか? 彼と連絡を取りましたか? 彼に同行するつもりですか?

ピート・サンプラス:
なんとも言えない。場所がどこかにもよる。ある時点でウィンブルドンには戻りたいと思っている。だが同時に、それは長い旅だ。ニューヨークの方が近いよね。より短時間のフライトだ。

どうなるかな。特に計画は立てていない。理想を言えば、その場にいられたら良いが、同時にロンドンへの12時間のフライトは、必ずしも僕の好むものではないよ。だが記録と彼に敬意を払っているから、考慮もしてきた。まあ、どうなるか見てみるよ。

Q. あなたが最近、実際にどれくらいテニスをしているのか興味があります。1週間にどれくらいですか?

ピート・サンプラス:
エキシビションの予定がない時には、それほどしない。週に1回くらいかな。それなりにシャープさを保つんだ。今回のようにジェームズやレイトンと対戦する場合には、週に3日間、1時間か1時間半ほどヒッティングをして、ポイントをプレーしたり、動き回ったり、腕をほぐしたりする。

そして出場が近づくにつれて、何回かセットをプレーする。競い合えるようにするんだ。健康を保つという訳だ。怪我をしないようにして、良いプレーをするためにね。充分なだけの準備をしているよ。

Q. 今年は何回くらい予定していますか? シニアツアーへも出場するつもりですか?

ピート・サンプラス:
うん、ジムのツアーに2回ほど出場するつもりだ。ボストンの大会に出場する。メキシコにも出場するつもりだよ。楽しい休暇といったものになるだろう。南アメリカでも予定があるが、実現するかどうかは未定だ。たくさんはしないが、3〜4カ月に一度くらいがいいね。それなりに活動的でいたいから、ジェームズとサンノゼで対戦する機会が与えられたのは好都合だった。近いし、ジェームズのような選手と競うのは楽しいからね。だから願ったり叶ったりだ。

Q. もう1つ。昨年の出場はとても良かったとあなたは述べました。この数年で分かってきた事の1つは、グランドスラムへの出場がとてつもなく重視されているという事です。グランドスラムの重要性が増したために、ツアー大会の重要性が減じているのではないか、と発言した選手もいます。スラム大会に重点を置くため、テニス界の屋台骨であるツアーの結果を見失っていますか?

ピート・サンプラス:
うん、分かるよ。ゴルフでも同じ事が言えそうだ。誰もがスラム大会の話をする。スラム大会はスラム大会だ。それを軽視する事はできない。だがスラム大会で順調にやるためには、ツアー大会も重視する必要がある。戦いの場で、相手を打ち負かさなければならない。スラム大会の時だけ力を発揮し、後は適当にやるなんて事はできないよ。

ツアー大会を損なう事になるとは思わない。サンノゼ大会やシンシナティ大会などは、上手くやっていくと思うよ。大会ならではの共同体意識が存在し続けるし、メディアも支援する。だが何よりも重視され、人々が1年を振り返った時に思い起こすのは、ロジャーはメジャー大会でどうだったか、タイガーはメジャー大会でどうだったかという事だ。つまり、それが歴史に残るような重大な事をする方法だ。

すべての大会が理解しなければならないのは、メジャー大会は多くのトップ選手を駆り立てる、僕もまた何年も駆り立てられてきたという事だ。選手たちはツアー大会を軽視したいと考えた事はないよ。ツアー大会も重要だし、ツアーの屋台骨だ。だがキャリアのある時点に来ると、メジャー大会にかける気持ちが強まり、いっそう焦点を合わせるようになるんだ。

Q. あなたはゴルフをしたり、タイガーについて話したりしていますか?

ピート・サンプラス:
うん、少しばかりプレーしているよ。週に2日くらいプレーする。外出して楽しむんだ。ゴルフはやりがいのあるゲームだ。およそ完璧にはほど遠いけれどね。外出して仲間たちとプレーして、楽しむんだ。

Q. 昨シーズンのウィンブルドン決勝、フェデラー - ナダル戦は素晴らしいものでした。2人の偉大な選手、ナンバー1とナンバー2が夕闇の迫るまで死力を尽くして戦い、ロッカールームでも大いに話題となりました。そしてもちろん、前途有望なサーブ&ボレーヤーだったマック対ボルグの5セットマッチもありました。それらの2試合について考えた時、どちらがベストだったと思いますか?

ピート・サンプラス:
ジョン - ビョルン戦については、あまり覚えていないな。当時はまだ幼かったからね。皆があのタイブレークについて話をしていた、正反対の性格を持つ2人、素晴らしい物語があった、という事は知っている。昨年の試合は、同時期に全盛期にある2人の男が、非常に高レベルのテクノロジーでプレーし、動きは優れ、劇的な終わり方をした。

年輩の人に尋ねたら、ボルグ - マッケンロー戦を挙げるかも知れない。もっと若い人に尋ねたら、ナダル - フェデラー戦を挙げるかも知れない。僕がどちらか一方を上位に置こうとするなら、純粋なドラマとしてあのタイブレークは相当に信じがたいものだったと思うよ。テニスのレベルとしては、恐らく昨年の試合だろう―――あれ以上のものは望めないよ。ゲームはより速くなり、明らかに最近の方がもっとパワフルに見える。だがボルグ - マッケンロー戦は、当時としては素晴らしいプレーだった。現在ほどパワフルには見えないが、それでも非常に劇的だった。リンゴとオレンジのようなものだよ。どちらが上と選ぶのは難しいが、どちらも最上級だ。

Q. そしてもちろん、あなたにも数々の素晴らしい試合がありました。デビスカップのロシア戦が思い浮かびます。準々決勝と決勝戦におけるアンドレとの素晴らしい2試合もありました。さらに、あなた自身の夕闇迫るウィンブルドン優勝も、すぐに思い浮かびました。もしあなたが最高の3試合を選ぶとしたら、どの試合でしょう?

ピート・サンプラス:
恐らくラフター戦だね。2週間かかえていた脛の痛みを乗り越えた事、両親がその場にいた事などがあったからね。そして言わば誰もが僕を見放していた最後のUSオープンでの優勝も、おとぎ話的な終わり方だった。90年代、そして2002年に最後のメジャー大会でアンドレと対戦したのは素晴らしかった。

ロシア戦の時は苦しかった。そして僕はとても厳しい雰囲気の中、クレーで勝つ事ができたんだ。だからあなたが挙げた3試合だと思う。コレチャとの試合は、身体的に苦しい状況で何らかの意志を示せたと言える。先に挙げた3試合が際立っているが、僕が優勝したすべてのメジャー大会は、それぞれの意味で特別なものだったよ。

Q. 朝に胃の調子が悪い時には、コレチャ戦を思い出したりしますか?

ピート・サンプラス:
そうだね、他の記者会見でも言ったように、最近は自分のキャリアについてあまり考えないんだ。子供たちとの生活が中心だよ。コレチャ戦は、最も誇れるものだとは思わない。僕は最高の体調でなかったし、あんな事が起こって―――誇れるものではないよ。だが、僕はそれを乗り越える事ができ、そしてニューヨークの人々に、僕には少しばかり才能があるかも知れないが、同じく心意気もあるのだと示す事ができたんだ。

Q. あなたが先ほど挙げた3試合、ラフター戦、最後のUSオープン、デビスカップ・ロシア戦の中で、1試合を選ばねばならないとしたら、どれを選択するでしょうか?

ピート・サンプラス:
恐らく最後のウィンブルドン優勝だね。なぜなら―――婚約したばかりだったし、両親がそこにいたし、僕は素晴らしい記録を破ったのだから。人生に完璧という事はない。だがあの瞬間はそれに近かった。個人的にも、職業という点でも。努力、そして辛い2週間を乗り切るという事の集積だった。それが個人的にも職業的にも、恐らく最高の時だったと思う。

Q. 最後になりますが、あなたは1年ほど前にロジャーとエキシビションのシリーズで対戦しました。マジソン・スクエア・ガーデンでは、彼に対して非常にタフな試合をしました。引退して何年も経ち、さほどシャープでなくなっていた時に、彼とタフな試合をできたという事は、あなたにどんな事を物語っていますか? どんな事を考えますか?

ピート・サンプラス:
僕は今でもかなり良いプレーができるという事かな。僕は良い試合、1回限りなら良い試合ができる。何回も続けてとなると、分からない。だが今でもサーブ&ボレーをかなり上手くできるし、競い合う事もできる。そして僕のゲームはロジャーにかなり噛み合っていると思う。中へ詰めて少しばかりプレッシャーをかける相手に彼は慣れておらず、多分それほど居心地が良くないのではないかな。

楽しかったよ。アジアでのコンディションはものすごく速かったので、我々のゲームを評価するのは難しかった。ガーデンのコンディションはもう少し遅かったので、我々両者にとってやりやすかった。だがそれはお楽しみだった。試合を深読みしてほしくないな。僕個人としては、競い合えた事が嬉しかった。こういう試合に出場の約束をして、45分のうちに1、1で負けるのはいやだよ。

僕にとって重要だったのは―――分からないな、想像はしなかった。だが自分が競い合う事、出場して良いプレーをしないという事のないようにするのが重要だった。ただ競い合いたかった。だから満足だったよ。

ビル・ラップ:ピート、我々との会見に対して感謝したいと思います。サンノゼでお会いするのを楽しみにしています。


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