第3章 1990〜1991年
重荷事件(4)


僕がUSオープン後の室内大会へ向けて始動した頃には、幾つかの問題が水面下でくすぶっていた。中でも懸案は、僕のコーチング状況だった。僕が最初の合衆国タイトルを獲得した後、ジョーと僕はそれぞれ浮き足だった状態にあった。僕はとても若かったので、我々がくつろいだ大人の関係を持つ事は難しかったのだ。僕のゲームは見た目ほど円熟していないと、共に承知していた。そして今や、我々は評判を守らねばと考慮していた。我々はどうやってプレッシャーにうまく対処していくのか?

あいにくジョーは一度もプロツアーでプレーした事がなかった。したがって僕の生活に生じたある次元は、彼にとって未知の領域だった。それは、適切な事をしたいと望むジョーに緊張を強いた。1991年オープンの最中、僕が「重荷」エピソードに向かっていた頃、ジョーはしばしばホテルのバーで過ごし、ワインを飲んでいた。選手との心の絆が結ばれていないのは、ツアーのコーチにとって孤独な事だ。彼はいつもそこにいなければならないのだ―――たとえすべき事が大してなくても。

だが僕は苦闘しながらも、トップ10に定着していた。僕はいろいろな意味で未熟だったが、ジョーが自身の仕事から何も得ていないと見定める事はできた。コーチングについて自分が何を必要としているか、僕の知覚はかなり鋭かった。そこで決心して、誰しものために、僕は変更をする必要があるとジョーに告げる事にした。僕はそれを、ニック・ボロテリー・テニスアカデミーの安心できる環境で告げたかった。

それはかなり妙な事だった―――19歳の僕が、倍以上も年齢が上の人間を「解雇」しようとしていたのだ。僕はジョーにこれまでの事を感謝しているが、我々の関係はその役割が終わったと思う、とだけ告げた。基本的に、それがすべてだった。そして彼は了承した。それだけでなく、彼はほっとしたと実のところ僕は思う。僕はキャリアを通して、誰かを解雇するという不愉快な仕事をエージェントや父、あるいは他の第三者に任せず、自分で行った。僕のために尽力してくれた人々に、面と向かって説明するのは自分の務めだと考えていた。ありがたい事に、僕は多くの人を解雇する事はなかった。

当時のエージェントだったイワン・ブランバーグは、僕にティム・ガリクソンと会うよう勧めた。だが1991年終盤に、ボロテリー・アカデミー近くで暮らす僕を最初に訪ねてきたガリクソンは、ティムの双子の兄弟、トムだった。ガリクソン兄弟は興味深い男たちだった―――ブルーカラーのテニスプロとして、かなりの評判を得ていた。彼らはウィスコンシン―――テニスが盛んな場所とは言いがたい―――出身のティーチングプロだったが、ツアーへの挑戦を試みたのだ。滅多にない事だが、彼らは実際にトップレベルの成果を上げた。

また2人の典型的な「普通の男」は、当時における最高のダブルスチームの1つとなり、ダブルスで得た収入をシングルへの挑戦に振り向けた。シングルス・プレーヤーとしては、ティムの方が成功を収めた―――何年にもわたって、彼は多くのトップ選手に対して堂々たる勝利を収めたのだ。中でもウィンブルドンでジョン・マッケンローを破った勝利が光っている。

1991年の秋にトムが僕に会いにきた時、我々は話をして、若干のヒッティングも行った。彼は訪問の終わりに、自分は年に30週間ほどジェニファー・カプリアティをコーチする契約を結んでいるが、双子のティムは、フルタイムで僕と働く事に興味を持つだろうと告げた。これが事前に計画されていた入れ替わり作戦だったのかは分からないが、僕はティムと会う事に同意した。

我々はフロリダで会い、若干のヒッティングを行い、話をした。ティムはトムよりもざっくばらんな人柄だったが、それは僕に適していた。彼は社交的でもあった―――生来コミュニケーションに長けていて、僕のように口の重い、人見知りがちな子供をコーチするには優れた特質だった。彼自身は決して偉大なプレーヤーではなかったが、ティムは偉大さを学ぶ者であり、その周りにいる事が好きだった。ティムはもともと卓越したボレーを持つ攻撃的選手で、僕のスタイルに近かった。さらに、彼はまだ若かった―――我々が会った時には40歳くらいだった。したがって彼にはエネルギー、情熱、そして傾倒する意欲があった。僕は1992年1月から彼を雇う事に決めた。

未解決だったコーチング状況は、1991年秋の間、僕の安定しない結果となって現れていた。シドニーではブラッド・ギルバートに敗戦を喫したが、リヨンでは優勝した。ストックホルムとパリ・インドアでは、ボリス・ベッカーとギー・フォルジェに続けざまに敗れた。年末の ATP 最終戦では、いささか慰めを得た。僕はラウンドロビンでアガシを破り、レンドルとクーリエを続けざまに下して、1年で5番目に重要な大会で優勝したのだった。


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