WatchTime magazine
2002年8月号
ピート・サンプラス 
A Class Act

インタビュー:Matthew Morse


13回のグランドスラム優勝の功績とともに、ピート・サンプラスは
おそらく史上最高の選手であろう。MATTHEW MORSEはそのレジェンドに、
フォーミュラ-1レース、モバードの腕時計、ゴルフ、そしてもちろん
テニスについてインタビューを行った。


サンプラスは1988年、16歳でプロツアーに参加した。彼はいわゆる「デンジャラス」なゲームをしたが、トップ10に達するのには2年を要した。

グランドスラム初優勝は1990年USオープンで、持ち前のパワーサービスでアンドレ・アガシ、イワン・レンドル、ジョン・マッケンロー等の選手たちを吹き飛ばした。19歳でピートは、USオープン最年少優勝者となった。

以来、彼は6年連続(1993〜1998年)の史上最多年度末1位になり、2000年には、史上初めて13回グランドスラム優勝を遂げた男となった。

スムースな物腰だが、疑いようもない才能の持ち主で、唯一欠けているものはフレンチオープン --- 彼のサービスの勢いはクレーコートに吸収されてしまう --- だけとなった。

31歳の男は、この12年間で4,000万ドル以上の賞金を獲得したが、実際のところテニス界における彼の存在は、お金あるいは名声以上のものとなっている。面白みがないとでも何とでも言えばいい、彼の素晴らしいプレイと記録は、すべてを物語っている。

以下の電話インタビューは、ピートがイタリアン・オープン出場のためローマ滞在中に行われた。


WatchTime あなたはフォーミュラ-1レースのファンだそうですが、ファンになったキッカケは何ですか?

ピート もう14年間もツアーでしょっちゅうヨーロッパに滞在しているけれど、イタリア、フランス、ドイツにいる時には、テレビで放送しているのは、なぜかグランプリ・レースだけみたいだ。そして何となく、ミハイル・シューマッハーとデーモン・ヒルのライバル関係に夢中になったんだ。レースカーの凄いスピードは信じがたいくらいだし、エンジン音、カラー……病みつきになるよ。

ヨーロッパでは、人々はモータースポーツに熱狂するようですね。フォーミュラ・カーを運転した事はありますか?

ピート いや、でも一度デーモン・ヒルと会った事がある。彼の車に実際に座ってみたし、彼がその車をテストするのを見たよ。彼の車がビュッと走るのを間近で見るのは、怖いくらいだった。

デーモン・ヒルがあなたのお気に入りですか? それともシューマッハーのファンですか?

ピート 特に誰のファンでもない。僕はたまたまデーモン・ヒルと会ったんだ。というのは、ある年ウインブルドンの最中に、彼がロンドンにいたから。

あなた自身はどんな車に乗っているのですか?

ピート スポーツカーが好きで、ポルシェ・ターボSを持っている。後はBMW Z8だ。

どのくらいのスピードで運転するのですか?

ピート 僕はロサンジェルスに住んでいて、あそこは交通量が多いんだ。でもビバリーヒルズには、スピードを出せる場所がいくつかあるんだよ。

あなたは車に何を求めますか。スタイリング? ハンドリング?

ピート スピード。僕はスピードとハンドリングが好きだ。スポーツカーだと、普通は居住性を少し犠牲にしなくてはならない……でもZ8はとても快適でコンバーチブル(たたみ込みのルーフ付き)だから、ロスでは気持ちいいよ。

ポルシェはひたすらスピードだね。ぶっ飛ばせるんだ。それとポルシェは限定生産をしているので、より特別なものになっている。だからずっと所有するつもりだ。

腕時計に関しては何が好きですか?

ピート モバードは1990年以来僕のスポンサーだから、身につけるのは全部モバードの時計だよ。彼らはとても誠実で、他のどのスポンサーよりも長い関係だ。ナイキ、ウィルソン、ジョルジオ・アルマーニよりも。

モバードがスポンサーになる前は、どんな時計をしていたのですか?

ピート Timexだ。

モバードの雑誌広告以外に、何か宣伝活動をするのですか?

ピート 一度テレビCMに出演した。それとUSオープン前には、サイン会をする。

テニスをする時には、腕時計をしていますか?

ピート いや、しない。トレーニングの時でもしない。全く相容れないんだ。ほとんどの選手は、コート上では腕時計をしない。充分に皮膚呼吸させたいからね。でもコート外では、いつでも時計をしている。僕はいま何時か知る必要のある人間の1人なんだ。

どんな種類のモバードの時計を持っているのですか?

ピート 名前を言ってみて、全部持っているよ。The Museum watch、the Eliro Chronograph、the Vizio、the Elliptica、the Sports Edition、the SE Chrono……。

ブレスレットと革のバンドと、どちらが好きですか?

ピート 実を言うと、革のバンドの方が好きなんだ。僕は毛深い方だし、革のバンドは引っかからないからね。でも充分タイトで、問題ないものもあるよ。

奥さんやご家族の分も持っているのですか?

ピート たくさんね。僕の家族も、妻も、妻の家族も……。モバードはすごく気前がいいんだ。クリスマスの買い物はとても楽だよ。

テニスの試合の間は、時間とどんな関係にありますか?

ピート 競い合っている時は、試合に完全に集中しているから、すべてがとても速く進むように感じられる。でも時には、試合がどのくらい続くのか知りたい時もある。1時間15分で終わる時もあれば、4時間かかる時もあるからね。

ストレスにさらされている時には、心臓がドキドキしているのを感じると思いますが、ナーバスになった時、それを鎮めるためにどんな事をするのですか?

ピート そういう事について、僕はあまり深く考えない。時には深呼吸したりする。ナーバスになるのもゲームの一要素だ。

では、あなたはスポーツ心理学のビデオを見たり、ポジティブになるためのテープを聴いたりはしないのですか?

ピート 全くしない。スポーツ心理学者をつけて、精神面の手助けをしてもらうアスリートもいるけれど、僕はした事がない。


ホセ・ヒゲラスを新しいコーチに迎えましたが、いままでとは違ったトレーニングをしているのですか?

ピート この2年間くらい、僕はオフコートでのトレーニングを増やしてきた……ランニングとかウェイト・リフティングとか。ヒゲラスの哲学は、コートでの練習に多くの時間を費やすというもので、僕はそれに賛成だが、それでも週に6日はワークアウトもしている。年齢を重ねると、若い選手たちと対戦するには、トレーニングレベルを上げる必要があるからね。

年齢と共に、どの面を最も強化しなければなりませんか。筋力、持久力、柔軟性?

ピート すべてだ。年を取ってくると、タフな試合の翌朝は、以前のようにはフレッシュでいられない。もっと若い頃は、そんな事はあまり考えない。いまは練習コートに向かう前に、適切なウォームアップとストレッチをしなければならないが、以前はベッドからコートに直行していたよ。それと怪我をしやすくなるし、あらゆる意味での回復に、時間がかかるようになる。

あなたはウインブルドンで最多記録である7回の優勝を遂げました。イギリスの雨の多い天気のため、何回も中断を繰り返す事を考えると、非常に大変な大会だと思いますが。

ピート ウインブルドンは、肉体的に骨の折れる大会だ。一方クレーコートのフレンチオープンは、精神的にきつい。(同時に滑りやすいクレー・サーフェスのため、多くの選手が股の付け根を痛める)ウインブルドンは芝生で、背中や関節が硬くなる。USオープンはハードコートで、足を痛める。

あなたのウィークポイントは、足だと言えますか?

ピート 僕は怪我の少ない方だけど、それでもハードコートでプレーすると、つま先を痛めたりマメができたりする。必要な時は、あらかじめ足にテーピングをしておく。僕は大きな手術を受けたりした事はないが、数年前USオープンで、椎間板ヘルニアになった。

そうでしたね。もし背中を痛めなかったら、あなたは奥さんに出会う事はなかっただろうという記事を、どこかで読みましたよ。話題を変えましょう。何か他のスポーツはやりますか?

ピート 僕は高校を17歳で中退して、プロテニスツアーに参加した。そしてごく自然に、ゴルフをやるようになったと思う。ツアーの他の人たちがゴルフをやっていて、くつろぐのにいいんだ。僕にとっては、テニスからの格好の逃避だね。

有名人ゴルフ大会のドライブ・コンテストで、一度優勝したそうですね。あなたのサービスは時速130マイルをゆうに超える事を考えると、納得できます。

ピート それは僕の、ほんの15分ばかりのゴルフでの栄光さ。実際は、ただ楽しみのためにゴルフをしている。

テニスはどんな風に始めたのですか?

ピート 7歳の時に地下室で古いラケットを見つけて、地下室やガレージの壁に向かってボールを打つようになったんだ、ごく普通の子のように。

同じ頃、ワシントンDCからカリフォルニアのパロス・ベルデスに引っ越して、姉のステラと僕は、テニスに真剣に取り組むようになった。兄と妹は、それほどテニスに熱狂しなかった。

テニスと学校生活を、どう両立させたんですか?

ピート 僕は地元の公立高校へ行ったんだけど、8時から12時までだけ授業を受けるという取り決めをした。遠征に出る事も認めてくれた。

でも全体的には、僕の育ち方はごく普通だよ。

そしてあなたは17歳でフルタイムのプロ選手になり、19歳の時、USオープンでグランドスラム初優勝を遂げましたね。それ以後、あなたはお金の心配をする事をやめ、純粋に競争に集中するようになったと何かで読みましたが。

ピート 17歳の時には、現実的な意味でお金の心配をするには若すぎたけれど、コーチへの支払いがある事は分かっていたよ。19歳の時USオープンで優勝して、経済的には保証されたんだ。

1年の内、何カ月ツアーを回るのですか?

ピート テニスにはオフシーズンというものがない。だから以前は、11カ月はプレイしていた。この2年くらい、僕はUSオープンの後、4カ月のオフを取るようになった。ツアーは世界じゅうを回るもので、肉体的にも精神的にも信じられないくらい骨が折れる。だから僕は自分でオフシーズンを作り出したんだ。

「オフシーズン」の間、どんな事をするのですか?

ピート ただ閉じこもるんだ。ゴルフをし、少しばかりトレーニングをし、妻とレストランでの食事や映画を楽しんだりする……休暇を取るという事だね。ただジッとしていて、体調は保つ。多くの時間を家で過ごし、テレビでレイカーズの試合やゴルフを観ているよ。

もっと若かりし頃、「いつも個人的なゴシップを追い求める」記者たちに気分を害し、彼らはもっとテニスについて学ぶべきだと抗議していましたね。

ピート メディアはいつも論争のタネを探していて、それは僕が一度も提供しなかったものだからね。スポーツの人気を得る助けになるのは、良いライバル関係である事は明らかだ……だからアンドレ・アガシと対戦する時はいつも、僕は何の説明をする必要もなかった。でもしばらくの間、売り込むべきライバル関係はなかった。何もなくて……ただ僕がだいたい勝っているだけだった。

子供たちはウッドのラケットでテニスを学ぶべきだとあなたは考えていますが、その理由は何ですか?

ピート 初期の段階は、正しいテクニックを学ぶべき時期で、本来は存在し得ないごまかしのパワーは、ウッドのラケットでは得られない。12〜13歳になるまでは、人工的なラケットを手に取るべきではないよ。

テニスの将来は、どうなっていくと思いますか?

ピート ただ良くなっていくと思う。そしてクラシックなサーブ&ボレー・テニスは廃れていくだろう。(サンプラスはサーブ&ボレーヤーである)みんなステイバックし、ベースライン・プレーヤーが増えるだろう。

しかし最高のテニスはいつも、対照的なスタイルがぶつかり合う時ですよね。攻撃的なパワー・サーバー対守備的なベースライナー。80年代に、ロサンジェルス・レイカーズがボストン・セルティックスと対戦するのを見るような感じですね。

ピート その通り。


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