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テニスマガジン 1990年11月?日号 WHO is PETE? 写真:中嶋 常正 |
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ニュー・チャンピオンはクール、大胆&コミカル? 全米優勝後のインタビュー全文を一挙掲載 |
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全米よりもウインブルドンで勝つことの方が難しいよ。歴史もプレステージも全然違うし… お父さんは試合を見てた? サンプラス(以下ピート) わからないけど、たぶん見てなかったんじゃないかな。でも、本当のところ見ていたか見ていなかったのか知らないんだ。あとで聞いてみるよ。きっと家族の誰かが試合のビデオを撮っていてくれるとは思うけど。 自分が良いプレーをしているということは、始めから自覚してた? ピート 最初の1ポイント目から感じていた。きのうもプレーしたということがきっとその原因だね。レンドルとの試合のあと、マッケンロー戦に備えて数日間あいたために、いろいろ考えすぎてナーバスになってしまったけど。今日の決勝よりもずっと緊張していた。 |
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今日はきのうも試合があったおかげで、よけいなことを考えるヒマがなかったから、良いプレーができたんだと思う。初めてグランドスラムの決勝まで進んだっていうのに、初めの1ポイントからまったく神経質にはならなかったよ。 試合前も? ピート まったくいつもと変わらなかった。今朝練習したときもきのう夜ねるときにもね。すごいよ。まったく素晴らしい経験だった。 アンドレはどうだった? ピート 彼はすごく緊張してたよ。グラウンドストロークにしてもいつものような深いボールが打てず、まったく別人とやってるみたいだった。完全にボクのペースだった。 |
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特に彼のサーブにはまったく威力がなくて、前に出る気もまったくなかったみたいだったね。それにムリにエースを取ろうと強打してきたので、驚いたね。 全然地に足がついてないっていう感じだった。強打に頼ってボクのプレーを封じようとしていたみたいだけど、いつもの彼ならあんなプレーはしないよ。 サーブによって相手にかなりプレッシャーを与えることができたのでは? ピート この1週間を通じてサーブの調子はずっと良くて、対戦相手に何らかのプレッシャーを与えることができたのは確かだね。特に相手のサービスゲームにはね。 なぜなら、もしサービスゲームをキープできなければ、即、それがセットダウンにつながるということをボクのサーブの威力が相手に教えたからなんだ。 |
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今、自分が成し得たことを実感できてる? ピート いや、全然。たぶん何日かたてば、落ち着いて、今大会での出来事を実感できるだろうと思うけど。 もし、今年の1月に誰かがキミが全米チャンピオンになると予言していたとすれば、キミはどう思ったかな。 ピート なんてクレイジーだと思っただろうね。でも、ある意味では、ボクは勝つために必要なことをしてきたと言える。練習は本当によくやったし、今年の夏はとても調子が良かったしね。ニック・ボロテリーのテニス・アカデミーでがんばったかいがあったよ。 |
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今日(決勝)のプレーを分析してくれるかな。 ピート 今日は2週間を通じて最高のプレーができたと思う。それは間違いない。自分としてもベストのプレーができたし、これまでと比べてもベストマッチだったと思う。これ以上のプレーはちょっとできないだろうね。 全米チャンピオンになることは最大の夢だった? ピート 全米よりもウインブルドンで勝つことの方が難しいと思う。歴史が違うしプレステージもウインブルドンの方がずっと高いし…。でも、ボクがもっとも大きなタイトルのひとつを手にしたのは事実だ。 |
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大統領がアンドレだけに電話してきたって? ボクの部屋の受話器ははずれてたんだよ 自分自身を分析すると、キミはどんな人間なんだろう。 ピート オン・コートでもオフ・コートでも、ほとんど変わりがないと思う。イージーでおっとりしているというか、オフ・コートでもイラついたりすることはほとんどない。 ただ、どこにでもいる19歳の男の子がテニスプレーヤーという特異な職業について、こんな大それたことをやってのけただけだよ。 |
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どうすればキミのように冷静でいられるのだろう。 ピート どうしてなのかは自分でもわからない。ただそういう性格なんだ。どうしておっとりしているのかと聞かれても、たぶんそれがボクに合ったプレースタイルで、それはキッチリと決まった形ではないけど、ボクにとってはそうプレーすることが自然だということに気がついて、今に至ったんだ。 14・15歳の頃はコートの上でも感情的になってしまうこともあったし、プレースタイルもカウンターパンチャーだったけど、スタイルを変えてからは、コートの上でもリラックスできるようになったんだ。 どうやって変えたの? ピート 14歳のときに、ネットプレーの練習を集中して行い、3年前にはバックハンドを片手打ちにして、プレースタイルをまったく変えてしまったんだ。ある日、チャンのようなカウンターパンチャーから、エドバーグのようなサーブ・アンド・ボレーヤーに変身したというわけさ。 アガシはこれでグランドスラム・タイトルを2度逸したわけだけど、このことが彼の実力の限界を物語っていると思う? |
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ピート いや、そうは思わない。今年は勝てなかったけど、来年はそれが達成できるかもしれない。それだけの実力が彼には備わっていると思うよ。 レンドルだってそうだったじゃないか。彼が最初のグランドスラム・タイトルを手にするまでマスコミは彼について散々書きまくった。 アンドレは23か24歳になる前に、きっと全仏か全米のタイトルを取ると思うよ。 |
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ベスト4にアメリカ人が3人入ったにもかかわらず、ブッシュ大統領はアンドレにしか電話をかけなかったということに大して不満はなかった? ピート 大統領が? それは知らなかったよ。たぶんボクの受話器がはずれていたんだよ。 決勝のボクのプレーは今年のテニス界の中でも最高のプレーだったんじゃないかな 史上最年少の全米チャンピオンとして、気分はどう? そのことをキミはわかってた? ピート それが、トニー・トラバートに聞いて初めて知ったんだ。とってもいい気分だよ。 今日のキミを誰が倒せると思う? ピート その質問には答えられないよ。だって全盛期のボルグやマッケンローとはプレーしたことがないんだからね。でも、今日のボクのプレーは今年のテニス界では最高のプレーだったというのは確かだよ。 |
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どうして家族は観戦に来なかったの? ピート 今日はコーチのジョー・ブランディだけが来ていた。彼さえいてくれれば十分なんだ。大勢の人に囲まれるのは好きじゃない。彼とはとても良い関係なんだ。 家族の中では兄だけがいっしょに旅をしたり、プレーを見ていてくれたりする。姉と妹はふたりとも学校があるし、両親はとても息子のプレーをじっと見ているなんてできないみたいなんだ。 きのうの夜は両親と話をした? ピート ああ。がんばってもう1勝するようにって。きのうも両親はビデオで試合を観たらしいんだ。 |
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キミが勝ったことを知ったあとで? ピート そう。まったくイージーだろう? どうしてプレースタイルを変えたの? ピート ジュニアとしてはまだしも、本当の意味で、テニスプレーヤーとしてボクは行き詰まっていたんだ。サーブが弱く、ボレーなんか全然できなかった。で、3カ月のオフを取って、当時のコーチ、ピート・フィッシャーの勧めでバックを片手にした。最初はまったく彼の意見に賛成できなくて、6カ月たってもまだ納得しなかった。でもジュニア・デビスカップのメンバーになって変化が起きたんだ。 |
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それから1年後、ボクはチャンにジュニアの大会で勝ち、それからどんどん勝つことができるようになったんだ。そうして自信も手にすることができた。もし、あのときに決心していなければ、今日のような日はおそらく来なかったと思うよ。 サーブの方はどう変えたの? ピート 体が大きくなるにつれてサーブがボクの強い武器となってくれた。今ほどサーブ力がなければ、もっと長い時間プレーしなければならなかっただろうね。 それにグラウンドストロークでも自信が持てるようになった。今日のボクはアンドレ相手にも良い打ち合いをした。そのことに対しては、本当にものすごくうれしく思っている。 |
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プレッシャーはこれからどんどん大きくなっていくだろうね。でも、ボクはそうした状況にドップリ浸って、逆にそれを楽しみたいと思ってるんだ これからは全米チャンピオンとしてどう変わっていくんだろう? ピート 今年の夏は世界第12位としてプレーし、プレッシャーをコントロールすることができるようになった。でも、まだスタートしたばかりだよ。若い人たちがどんどんあとを追ってくるし、プレッシャーはもっと強くなる。でも、責任を果たすことはできると思っている。もし、それができなければ、プレッシャーはどんどん大きくなるだけだろう。ボクはそうした状況にドップリと浸って、なおかつそれを楽しみたいとも思ってるんだ。 ボロテリーのところで練習するときに、アガシとプレーしたことはある? ピート いや、彼とは一度もいっしょにやったことはないよ。 キミがいずれチャンピオンになるだろうというフレッド・ペリーのコメントについてはどう思う? ピート すばらしい、のひと言だね。しかも、彼のような偉大なプレーヤにそう言ってもらえるなんて。 リラックスしたいときには何をする? ピート プロになってからはもっぱらゴルフを楽しんでるんだ。テニスのことを忘れられるし、テニスをやめたらゴルフに熱中するだろうね。ハンデも16か17だよ。 |
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第3セットの前半、サーブのリズムが崩れたけど……。 ピート もうちょっとで第3セットをアンドレに取られるところだった。ブレークポイントをいくつか握られ、サーブが入らなくなった。でも、彼はそのチャンスをものにすることができず、なんとか調子を取り戻せたんだ。 キミはウインブルドンでは1回戦で負けているけど、何が違ったんだろう。 ピート ただサーフェスが違っただけだよ。この10年間、ボクはハードコードでプレーし続けてきた。でも、いつかは芝がボクのベスト・サーフェスとなる日が来ることを望んでる。でも、今のところはサプリームとハードコートで良い結果が出ているんだけど。 |
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モデルとするプレーヤーは? ピート ボクはいつも昔のプレーヤーに憧れていた。レーバーだとか、ローズウォールだとか。以前はレーバーみたいなプレーをしたいとずっと思っていたんだ。ボクは本当にあの頃のテニスが好きで、良い選手がいっぱいいた中でも、あのふたりが特に印象に強く残ってる。あんなすばらしいプレーヤーの仲間に入ることができたら、と思うよ。 どんなふうに彼らを知っているの? ピート コーチがロッド・レーバーの古いテープを持っていて、彼の家で見せてもらったことがある。それに1971年と72年にダラスで実際に試合を見たこともあるんだ(注:ピートは1971年に生まれたので、多分「フィルムを見た」の間違い)。すばらしいプレーだった。彼はどんなサーフェスだって持っているすべての技を出すことができるんだ。後ろでだって戦えるし、ネットへ出ることだってできる。本当にすごかったよ。 |
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