実務上の分類


方式(システム)の発明


 方式とは何かについて具体的な定義はありませんが、通常、発明の構成要素が、空間的に2ヶ所以上にまたがるとき、これをシステムとして捉えることが多いようです。

 例えば、銀行における預貯金確認システムとして、
 「顧客に設置した端末と、本店に配置したホストコンピュータと、前記端末とホストコンピュータとを接続するネットワークとを備え、
 前記端末は、口座番号を入力する口座番号入力手段と、
 前記口座番号入力手段で口座番号が入力された後にホストコンピュータにアクセスを可能にする識別符号を入力する識別符号入力手段と、
 この識別符号入力手段で入力された識別符号が前記口座番号入力手段で入力された口座番号に対応して予め設定された識別符号に一致するか否かを判定し一致したときにホストコンピュータと端末とを接続する通信手段と、
 を有し、
 前記ホストコンピュータは、前記端末からの要求に応じて、前記口座番号の口座ファイルを検索するファイル検索手段と、
 ファイル検索手段で検索されたファイル内容を前記端末に前記ネットワークを通じて送信することを特徴とする預貯金確認システム。」

 このようなシステム発明の場合、構成要素が、前記例では銀行とその取引上の顧客等、複数の主体にまたがることが多く、その結果、その主体が実施しても特許発明の直接侵害とならないこととなり、間接侵害しか成立しないので、権利保護の実効性が弱いという欠点があります。

 上記の場合、端末を販売する者は直接侵害者として訴求できません。もし、特許法101条の「のみ」に該当する場合は間接侵害となりますが、端末が、他の機能を有し、前記預貯金確認用以外の用途にも使用できるなら、間接侵害となりません。特に端末自体、パーソナルコンピュータであったりすると、他の用途に十分使用できるので、侵害訴訟の場合不利です
 従って、各構成要素からシステムを見込んで発明を捉えることが重要でしょう。
 例えば、上記例について
 「本店に配置したホストコンピュータに、ネットワークを介して接続される預貯金確認用端末であり、
 口座番号を入力する口座番号入力手段と、
 前記口座番号入力手段で口座番号が入力された後にホストコンピュータにアクセスを可能にする識別符号を入力する識別符号入力手段と、
 この識別符号入力手段で入力された識別符号が前記口座番号入力手段で入力された口座番号に対応して予め設定された識別符号に一致するか否かを判定し一致したときにホストコンピュータと端末とを接続する通信手段と、
 を有し、
 前記通信手段で前記ホストコンピュータに送信した要求に応じて、前記口座番号の口座ファイルから得られたファイル内容を前記ネットワークを通じてホストコンピュータから受信することを特徴とする預貯金確認用端末。」
 とすれば、端末を販売する者を直接侵害者として訴求できます。


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