清涼飲料水用缶の参考解答例添削例

弁理士 遠山 勉
(01/06/01改訂:05/04/03更新)

 
 以上の各章で、明細書を書くために必要な事項を種々説明してきましたが、それらを考慮して、発明の分析結果を用い、どのように明細書を書くかについて、先に分析した清涼飲料水用缶の発明について、具体的に明細書を書いてみましょう。
 
 ここで、発明の動的分析結果を振り返り、その分析データをどのように明細書の各項目に配分するかというストーリー展開を計画します。
 
 
動的分析結果
 
目 的
主目的
(1)従来製品 プルタブと開口片が缶から離脱→離脱したプルタブ等が離散して環境破壊→プルタブ・開口片の離脱防止を主目的とする。
(2)離脱した開口片は危険←PL問題を考慮
副次的目的
(1)開口性の向上
(2)操作性の向上
 
構 成
(1)缶本体(天板・底板・円筒形胴部)→天板、底板、筒形胴部からなる容器本体
(2)内容物を収容する上で缶本体は必須(物が物として自立するための要件)
(3)天板、底板のない容器は事実上販売されない→事実上の限定でない限定として許容
(4)胴部は筒状であれば円筒でなくともよい→筒形胴部
(5)天板上の前方後円墳型段差部→天板の強度向上→段差、突条等の補強手段→補強により剪断力が切溝線に集中しやすくなる→開口片の開口性向上
(6)段差部で囲まれた平板部
(7)3つの突起→回転止め、プルタブ引き上げ部のリフト部(天板側に設けてもプルタブ側に設けてもよい)→操作性の向上
(8)平板部中央に設けたリベット→プルタブをリベットにより平板部に固着→プルタブ固着部
(9)連結部を残して平板部の所定区域(開口片)を囲む螺旋状の2重の切溝線→連結部を残して開口片を画成する切溝線
(10)切溝線内の開口片に設けたU字状突条→開口片補強用突起
(11)U字状突条内の突起→プルタブの押し下げ部当接部、開口片補強用突起兼用
(12)プルタブ→天板に固着された固着部を支点とするとともに引き上げ部を力点、押し下げ部を作用点としたてこ作用による開口具
(13)プルタブに設けたリング状部→引き上げ部
(14)固着部周りに設けたC字状スリット→固着部周りの引き上げ部側に設けたスリット
(15)C字状スリットの内側中央部に設けられ、突起の一つに係合する係合溝→周り止め
(16)リング状部を引き上げたとき、開口片を押し下げる押し下げ部→開口片を押し下げる押し下げ部
(17)リング状部に対応して平板部に設けた凹部→プルタブ引き上げ部・天板間のクリアランス形成部 
 
  作 用 ・ 効 果
 
(1)缶本体→清涼飲料水を収容→流動体を収容→形は問わない
(2)前方後円墳型段差部→平板部の画成と天板部の強度向上→段差、突条、画成部の形状は前方後円墳型に限定する必要なし。
(3)平板部→プルタブ及び開口片の受容
(4)3つの突起→一つは係合溝に係合してプルタブの周り止め →周り止めできれば突起に限らず→周り止め係合部。他の2つはリング状部を平板部から浮上させる→引き上げ部を浮上させるためには天板側・プルタブ側いずれに設けてもよい→操作性向上
(4)リベット→プルタブの固定とプルタブ引き上げの際の支点→プルタブの固着部
連結部→開口片の離脱防止
(5)螺旋状の切溝線→螺旋状にすることで、切溝線の始端側から終端側へと順次剪断力が伝わる→開口性の向上。
(6)2重の切溝線→開口片の開口→内側の切溝線が谷状に折れることで外側の切溝線が山状に折り、剪断力が外側の切溝線に集中する→開口性の向上
(7)開口片に設けたU字状突条→開口片の強度向上→U字状である必要はない。
(8)U字状突条内の突起→プルタブの押し下げ力を受ける
(9)プルタブ→開口片の開口→てこ作用を利用している。
(10)リング状部→プルタブの引き上げ(てこの力点)→引き上げのためリング状である必要はない→単に引き上げ部とする。
(11)固着部→リベットとともにプルタブ引き上げる際の支点→リベットを包含する意味も含めて単に固着部とする。
(12)C字状スリット→プルタブのてこ作用の機能向上→C字状である必要はない→開口性、操作性向上。
(13)係合溝→プルタブ周り止めできればよい→係合していればよい→周り止め係合部→操作性向上
(14)押し下げ部→開口片に開口力を加える作用点→開口片を押下げられればよい→単に押し下げ部とする。
(15)リング状部対応の平板部の凹部→リング状部と平板部間のクリアランスを大きくする→指掛け容易化→操作性向上。クリアランスを大きくできればよい→リング状部を上方に弯曲させてもよい。 
 
 
ストーリー展開
 課題の設定としては、従来例として、プルタブ、開口片が離脱する従来の清涼飲料水缶を掲げ、従来製品がプルタブと開口片が缶から離脱→離脱したプルタブ等が離散して環境破壊→そこでプルタブ・開口片の離脱を防止するという点を主目的として、ストーリーを展開する。
 (2)離脱した開口片は危険ということにはPL問題を考慮して言及しないこととする。
 その後、副次的目的である、開口性の向上と操作性の向上を課題中に掲げる。
 なお、場合によっては、この副次的目的は、実施の形態の部分で言及してもよい。
 
 解決手段の項、実施の形態の項には、主目的に対応する構成を主体に説明し、次に副次的目的に対応する構成を説明する。その後、他の実施形態、あるいは、変形例として、設計変更事項を説明することとする。
 
主たる構成として
 
(1)缶本体(天板・底板・円筒形胴部)→天板、底板、筒形胴部からなる容器本体
(2)内容物を収容する上で缶本体は必須(物が物として自立するための要件)
(3)天板、底板のない容器は事実上販売されない→事実上の限定でない限定として許容
(4)胴部は筒状であれば円筒でなくともよい→筒形胴部
(8)平板部中央に設けたリベット→プルタブをリベットにより平板部に固着→プルタブ固着部
(9)連結部を残して平板部の所定区域(開口片)を囲む螺旋状の2重の切溝線→連結部を残して開口片を画成する切溝線
(12)プルタブ→天板に固着された固着部を支点とするとともに引き上げ部を力点、押し下げ部を作用点としたてこ作用による開口具
(13)プルタブに設けたリング状部→引き上げ部
(16)リング状部を引き上げたとき、開口片を押し下げる押し下げ部→開口片を押し下げる押し下げ部
 
を説明し、
 
 
従たる構成として
(5)天板上の前方後円墳型段差部→天板の強度向上→段差、突条等の補強手段→補強により剪断力が切溝線に集中しやすくなる→開口片の開口性向上
(6)段差部で囲まれた平板部
(7)3つの突起→回転止め、プルタブ引き上げ部のリフト部(天板側に設けてもプルタブ側に設けてもよい)→操作性の向上
(10)切溝線内の開口片に設けたU字状突条→開口片補強用突起
(11)U字状突条内の突起→プルタブの押し下げ部当接部、開口片補強用突起兼用
(14)固着部周りに設けたC字状スリット→固着部周りの引き上げ部側に設けたスリット
(15)C字状スリットの内側中央部に設けられ、突起の一つに係合する係合溝→周り止め
(17)リング状部に対応して平板部に設けた凹部→プルタブ引き上げ部・天板間のクリアランス形成部
 
を説明する。
 
 
明細書例
 
以上を基に、明細書を書く。参考明細書はここ
 
 
清涼飲料水用缶の請求の範囲の添削例

 

 以下は、1998年度、1999年度の知的財産協会、明細書研修コースの参加者による特許請求の範囲の回答とその添削を示したものです。一太郎の添削モードで添削しました。表現の方法等でのアドバイスをご参考にして下さい。

 

演習問題回答添削例1

 
【発明の名称】  流体用缶容器のプルタブ式開口構造
【特許請求の範囲】
  【請求項1】 上下面を有する円筒体の流体用缶容器の上面に設けられた注口用のプルタブ式の開口構造であって、開口を形成するため前記上面に一部が連通しない部分を有して環状に形成された切溝線と、一端側に前記切溝線の内側範囲に突き出た突出部を形成し他端側にタブ部を形成し、前記切溝線の外側の範囲でかつ突出部とタブ部との間で前記上面に連結されたプルタブを有することを特徴とする流体用缶容器のプルタブ式開口構造。
【コメント】請求項には構成を記載すれば必要かつ十分ですので、「開口を形成するため」などのように「  するため」という目的を記載する必要はありません。その構成をとれば必ず「開口」が形成されるからです。但し、発明の要旨が変動しない限りそのような用語を用いても問題はありません。
 また、用語として「タブ部」という言葉が出てきます。タブ部という技術用語を理解できる人であればこの請求項は理解できますが、タブ部とは何?と疑問に思うと、さてどうでしょうか? 開示要件としては、当業者が容易に実施できる=当業者が容易に理解できる、ということであり、その意味ではタブ部でもよいのでしょうが、誰にでも分かりやすい、疑義の少ない明細書を目差すのであれば、タブ部という言葉でなく、「引き上げ部」あるいは「指で引き上げ可能な引き上げ部」という表現等を使用するとよいでしょう。
 
 
演習問題回答添削例2
【特許請求の範囲】
  【請求項1】 上面部、側面部、底面部を含む本体からなる容器において、前記上面部に設けたプルタブの取っ手部と押圧部の間にある接合部を、 接合部材を介して前記上面部に一体的に取り付けるとともに、前記プルタブの押圧部が当接することのできる位置に配置された開口片の外縁に円弧状に設けた切り溝線の両端部が互いに非連結であって、前記非連結部を前記プルタブ押圧部周辺に設けたことを特徴とする容器
 【コメント】 「前記上面部に設けたプルタブの取っ手部と押圧部の間にある接合部を」という表現は不意打ち禁止の原則に反します。
 「前記本体の上面部にプルタブを設け、このプルタブは取っ手部を一端側に有するとともに、押圧部を他端側に有し、かつ、取っ手部と押圧部との間に接合部を有し」というように、構成要素の存在を逐一「宣言」しながら説明していくようにします。その他にも同じような問題があります。この点を考慮して修正すると、以下のようになります。また、円弧状という表現も限定的です。
 
【請求項1修正後】 上面部、側面部、底面部を含む本体からなる容器において、前記上面部にプルタブを設け、このプルタブ取っ手部を一端側に有するとともに、押圧部を他端側に有し、かつ取っ手部と押圧部との間にある接合部を有しこの接合部を接合部材を介して前記上面部に一体的に取り付けるとともに、前記プルタブの押圧部が当接することのできる上面部の位置に開口片を配置し、この配置された開口片のを画定すべく取り巻いて外縁に円弧状に設けた切り溝線を設け、この切り溝線は、両端部が互いに非連結であって、前記非連結部を前記プルタブ押圧部周辺に設けたことを特徴とする容器
 
 
演習問題回答添削例3
【発明の名称】    プルタブと開口片が離脱しない缶本体
 【コメント】この名称はあまりふさわしくはありません。「プルタブと開口片が離脱しない」というのは「目的」ですし、「缶本体」というのは、部品としては中途半端な位置づけの物です。缶というのもやや限定的で、容器とか、容器構造とか、開口部構造とかのレベルがよいでしょう。
 
【請求の範囲】(1)  設置及び把持できるように、天板、側面板及び底板で構成される収容用缶本体において、
 天板は、前方後円形のくぼみ状段差をもち、
 その前方部分にくぼみ及び突起を含み、
 後円部分に連結部を一部残した円状切溝線を含み、
 前方部分に固着したプルタブは、
 プルタブを天板に固着するための固着リベット、
 天板前方部分の突起を休止するための休止溝、
 プルタブを天板から引き上げるためのリング
 を含むことにより、プルタブの引上で天板を開口すると同時に、
 プルタブ及び開口片を離脱しないようにすることを
 特徴とする缶本体。
 
 【コメント】どこまで限定するかは、従来例との関係で決まりますが、講義で示した分析からも明かなように、プルタブと開口片の離脱防止という点からすれば、不要な限定が多すぎます。よって、(  )内はなくてもよい限定です。補強等の目的を入れるのであれば(  )内の限定が活きてきます。また、構成だけで特定し、作用・効果を請求項中に記載しないようにする必要があります。上記の表現をできるだけ活かして修正しますと、以下のようになります。
 
 (1) 設置及び把持できるように、天板、側面板及び底板で構成される収容用缶本体容器において、
 天板は、前方後円形のくぼみ状段差をもち、その前方部分にくぼみ及び突起を含み、後円部分に連結部を一部残して所定範囲を取り囲むた円状切溝線を含み、
前方部分に固着した)さらに、プルタブは、
 プルタブを天板に固着するための固着リベットで天板に固着され、天板前方部分の突起を休止するための休止溝、
 プルタブは、を天板から引き上げるための引き上げ部とリング
 前記切溝線で囲まれた部位を押圧する押圧部を
 を含むことにより、
 プルタブの引上で天板を開口すると同時に、プルタブ及び開口片を離脱しないようにすること
 特徴とする収容用容器缶本体
 
 2) 後円部分の前記連結部をプルタブの固着リベットを中心に
 非対称の長さにしたことを特徴とする、
 請求項(1)に記載の缶本体収容用容器
 (3) 前方部分に固着したプルタブは、
 天板前方部分の突起を休止するための休止溝を有することを特徴とする請求項(1)に記載の収容用容器。
 【コメント】休止溝を請求項1から削除したので、ここで始めて「休止溝を有し」としました。
(4)前記休止溝を円弧状にしたことを特徴とする、請求項()に記載の収容用容器缶本体
 
 
演習問題回答添削例4
 
【特許請求の範囲】
【請求項1】 開口部を形成するための切り溝線と、指を引っかけ力を加えることにより、該切り溝線を切り開いて開口部を開くためのプルタブを設けた天板を有する流動体を収容する容器であって、
 前記開口部の周縁は、切り溝線を有する部分と、一部切り溝線を有しない天板本体と開口部とを繋ぐ連結部から成り、前記プルタブは、指を引っかける力点と、プルタブ本体を開口部近傍の天板本体に取り付ける支点と、開口のための力が加わる作用点を有する梃子を形成し、該作用点によって前記開口部に開口のための力が加わる位置が、開口部の周縁の内側であるように成したことを特徴とする流動体を収容する容器。
【コメント】この回答例は、発明分析において必須とされた構成要件を上手く捉えて表現しております。欲を言えば、表現をもう少し客観的にするとよいと思います。例えば、「開口部を形成するための切り溝線」というのは開口部を形成するという目的はわかっても、ではどういう構成の切り溝線かは必ずしも明確ではありません。限定的にならずしかも構成が客観的に理解できるような表現を使えるようにするとよいでしょう。
 上から3行目の「天板」にかかる修飾語が長すぎて読み辛いので、できるだけ頭に入って来やすい表現を工夫すべきでしょう。
 開口部の「周縁」、「天板本体」は不意打ち(先行詞がない)です。
【請求項1修正案】 天板を有するとともに、この天板の所定領域を囲んでその領域内を開口部とするを形成するための切り溝線と、指を引っかけ力を所定領域内に加えることにより、該切り溝線を切り開いて開口部を開くためのプルタブを設けた天板を有する流動体を収容する容器であって、
 前記開口部を形成する切り溝線の周縁は、一部が途切れて切り溝線を有する部分と、一部切り溝線を有しない天板本体と開口部とを繋ぐ連結部から成り、
 前記プルタブは、指を引っかける力点と、プルタブ本体を開口部近傍の天板本体に取り付ける支点と、開口のための力が加わる作用点を有する梃子を形成し、該作用点によって前記開口部に開口のための力が加わる位置が、開口部の周縁の切り溝線の内側の開口部上であるように成したことを特徴とする流動体を収容する容器。
 
 
演習問題回答添削例5
【発明の名称】
容器の開口部
【特許請求の範囲】
1.円筒形胴部の両端を平面で封印した容器で、圧力により切断する切り溝線で形成される開口部を平面部に設けた容器に於いて、開口部の切り溝線が開口部全周に連続せずに、分断していることを特徴とする容器の開口部。
 
(開口部が切り離されないことが最も重要と考え、このことだけをクレームとしました。指で押すことで開口部が開く、2穴を持つ事例もカバーするように、請求範囲を設定してみたつもりです)
【コメント】必須要件の絞り込みに対する注意力と、使う用語に対する注意力がアンバランスです。開口部が切り離されないことだけをクレームし、広い範囲にしたとしても、円筒形の容器のみに限定されるのではもったいないといえましょう。
 
(修正案)1.円筒形胴部の両端を平面で封印した容器で、圧力により切断する切り溝線で囲まれて形成される開口部を平面部に設けた容器に於いて、開口部の切り溝線が開口部全周に連続せずに、分断していることを特徴とする容器の開口部。
 
 
演習問題回答添削例6
 
【名称】容器本体
 【コメント】発明の名称の欄と請求項の欄の名称が異なっております。
【請求項1】容器本体の上下にそれぞれ天板と底板とが形成された容器において、前記天板には、切溝線で仕切られた内側に開口片が形成されており、前記開口片の反対側には、プルタブが固定され、前記プルタブの左右一方側に引き上げ部、前記引き上げ部の左右反対側に前記開口片と対応して押下部が形成されており、前記プルタブの引き上げ部を引き上げることにより、前記プルタブの固定部が支点となり、前記押下部が押し下がって前記開口片を押圧し、前記開口片の切溝線部分が離脱し、前記平板部に開口を形成したことを特徴とする容器。
【コメント】この請求項は、発明の分析に従って、必要最小限の構成要件に絞ってあるように見えますが、残念ながら、開口片が容器から離脱してしまう場合も含みますので、その意味で課題を解決しておりません。また、表現の正確さに若干の甘さが見られます。
また、用語中、対句が上手く使われておりません。内側(左右一方側)という用語を使用したのであれば、それに対応して外側(左右他方側)という用語を用いるとよいでしょう。また、左右というのであれば何を基準に左右というのかを明確にするのが親切でしょう。6行目の平板部は不意打ち(先行詞なし)です。6行目の「形成した」は誤りです。本発明は開封前の状態も含むので、正確には「形成する」です。
 
【請求項1修正案】容器本体の上下にそれぞれ天板と底板とが形成された容器において、前記天板には、所定範囲を切溝線で囲んで仕切られた内側に開口片が形成されており、前記開口片の反対側には、プルタブが固定され、この固定部を境に前記プルタブの左右一方側に引き上げ部、プルタブの前記引き上げ部の左右反対他方側に前記開口片対応して押下部が形成されており、前記プルタブの引き上げ部を引き上げることにより、前記プルタブの固定部が支点となり、前記押下部が押し下がって前記開口片を押圧し、前記開口片の切溝線部分を破断して離脱し、前記天板平板部に開口を形成するしたことを特徴とする容器。 (   )内の用語はなくともよいものです。
 
 
演習問題回答添削例7
【発明の名称】流動体収容容器
【請求項1】胴部、天板部、底部からなり、流動体を収容する流動体収容容器において、前記天板部は、開口部を画定する開口片と、前記天板上で前記開口片に対向した位置に配置され、前記開口片を容器底部方向へ押し込むためのプルタブから、構成されることを特徴とする流動体収容容器。
【コメント】 特定が機能的すぎて発明の外延が不明確とされるおそれがあります。
特に、「開口片を容器底部方向へ押し込むためのプルタブ」というのでは、どのように押し込むの?、そのための構成は何?、それが発明でしょう?という批判がされてしまいます。
 また、「開口部を画定する開口片」という表現も不明確です。この用語から、図面において示される開口片が想像できるでしょうか? 「画定」という意味も再考して下さい。切り溝線以外に開口部を形成する手段がない限り、「切り溝線」は必須の構成要件ではないでしょうか?
 また、上記のままでは開口片は容器内部に離脱してしまいます。離脱防止という目的達成のため、連結部も必須であるといってよいでしょう。
 以上の観点から、この回答例では、請求項1から3をすべてひとつにまとめた方がよいでしょう。
 
【修正案】
【請求項1】胴部、天板部、底部からなり、流動体を収容する流動体収容容器において、前記天板部は、所定範囲を囲む切り溝線で開口部を画定されたする開口片と、前記天板上で前記開口片に対向した位置に配置され、前記開口片を容器底部方向へ押し込むことで開口部を形成するためのプルタブとを備え、から、構成されることを特徴とする流動体収容容器。
 
 
演習問題回答添削例8
 【特許請求項】
 【請求項1】 缶体の天板部が切溝線に囲まれた開口片と、該開口片と天板とを連結する連結部と、固着部を中心に回動する切溝線切断用プルタブとからなる飲料容器。
【コメント】 缶体、天板部、固着部の説明がなく、いきなり出て来ています(不意打ちの禁止を参照)。また、固着部がどのような構成なのか不明確です。固着部はどこにプルタブを固着させているのでしょうか? プルタブは固着部を中心に回動すると表現していますが、その回動と開口片へのプルタブとの作用が特定されていないと、開口片が開口しません。プルタブが水平に回動した場合も上記の表現では含みます。
 おそらく、上記表現では、構成不明瞭とされるでしょう。各構成の有機的結合関係を明確にする必要があります。上記表現を活かすと以下のように修正するとよいでしょう。
 【請求項1】 有底の胴部の上部開口を天板部で閉塞してなる缶体と、この缶体の天板部切溝線によってまれんで形成した開口片と、該開口片と天板とを連結する連結部と、固着部により前記天板部に固着され、前記開口片に対応した作用部(押し下げ部)を有するとともに、前記固着部を境に作用部の反対側に引き上げ部を有し、この引き上げ部を引き上げたとき、前記固着部を中心に回動して作用部が開口片を押し下げるする切溝線切断用プルタブとからなる飲料容器。
 
 【請求項2】 プルタブは引き上げ部と、先端部と、固着部周りのスリット部とからなる請求項1記載の飲料容器。
 【コメント】この例でも、固着部周りのスリット部という表現が必ずしも、構成として明瞭ではありません。スリットをどのように設ければ、引き上げ容易作用をプルタブに付与するのかが分かりません。
 【請求項3】 固着部はプルタブはリベット、溶接または接着剤でプルタブを天板部に固着されことを特徴とする請求項1または2記載の飲料容器。
 特徴点を限定するときは、限定対象を主語にします。複数の限定項目を選択的に書くのはかつて、複数の発明であるとして拒絶されましたが、最近は緩和されているようです。このような場合、「a、b、またはcのいずれかにより」とか、「a,b,cの中から選択されるいずれか」という表現が慣用的に使用されています。
 
 【請求項4】 開口片外縁部に設けた前記切溝の溝深さが連結部近傍部分よりも開口開始部が深いことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載も飲料容器。
 【コメント】切溝孔という表現は被引用項において使用されておりません。表現を一致させておかないと、けがの元です。
 
 【請求項5】 プルタブの引き上げ部を引き上げると前記先端部が缶体の天板部開口片を押し下げることにより開口片外縁部に設けた切溝が破断して開口部が形成される飲料容器の開口方法。
 【コメント】これは、本発明の作用です。構成を特定すれば必ずそれに対応する作用が奏されますので、このような請求項は不要です。
 但し、上位概念的に作用的表現で、発明を特定することは意味があります。上記例はそのような場合とは異なります。
 
 
演習問題回答添削例9
 
 【請求項1】 天板、底板、及び円筒形又は角形胴部よりなる嗜好品飲料水容器本体において、天板部に前方後円墳型段差部を設け、前記、前方後円墳型段差部で囲まれた平板部中央にはリング状部、半円形スリット(C字状スリット)、及びリング状部に対する一方の側に形成された開口片押し下げ端部よりなるプルタブの中央部とリベットにより固着している固着部が形成されている。更に、前記、天板部に形成されている前方後円墳型段部の後円墳型形状部分においては天板部分との連結部を残して天板部の開口片を囲む2重の切り溝線を構成し、且つ、この2重の切り溝線は螺旋構造を形成して開口時に開口片の脱落を防止出来る構造となる嗜好品飲料水容器。
【コメント】 構成要件として、天板、底板、及び円筒形又は角形胴部よりなる嗜好品飲料水容器本体
 前方後円墳型段差部
 リング状部、半円形スリット(C字状スリット)、及びリング状部に対する一方の側に形成された開口片押し下げ端部よりなるプルタブ
 リベットにより固着している固着部
 連結部
 開口片を囲む2重の切り溝線
 螺旋構造
 嗜好品飲料水容器。
というように、ほとんどの限定要素を入れております。
 本発明の目的を何に設定したのかは不明ですが、課題通りの目的とするのであれば、限定しすぎです。もう一度、静的分析と動的分析をやり直して下さい。
 【請求項1】 天板、底板、及び円筒形又は角形胴部よりなる嗜好品飲料水流動体収容容器本体(おいて以前は、これから記載することの土俵を形成するところで、最も広い概念を提示します。●●において、〜することを特徴とする○○というとき、概念の大きさは●●≧○○という関係になります。)において、天板部に前方後円墳型段差部を設け、前記、前方後円墳型段差部で囲まれた平板部中央にはリング状引き上げ及び、半円形スリット(C字状スリット)、及びリング状この引き上げ部に対する方の側に形成された開口片押し下げ端部よりなるプルタブを、その中央部にてとリベットにより固着している固着部で天板部に固着しが形成されている。更に、前記、天板部に形成されている前方後円墳型段部の後円墳型形状部分においては天板部分との連結部を残して天板部所定区域の開口片を囲む2重の切り溝線を設け構成し、且つ、開口片に対応して前記押し下げ部を位置させたことを特徴とするこの2重の切り溝線は螺旋構造を形成して開口時に開口片の脱落を防止出来る構造となる嗜好品飲料水流動体収容容器。
 
 【請求項2】 請求項1に記載の流動体収容容器において、プルタブ裏面中央部近傍、もしくはプルタブが天板に固着させられることによってプルタブと接する請求項1に記載の前方後円墳型段差部で囲まれた平板天板部付近のどちらか一方の側には複数の突起が形成されており、プルタブの半円形スリット(C字状スリット)の内側中央部にはこれらの突起の一つと係合する係合溝が設けられている。
 【コメント】複数の突起の一部はプルタブを天板から浮かせる機能、他の一つはプルタブの周り止めです。それぞれの機能を従属項として特定すべきです。
 
 【請求項3】 請求項1に記載の流動体収容容器において、プルタブの開口片押し下げ端部により押し下げられる開口片天板部における前方後円墳型段差部で囲まれた平板部はU字状突起を有するの形状をなし、前記、押し下げ端部に押し下げる力をムラ無く伝達し、確実に開口される構造をことを特徴とする流動体収容容器
 
演習問題回答添削例10
 【請求項1】 側壁の両側に端部を有する密封容器において、上記端部の一方を上端部、他方を下端部と呼べば、その上端部の外縁に寄せて配置した舌部と、該舌部と別に設けた爪部とを固定する固着部を有し、又上記舌部の外周が、連続した接続部と、該接続部を形成していない連結部にて構成され、且つ上記接続部で破断可能に構成されていることを特徴とする密封容器。
 【コメント】 この表現から理解できること。@舌部と爪部とを固着部が固定しているということ。A舌部の外周が、連続した接続部と、該接続部を形成していない連結部により構成されているということ。B舌部の外周が、上記接続部で破断可能であるということ。
 この表現から理解できないこと。@舌部と爪部の双方が固着部で固定されているらしいが、別の何かに固定されているといいたいのか、互いに固着されているといいたいのか不明。前者であれば何に固定されているのか。A「接続部」という表現は、何かに何かが接続している部分です。何が接続しているのでしょうか。破断可能な溝の連続した部分を特定したいのであれば、接続部という表現は不適切ではないでしょうか。B舌部の外周が破断可能な接続部となっていますが、舌部は固着部で固定されるものであり、その点で矛盾するのではないでしょうか。舌部ではなく開口片のことを言いたいのではないでしょうか。C「連結部」という表現は、何かと何かを連結している部分です。何を連結しているのか不明です。D舌片と爪部とが「接続部」との関係でどのような関係にあるのか不明です。E側壁の端部という表現が正確かどうか疑問です。天板のことを特定したいのでしょうが、胴部本体の上端・下端を特定してしまいそうな表現です。
 以上を考慮して添削します。
 
 【請求項1】 筒状をなす側壁の両端開口を閉塞する側に部を有する密封容器において、上記端部の一方を上端部、他方を下端部と呼べば、その上端部の外縁に寄せて配置した舌部と該舌部と別に設けた爪部とを有する開口具を、舌部と爪部と中間部にて上端面部に固定する固着部で固着するとともに、を有し、又上記舌部の外周が連続した破断可能な連続溝で囲まれた開口片を上端面部に形成し、接続部と、該さらに、連続溝を横断する形で開口片と開口片外側の上端面部とを連結する接続部を形成していない連結部を有し、前記舌部を引き上げたとき、固着部を支点として、前記爪部が開口片を押し下げる位置に配置され、その押し下げ力によりにて構成され、且つ上記前記連続溝が接続部で破断する可能に構成されていることを特徴とする密封容器。
  
 【請求項2】 上記舌部の外周に配置した連結部が、該舌部に関して、上記上端部の中心側に形成してある請求項1項記載の密封容器。
 
 【請求項3】 上記爪部が、上記固着部を中心に、その一方に・・・を押圧する押圧部を、又他方の側に引上げ部を配置してあることを特徴とする請求項1項記載の密封容器。
 【コメント】これを読むと、舌部が開口片で、爪部がプルタブであるらしい。しかし、請求項1では「上端部の外縁に寄せて配置した舌部と、該舌部と別に設けた爪部とを固定する固着部を有し」とあります。文章として「舌部と、爪部とを固定する固着部」となっており、そうすると、舌部と爪部とでプルタブを構成しているとしか理解できません。「別に設けた」ということを記載してますが、別体という意味が、両者が物理的に別体である場合も、一体ではあるが別部材で形成したある場合も含むこともあるので、誤解は避けられません。もし、舌部が開口片で、爪部がプルタブであるなら、「上端部の外縁に寄せて配置した開口可能な舌部と、該舌部と別に設けられ舌部を押して開口せしめる爪部と、この爪部を上端面部に固定する固着部を有し」という表現にすべきでしょう。
 
 【請求項4】 上記引上げ部に滑り止め部を配置してある請求項3項記載の密封容器。
 

 


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