南欧の旅 ひとかじり 古代ローマを歩く
コロッセオ,フォロ・ロマーノ,カラカラ浴場など

2月27日(木)



 雲が少しあるが、晴れている。初日のバルセロナで少し雨が降っただけでその後ずっと天気の恵まれた。旅に出る前にネットの天気予報サイトでこちらの天気調べたときは心配ばかりだったけど、本当にありがたいことだ。
 急ぐこともなく起きたのはこの旅で初めてかもしれない。それでも7時には目が開く。昨日のことなどメモに整理、朝食に行く。コンチネンタルスタイルだからそんなにあれこれあるわけではないけれどカプチーノはおいしいし、ジャムもグー^^。4泊したこのホテル、朝食だってここで4回食べることができたはずなのだが、初日は急いで詰め込んで、その後2日間は食べる暇もなく飛び出し、そして今日。テーブルセッティングや壁に掛けられた絵、隅にさりげなく置かれている椅子などに歴史の長さを感じる。雰囲気もしっかり味わって・・・。
 部屋に戻って荷物整理。チェックアウトして夕方までローマ市内歩いてそのまま帰国なので、忘れ物のないように、割れ物は破損しないように、スーツケースと大きいショルダーバッグに荷物を詰める。市内観光に持っていくのは貴重品(パスポートや航空券含む)の他には地図とガイドブックくらい。トレーナーの下に貴重品袋ぶら下げて用心用心。今まではホテルのセキュリティボックスに預けて出かけていたのだった。
 9時30分チェックアウト。スーツケースとカバンもそのままホテルに預かってもらうようにお願いする。預かり料として2ユーロ、ボーイさんが運ぶスーツケースの後からついていくとカーテンに隠れた置き場にはすでに先客のスーツケースが並んでいる。いくら駅が近いとはいえ石の道ごろごろ押していってテルミニ駅に預けるより楽だし、ね。
 それではいってきます。夕方までよろしく。

 まずはホテル前にあるマッシモ宮博物館だ。ローマ初日に大感動したけれどカタログなどは閉まってしまい買えなくて未練だったところ、ギャラリーのみの入場OKだったのでカタログの他、マウスパットやチビの喜びそうな古代ローマ風のメダルなど求める。

 マッシモ宮を出たらちょうどその歩道に、例の(初日にお金をすられそうになった)4人組のじょうちゃんず。顔しっかり覚えているゾ。これまたマニュアル通りというか、この日は段ボールを抱えている。段ボールを抱えて観光客のそばに近寄って財布などするという手段らしい。まさに何かすろうとしているときだったようで、相手の方が気づいたらしい。強く手で彼女らを振り払い米語(英語)でののしっていた。ちょっと年輩の大柄なおじさん。お友達にも憤って話していたっけ。
 蜘蛛散らすようにさっと別方向にいってしまった女の子たち見送って、あまり近づきたくないねぇ。何度も通っている共和国広場、「ナイアディの噴水」などの写真も忘れずに撮っておかなければ。広場の周りの半分は回廊のある建物で囲まれている。広場を周りながらサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会へ。
 じょーちゃんず4人、またもやいる!! 教会中に入る観光客の後付けたり、出待ちみたいに教会の前に座っていたり・・・、なんというか。

 サンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会は廃墟のような外観だ。古代の影響を受けたミケランジェロがローマ時代の浴場のバジリカを生かして教会として建て直したのだそうだ。中では聖歌隊の少年たちが歌の練習をしていた。壁の祭壇画が印象的だ。


 歩き納めかな、このあたりも、など、名残を惜しみながらサンタ・マリア・マッジョーレ教会へ向かう。教会のそばにある可愛らしいお店カーサ・デル・ロザリオにて、あれこれおみやげの小物を探す。カードやアクセサリー、気が早いけれどもクリスマスの飾りなどいろいろ。いままで買い物をしたほとんどのお店はレジで機械が示してくれた金額見ながら払う形だったのだが(カード使うことも多かったし)、ここは昔ながらの精算方法。店番のおばちゃんが品物一つひとつ確認しながら例えば25セントの物ふたつと50セントの物ひとまとめにしてuno、そしてdue、tre、と数えていく、きっちりイタリア語だけの世界。くすぐったいようなうれしいような・・・。
 そして、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂。358年の夏「数日のうちに雪が降る地に聖堂を建てよ」との聖母のお告げを聞き、聖母マリアに捧げるために建立されたと言われている。今でも毎年白い花びらで「真夏の雪」が再現されるとか。建物全体が美しい。内部のモザイクなども見事で祈りを捧げる人のじゃまにならないようにそっとみてまわる。


 さて、後は古代ローマまっしぐら。カブール通りを歩いてカブール駅まで。別にメトロに乗らなくても歩けるじゃない、といってみたのだがゆにに却下されて隣のコロッセオ駅まで久々の地下鉄(チケットがこれで生きた?)。観光客が大勢乗っている。観光客目当てのアコーディオン弾きが車内で陽気な音楽鳴らしていた。
 まずはコロッセオ。切符売り場がすごい行列だ。共通入場券は持っていたのだがこれと提示してその場所の入場券と替えなければいけないのだが、さて・・・。とりあえず末尾に並んでみたがいっこうに動きそうにない。反対側の団体専用の窓口で聞いてみるとここから入っていいよ、ということでそのまま中へ。本当はチケットをゲート通して入るのだが共通入場券のままでははじかれてしまい、特別にチェーンはずしてもらってそこを通ったのだった。普通に並んでいたら1時間はかかるところだったから、やはり尋ねてみるものだ。
「にゃーお」コロッセオ入り口にねこが。にゃあにゃあ^^。

 ローマを言い表す12世紀末の有名な言葉があるという。
「コロッセオがある限り、ローマも存在するだろう。コロッセオが崩れるとき、ローマも終わりとなるだろう。が、ローマが終わるときは、世界の終わりだ」
 何層にも別れ側面、ああ、あそこが見物席、ここが地下で動物などの檻が・・・・。ネロ皇帝を思いだし、「クォ・バディス」も思いだし、この廃墟が人にあふれていた遙かな時代に思いをはせる。
 階段を上ったり降りたり、ちょっと楽をしてエレベーターを使ったり。エレベーターでは昨晩食事したお店で出会った家族とたまたま一緒に乗り合わせた。偶然にビックリ。上の階の土産物を扱っているお店でコロッセオを初めとする古代ローマの遺跡の写真集を購入。この本は二重構造で写真の上半透明なセル画がかぶせられるようになっていてそのセル画をかぶせると復元図のできあがり、というものだ。帰りの飛行機の中でよく見たら途中で天地が返っていたりして、落丁本なのかもともとそこまで考えずに作った物なのかな、ともかくいかにもアバウトっていう感じだね、とゆにと苦笑い。
 このお店にもネコ。いったいどこからここまできたのか、それともコロッセオに住み着いているのか、まるで我が物顔で積んである本の上にのってお昼ね中。店番の人も追い払うわけでもなく(^^;)。

 コロッセオの外はにぎやか。観光客目当ての路地売り。スケッチ・Tシャツなどなど。古代戦士の扮装している人(観光客と写真とって解くに日本人には高額をふっかけるとか)も発見、近寄らず遠くからみる。

 道の角に立つ。どの方向を見ても古代ローマの遺跡。12時を回ったところだったが食事できるような場所もなく、ならば夕方までに回れるだけ回ろうということになった。
 そこでまずはフォロ・ロマーノを歩く。入口を捜して行ったりきたりしたがまずはなんとか。内部は広くいろいろな遺跡がある。ここが古代ローマの政治の中心地だったのだ。人であふれるようだったコロッセオと違って連れ立って歩く人の足取りもゆったりしている。先生に引率された15歳前後の学生グループなど、暖かな日ざしの中でガイドブック広げたり、それぞれに由来を学びながら歩く人も。私たちもまた同様、「地球の歩き方」片手に持ってその中にある地図と写真と、目の前にある建物見比べる。
 あっ「バジリカ」だ。
 ここが「聖なる道」、ここを凱旋したのか、歴代の将軍は元老院に向かって・・・。
 ねえねえ、「カストルとポルックスの神殿」だって!!
 「カエサルの神殿」
 「ヴェスタの神殿」
 ・・・・・・・・
 ただただ夢の跡をたどる。

 神話の時代、そして共和国の時代。かのローマ帝国の時代。


 歩いては止まり、止まっては歩き、いつものようにゆにが「疲れた」というのをなだめて「パラティーノの丘」の散策。この丘は共和国時代には貴族や政治家の住む高級住宅街だったという。高台から先程歩いたフォロ・ロマーノを眺めたり世界で最初の植物園といわれる「ファルネジアーニ庭園」歩いたり、ここが「リヴィアの家」、ここは・・・・。たわわに実るオレンジの木。
 静かに静かに時間が流れる。

 コロッセオからフォロ・ロマーノ、そしてこのパラティーノの丘、どんどん観光する人の数がすくなくなっている。このあたり全部歩き回るとなると1日がかりになるし古代ローマ遺跡は車窓からだけというツアーもあるくらいなので、時間限られたローマ観光に古代遺跡を、というのは無理なことなのかもしれない。私たちにしたところで、今日帰国の飛行機がたまたま夜発だったので1日ローマを歩けたのだが、これが乗り換え便で昼過ぎ(とか運が悪ければ午前中)の帰国便、などと言うことになっていたら歩けなかったところなのだ。天の配剤に感謝しつつ。
 ヴァティカンからスペイン広場を歩き回った日にはずいぶんと見かけた日本からの観光客、この日はコロッセオはともかく(といっても少ない)他ではほとんど目にしなかった。出会ってもリュック背負った男の子たちくらい。興味もいろいろだろうけれど、時間があれば訪れるといい場所なのだけれど、ね。

 
 時刻は午後2時半を回っている。あいかわらず食べ物扱っているような場所はない、というかそもそも遺跡だけだからお店目につかない。それにせっかくここまできたことだし、時間もまだ間に合いそう。予定を立てたときには無理だとあきらめていた「カラカラ浴場」に行ってみよう。
 コロッセオ駅に戻りメトロで一駅、チルコ・マッシモ駅まで。
 出口を間違えて歩いている観光客らしき人の後をついてとことこ。おかしい。もうついているはずなのに、このやたらに広い緑地帯はいったい何なんだ。芝生に座り込み「地球の歩き方」開く。周りに人が少ない今日の遺跡回り、のんびり本開いて観光客モード全開でも安心だ。

 「ここ、ほら、チルコ・マッシモだよ。あの円形競技場。『ベン・ハー』の戦車競争の・・・」思わず声がうわずる。ゆにも納得顔。
 この先に「ローマに休日」の舞台となった真実の口広場とサンタ・マリア・イン・コスメディン教会がある。間違ったついでに行ってみない? とゆにを誘うが疲れ切ったゆには「いやだよぉ〜」。ほんのちょっとなのに。ゆにをその場に残してチルコ・マッシモをぐるっと回り歩く。10分もかからないうちに見えた広場。あれが真実の口広場、ここが教会なのね。中は見学せずそのまま歩いて「お待ちどうさま」。

 
 改めて「カラカラ浴場」へ。
 ここが最後の見学となる。ローマ初日に手にした博物館の共通入場券、全部で7ヶ所使用できるうちのこの「カラカラ浴場」が5つ目の場所。7分の5、そこまで回れば充分すぎるというものだ。
 大きな建物、切り出されて磨かれた石。夕焼けに染まりだした遺跡内、思い残すことのないよう心に刻みつけ・・・。ゆっくり名残を惜しむ。「これこそあこがれのローマ」とにこにこのゆに。

 メトロ駅に戻るときに見かけた松並木、この道の幅といい道の方向といい、このままフォロ・ロマーノの「聖なる道」に向かっている。アッピア街道の名残かな、どきどき。一つ一つが古代ローマに夢を誘う。
  テヴェレ河の向こうにサン・ピエトロ寺院。古代ローマの向こうに見えるローマ市街。旅も終わる。

 メトロでテルミニ駅に戻る。2階にセルフサービスレストランがあるはず、と階段を上る。時刻は4時5分。朝食を食べただけの、合間にチョコとか水とか少しは口にしたが、やっと(^^;)食事。さすがにお腹がぺこぺこ、足は棒のよう。
【Auto Grill】「わーい、食べ物だぁ」
 4時過ぎているということは本来の昼の時間が過ぎて夜にはまだある、ということなのだろう。ターミナル駅のセルフサービスレストランと聞けば時間にとらわれずに利用客のために万全の準備で、と思いこんでいたのだが・・・。確かに閉まっていたわけではなくいろいろと並んでいたのだが、お肉などは頼んで焼いてもらったり、あるものは盛りつけてもらったりというのを頼みたくてカウンターで待っていても、せっせせっせとそれまでも後かたづけをしたり掃除をしたり、それが済んでからやっとお客に向かう、といった具合で、手際が悪いのかのんびりしているのか時間が悪いのか、まあ、最後が一番の原因だろうけれど。
 サラダ(レタス・ルッコラ・インゲン・オリーブ・トマト・ゆで卵・アンチョビ、これにオイルをかけたもの)、頼んで焼いてもらう熱々のビーフとハンバーグ、付け合わせにスパニッシュライス(ゆにはミラノ風リゾット)、ポテトにズッキーニ、仕上げにとレモンジェラードお盆に乗せる。会計を済ませて1階を見下ろす張り出し河の席に座って「いただきます」
「おいしい」
「おいしいね」^^
 手軽な値段だけれど値段以上に味わう。
 4時過ぎて食事している人は少ないけれどそれでもあちこちのテーブルで食べている人はいる。二人で食べているとそばに一人旅らしいデイパック姿の20代前半らしき男の子、「エクスキューズミー、えーと、えと、ディスミート、えーとなんだっけ
「あっ、日本語で大丈夫ですから」
 ホッとした顔で
「日本の方ですか、よかった」(つうか、どんな風に見えたんだろうね、私たち、と、後でゆにと話した。日本からの観光客と見られて日本語の声かかったりしてたよねえ^^;)
 私たちの食べている肉とかはどこで頼めばいいかとか会計は、など、このセルフサービスレストランの仕組みを聞いていった。そういえば右手にガイドブックらしい本持っていたのでちょうどローマに着いたばかりなのかもしれない、時間の許す限りの一ヶ月ヨーロッパ一人旅の子だったのかな。
 ホテルも行き先も成り行きで決めて行きと帰りの飛行機のチケットと一ヶ月有効の列車の切符持っての旅、あこがれてあこがれて、あこがれに終わるんだろうなぁ。いつか子どもに手も(学費も)離れて時間が自由になったら、身体に無理がきかない、か。。。


 ゆっくり食事を楽しんで4時50分頃ホテルに着く。預けて置いたスーツケースを受け取りタクシーを呼んでもらう。
 フィウミチーノ空港まで、歩き回った道をタクシーが走る。料金メーターかちかちと。空港に着いたとき38.58ユーロの表示。チップ含めて40じゃあ少ないかな、そのくらいでいいかななんて思いながら50ユーロ紙幣を渡す。そしたら運転手さん10ユーロ紙幣返しながら、にこっ。
 にこっ(*^_^*)「グラツィエ」。こちらもそのつもりだったのだし。
 空港到着5時40分。
 旅の終着だ。

続き成田着 帰宅


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