南欧の旅 ひとかじり フィレンツェそぞろ歩き
ウィフィツィ美術館,ドーモ,ミケランジェロ広場,アルノ河畔など

2月26日(水)



 今日もよく晴れている。フィレンツェにユーロスターで往復だ。チケット大丈夫、持っている。地図もある。美術館の予約表も・・・。
 昨晩の残りのチキンとクラッカーで朝食を済ませ、テルミニ駅に向かう。7時半発車なので駅構内のお店など少し眺めてから1番ホームへ。指定座席は窓際2席で向かい合って座る。
 車窓から眺める外は霜が降りていて寒そうだ。朝の光が建物を照らしている。トスカーナ近くの山並み(丘陵)、麓に牧場が広がる。羊が放牧されている。石・レンガ作りの古い建物が畑の中にそのまま残っていて、語られる物語の中での描写〜祖父の祖父が建てた・・・〜など納得にいく風景である。
 ビジネス新幹線と同じでESも仕事人の人が多い。もちろんスーツケースかかえての各国の観光客だって大勢いる。列車でイタリアを縦断しながらの観光がしやすいのだから当然だ。もちろん日本からの若者も乗っていた。ローマ市内は歩き回ったから今度はサッカー観戦という男の子たちとか、しゃれた格好でフィレンツェではどのお店に行こうかの相談に夢中の女の子とか、人それぞれである。私たちは美術館と散策が目的。
 トスカーナの空の青さはやはり北の青、きのうのナポリ・カプリの「あお」とはまるで違う。イタリアも南北に長い国なのだ。水色がかった空にやわらかな光がそそいでいる。


 フィエンツェ、9:05着。当面の目的であるウィフィツィ美術館の予約専用窓口に9:40までにいかないと予約が取り消されてしまう。駅前も通りもローマとはずいぶん違う。しっとりとやさしく落ち着いているね、きれいだし・・・、
 花の都フィレンツェ、メディチ家の庇護のもとに花開いたルネッサンス。中でもロレンツォ・メディチは、お気に入りの人物なのだ。フィレンツェをどう歩くかゆにと計画を立てたときに外せない場所いくつか選んだら、どう考えてもサン・ロレンツォ教会&メディチ家の礼拝堂に行けそうもなくて、時間が余っていたら最後にちょっとだけでも、なんて思っていた。

 が、まるで呼ばれるかのように、つまり道一つ間違えて(可愛い小道だったし人も流れていたし歩きたくなるもの^^;)、サン・ロレンツォ教会の前に出てしまう。あれ? メディチって、このレリーフに・・・・・。
 地図を取り出して確認、とことことことこ。共和国広場からロッジア市場、この市場はテントを張ったりとまだ準備中だけれど、うーん、この道でもない。ここは後でくる予定のところだ。一つ一つの道が楽しくて曲がるたびに目に飛びこんでくる街角に見ほれて地図が上の空になっている。ドゥオモ前に戻り、ここから当初の予定に沿って一直線、うん、ここがシニョリーア広場、ヴェッキオ宮殿、彫刻・建物、きょろきょろ歓声あげながら時計を気にしての早足。あっ、ここがウフィツィ美術館、人も並んでいる,予約受付どこだろう、など歩いていると建物のへりまで来てしまってやり直し、一般の入り口はわかったのだがわからなくて何往復化してしまった(^^;)。
 それでも何とか発見、予約確認書を提示してチケット購入、中に入る。予約確認は2ヶ所でされた。たまたま日本からの美術作品ガイドさん附きの団体一行とほとんど同じタイミングでの入場となってしまい、内部を見て回るときにかぶらないようにずらしたりしていた。もっとも一行はポイントの部屋・作品だけ説明附きでざっと見て回りその後でフリータイムで少しあちこち歩いていたようだった。横目でそれを見つつ、ツアーだと楽だけれど美術館でゆっくりと見たい作品の前に好きなだけいたい、なんていうのはできないね、

 なんて話は休憩したときのこと、館内を夢中で見て回った。
 ボッティチェッリの『春』、ラファエッロ、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、ティツィアーノ・・・。ルネッサンスの珠玉の作品。正面の椅子に座ってゆっくり鑑賞・・・。模写をしている画学生たちもみかけた。宝庫を思いっきり彷徨った。床も大理石のきれいな模様、歩くのがもったいない。机一つ、椅子一つ、どれもが、である。
 カフェテリアでエスプレッソ・ホッとチョコレート・ピザ(マルゲリータ)頼んでひと休憩。おだやかな陽射しの中でのんびり。階下に降りてカタログや絵はがきなどを求める。


 外に出て、まずはロッジア市場へ。ウフィツィにある彫刻のコピーの「いのししの像」かわいい。ここで土産物を探す。市場内ぐるぐる。フィレンツェは革製品も有名だし、手頃なベルトを留守番の男性陣に、などなど。やわらかになめされたベルト発見、うん、これにしよう。あちこち回っていると「手袋どう」なんて声もかけられたけれど手が小さすぎて合うのがないから、と断ってしまった。今になって買っておけばよかったね>革の手ぶくろ、とゆにと二人、後悔しているのだった。
 市場から共和国広場に向かおうとしたらちょっと変わったお店発見。わぉ! チェス売ってるよ。いいねえ、欲しいねえ。二人できゃあきゃあいっていると売り手のお兄さんがいろいろ説明してくれる。この街の工房で作られたもので、駒がこれこれ、台もこっちとこっち、交換してもいいよ・・・、など。チェスなんてできもしないのにチェスそのものに対する憧れもずっとあって、それでも手が出せずにいたのだけれど、ここでは50ユーロの値札。安いよぉ。重い買い物だったが、チビの喜ぶ顔も想像でき、ほくほくである。台の上に並んでいた駒を箱に収めて、なんていう作業をお兄さんがしているあいだにその他の店頭商品眺めていると、またまた「おいしそうな」発見。革製のブックカバーが1枚3ユーロ。刻印された模様がそれぞれ違う。フィエンツェの紋章が刻印されたものもある。私の分、ゆにの、チビの・・・。(でも、もっと買ってくればよかったな)

 午後1時を回ったが美術館で軽く食べているしまずは回れるだけ回って、と、かつてのフィレンツェ共和国の宗教的中心、花の聖母教会ドゥオーモに。白やピンクの大理石の幾何学模様、豪華で荘厳、感嘆のため息だけのみ。S.ピエトロ寺院に続いて、ここでもクーポラに登る。464の階段、さすがに足ががたがただ。それを補って余りある間近に見えるフラスコ画、頂上のテラスから一望もと、フィレンツェの街。頂上で聞くともなしに聞こえてくる会話、S.ピエトロのクーポラより階段多いし狭いし急だし・・、うん、うん、そうだよね。一つのクーポラ登ると別の都市のクーポラも登ってしまう、この行動パターン、似たもの同士だぁ。
 洗礼堂の「天国の扉」やジョットの鐘楼は外からだけ見る。フィレンツィエ・ゴシック様式のデザイン、色彩の妙。
 ドゥオーモ前の広場は人で賑わっている。露天を広げようとする人もいるのだがここは禁止区域だから、と、注意をしに定期的にパトロールがやってくる。このパトロールをしているおまわりさん(だと思うのだが)が、な・ん・と! 馬に乗ってマント風になびかせカポカポ・・・。
 フィレンツェはどこを歩いても絵になる。細い路地、曲がりくねった道、目に飛びこんでくる建物の数々、風情があって、中世にタイムスリップした気分になれるのだ。フィレンツェを歩いている、ただそれだけのことがむしょうにうれしい。


 職人の街、ガイドブックを眺めていたゆにが絶対これだけは手に入れたいよぉ〜、と読んでいるだけで惚れ込んだのが'マーブル紙'である。土産物店で売られている印刷されたものではなく、職人の手で一枚一枚刷られている本物の紙、いわゆるブランドものには興味はないけれど、これは「紙のブランド」だね。
 地図を頼りに文具店Parioneに到着する。まずは目当てのマーブル紙、一枚が1,000円近い値段、紙一枚としてはいい値段である。それでも一枚一枚が色も模様も微妙に違っていて、選んで選んで、まずはこの2枚、とゆに。その他ノートや鉛筆などあれもこれもモードである。お店はこぢんまりとしていて二人で中にいると品物の棚とレジカウンターのあいだいっぱいくらいだ。私もメモ帳とトランプを購入。このトランプが入れ物やトランプの絵を含めていかにも中世、妹宅の土産にも、と合わせて購入する。
 会計の時にそれぞれにサービスとしてカレンダーつけてもらってしまった。ルネサンスの頃のフィレンツェ題材の線画である。大事に大事に抱え込む。特にマーブル紙をくるりと丸めて筒状にしてもらったゆに、ぶつからないように、折れないように、そっと、大事に・・・。

 時間が知らぬまに過ぎている午後の2時、アルノ河の向こう岸に移動しよう。
 アルノ河にかかるフィレンツェ最古の橋ヴェッキオ橋、橋の両側に彫金細工の店や宝石店が並んでいる。目の保養になるね、とウィンドウショッピング。それでもせっかくに訪れたこの街の記念に、そもそも振り袖代わりの旅という名目もあったことだし、と、ゆににカメオと金細工のブローチを求める。
 橋の途中で2人連れの日本からのお嬢さんに頼まれて写真とったり、など。英語とかで頼めなくて〜、お願いできてよかった、とうれしそう。せっせとカメラのシャッター押している私たちだが、自分たち+景色というのはそういえば一枚も撮してない。行ったという思い出は風景の中に自分でかぶらせるから。
 橋を越えてピッティ宮殿に。フィレンツェのあの教会この宮殿、中に入ってみたいところはたくさんあるが、ともかく時間が限られている。中に入れなくてもせめて建物の外観だけでもと欲張って歩いている。のんびりひなたぼっこしている人に交じってちょっぴり休憩する。朝は霜が降りるほどの寒さだとはいえ日中は暖かい。さえぎる雲もなく、歩き回っていると暑くなってくる。
「疲れた、コート暑い」
 ゆに、もう限界、と。結局このあとはゆにのコートも抱えて歩き回った私、チェスも重いしコートも重い。けれど一分でも一歩でも、フィレンツェに足跡を残したかったのだ。

 途中のちょっと入ったところにあるパニッテリアでパニーニ(パンにあれこれ挟んだもの)をテイクアウト。トマトとモッツアレラ、魚のフリッターの2種類をカウンターの中眺めながら指さしたり英語イタリア語まぜこぜで注文する。うまく伝わらずバタバタしてしまった。カウンターがとても高くて私たちの頭の上、同じように店内で買い求めていた背の高い欧米の男性は片手でひょいとばかりに受け取っていた、が、である。
「ちっちゃいお嬢ちゃん、大丈夫?」
 おなじみの子ども扱いされてしまうゆにが受け取って店外へ。また幼く見られたね(^^;)。
 別のお店でミネラルウォーター購入。間違ってガス入りのを買ってしまった。早口イタリア語でお店のおばちゃんが確認してたのはこのことだったのね。聞かれたとき「大丈夫」ってそのままこの水買ったのだけれど、ふふっ、ガス入りの水って不思議な感じ。

 アルノ河畔ぞいに歩いて、坂道登りつめるとそこはミケランジェロ広場である。小高い丘の上にある広場の中央にはダヴィデ像のレプリカがある。ベンチに座りアルノ河の向こう岸に広がるフィエンツェを見ながらパニーニにかぶりつく。3時を回っている。さすがにお腹が空いていた。それぞれ半分ずつにしたが、ボリュームたっぶり。モッツアレラおいし、フリッターのソースも美味しいね、などと食べていたが、全部は食べきれなかった。あとで食べようとカバンにしまおうとしていたら手から落ちてしまい、ならば、とパンくずは広場に飛んでいる鳩たちにお裾分け。
 あちこちに観光客、三々五々。

 夕方が近づきやわらかな金色に光が変わりつつある時間、かすかな黄金に彩られたドォウモが、教会が、フィレンツェの栄華を偲ばせる。みごとなながめ、街並み。
 あの景色もこの景色もこの場所も、とシャッターを押す。
 目を転じると要塞とその間にある防壁が木々の間に。イタリアの都市がそれぞれ都市国家として独立していた、と実感するのはこんな時だ。
 ミケランジェロ広場を降りる。駅へ向かうバス停もあるけれどそんなに遠くないし、歩こうよ(最初はバスの予定だったのだ)。「えーっ」「だってもったいないじゃない」「うーっ・・・」「まあまあ、荷物だって持ってあげてるしぃ・・・」

 アルノ河畔の夕焼けを楽しみつつグラツィエ橋渡りサンタ・クローチェ広場&教会(ガリレオやロッシーニやマキャベリのお墓だってあるんだよね、時間さえあれば・・・;_;)横目で眺め、ため息一つ、道を間違わなければドゥオモにでるはずである。が,朝と同じくたどり着いてみればメディチ家礼拝堂。ロレンツォに未練はあるが帰りのESの時間もある、とりあえずサンタ・マリア・ノヴェッラ駅にまず戻り着いてからのことだ。
 駅の名前にもなっている駅近くのサンタ・マリア・ノヴェッラ教会、ここは中を見学したかったのだが気づくと5時を回っていて入場不可、広場などぐるりと回って再び駅へ。同名の薬局、かつては教会付属の施薬院だったという。ガイドから興味そそられて訪れてみたが、内部の作りが中世の貴族の館に迷い込んだよう、私たちには敷居が高く、のぞいたけれどそのままUターン。道の途中で見かけるいろいろなお店は可愛らしく個性的なものばかり。またこの街にやってきたいと願いながら駅前の広場から名残惜しく街を見回し・・・。
 駅の有料トイレ一人60セントは本の案内より値が上がっている。ガイドブックは前年度基準だから微妙に物の値段はずれていて当然といえば当然だ。ジュースもゲット、予定よりも到着の遅れたESにてローマへ戻る。外も暗くなっておりゆには熟睡、わたしもとろとろしていた。ローマ終点なのでゆっくり落ち着いて降りて(仕事で移動している、という雰囲気の人はホームに列車はいる前から出口方面に向かっていた、ごくろうさま)ホテルまで。ホテル到着19時45分。


 今回の旅の土産物ゲットはどうやらフィレンツェにつきる。あれもこれもと買い込んだ土産品、重かった荷物をやっと下ろす。
 20時30分、夕食をこの地で食べるのは今夜が最後、オペラ座そばにあるリストランテ、デル・ジリオに出かける。この店はJCBのパスポートで知った場所でで、これさえみせれば大丈夫支払いはカードでというスペシャルメニューはあるのだが、それではちょっとつまらないね。
 席に案内されると日本語メニュー持ってきてくれる。そのメニュー見ながらあらかじめテーブルに置いてあった英語メニュー(イタリア語対比つき)の方と見比べると、あれれ、この日本語メニュー、メニュー全部のってないよ。日本人向けに絞ってあるのかな。でも日本語の方に書いてないこっちの方が美味しそう。
 ということで英語メニューから注文した。

 1皿め。私がフルーツサラダ;メロン・オエンジ・ルッコラ・小エビ。ここにオリーブオイルをかけるのだが、ここでもオイル、おいし^^。ゆにはラザニア。本場のラザニアだぁ。
 途中で皿を交換して半分ずつ食べた。この店は一昨日行ったマッシモ・ダゼリオより気兼ねのない雰囲気のお店だよね。あちらではとてもとても・・・。陽気なアメリカ人の年輩のグループは写真をとりあったりとにぎやか。アットホームな雰囲気だ。日本でいえば小学生と高校生くらいに見える子ども二人と両親がすぐそばのテーブルにいて静かに食事をしていたのだが、彼らには翌日コロッセオで出会うのだった。偶然っておもしろい。
 2皿め。二人ともグリルラム。量がたっぷりで、熱々のラムをはぐはぐと頬張る。美味しい物食べるのって幸せだね。付け合わせがローストポテト。皿に山のように盛られている。ローズマリー味のオイルと塩をかけて食べるのだ。ホクホクとしていい味。マッシモでも思ったことだが、ポテトの味が日本で食べるものとはずいぶん違う。調理法もだが素材そのものが違うのだろうか。
 エスプレッソとオレンジジュースで仕上げ。イタリアのオレンジジュースはオレンジ色ではない。トマトジュースのように赤い色。甘くて濃くがあって、すっかりゆにのお気に入りだ。地中海で栽培されている柑橘類、遙か昔に学んだ知識。子どもの頃から憧れていた地でのディナータイム。あっという間に2時間はたつ。まだまだ賑わっている街をホテルまで戻る。
 明日で旅も終わる。明日の朝は急ぐこともないのでホテルに戻っても特になにかする必要もなく、一日を振り返りながらベッドにバタン。

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