南欧の旅 ひとかじり ナポリツアー
カプリ島〜青の洞窟

2月25日(火)



 晴れ。
 うーん、今日もいい天気。青の洞窟は現地に着くまで中に入れるかどうかわからないから不安だけれど,これならもしかしたら大丈夫かな。窓のカーテンをそっと開けて外を見る。
 地中海が見たい、と、ナポリを楽しみにしていたゆにもいつになく早い目覚め、7時にホテルにピックアップの車がくることになっているので、朝食代わりのクラッカーなど食べロビーに向かう。やや早めについて7時を待つが7時を過ぎても車の気配がない。遅れてしまったか、と心配になったが同宿の日本のカップルの方が同じツアーのようなので待っていればいいと逸る心を静める。
 20分ほど予定より遅れたワゴン車に乗るといろいろな国籍の方が乗っている。確認の後グリーンツアー社まで行く。きのう教会帰りに通ったところだ。現地集合でも私たちの泊まったホテルだったら歩いていけるのでかまわなかったのに、ね。ま、今日はおまかせ、おまかせ。

 大型バスに乗り換えガイドさんの説明を受ける。この時日本語ガイド組、英語ガイド組、と2台のバスにそれぞれ乗り換えた。日本組は当然日本の方だが、英語ツアーの方に行かれた日本からの2人のお嬢さんもいた。同じツアーでも日本語の方が料金が高いし、シーズンオフは「カプリ」に関しては曜日が限られているので、英語のツアーも考えなくもなかったのだけれど・・・というのは結果論。とあれ、こうしてバスに乗っているのだ。
 ナポリ・カプリツアーは天候が悪ければそのままポンペイツアーに代わるというのが最初からの条件、天気や海の状況から今日はカプリに行けそうだとの説明に歓声が。もっとも最終的にはナポリに着くまでわからないようだが、たぶん。。。現地の観光協会が波の状態などからOK出さなければ駄目なのだ。
 このバスにはポンペイツアーの方も乗っていてナポリでもう一台の英語組とガラガラポン。カプリ行きとポンペイ行きのバスに2台で組み合わせを変えるのだそうだ。それなのでガイドさんが2名乗っているのだな。一人はポンペイ案内に、一人はカプリ。英語バスのガイドさんは一人でポンペイ組の担当、カプリ組にはナポリから現地英語ガイドさんが付くとのことである。ナポリに降りてから行動は全部一緒。同時や交互に説明を受けたりだった。

「これがコロッセオ。ここが・・・・・・・・・」説明を聞きながらバスは城壁の門をくぐり旧ローマ市街から外へ。「太陽の高速道路」をまっすぐ南へナポリに向けて。途中のドライブインで休憩、この先トイレに行くチャンスは数えるほどしかないですよ、との言葉にみんな20セントコインを持って並ぶ。後から来て止まった数台の観光バスから降りる人をみながらこれがシーズン最中だったらもっと人数多くて大変だろうな、などと思いながらひなたぼっこ。売店で買ったチョコパンをゆにとはんぶんこにしてかじる。

 バスの窓から通り過ぎる景色、雪をかぶった山、大理石の切り出し場(あちこちにあって大理石で作られたいろいろなものに想い巡らす、昨日も一昨日も目にしたあれこれ・・・)、畑の中にぽつんとある石作りの小屋、放牧されてる羊さん、馬で農作業をしている男性、眺めながら、うとうと。南に行くにつれて緑がどんどん広がってくる。「あれがアッピア街道です」との案内に目を凝らし、空想の中、鎧を着た戦士が馬を走らせる姿を街道にかぶせる。
 周りに気を配って安全に何事もないようになんてかまえる必要がないのでふわっとして楽。自分たちでは行きづらいせいもあったけれど中日にツアーいれていて身体安めになってよかった。

 ナポリ市内到着。さっそくナポリ名物(?)の渋滞に捕まる。車窓から市内観光を少々。街中はメイン通りはどこにでもある都市と似たような感じだが、見え隠れする裏通りに、第二次大戦で砲弾浴びて少し崩れてしまった壁をそのまま残して建て増ししてある石の建物がある。路地を挟んでロープを建物のあいだに張ってぱたぱた洗濯物がはためく。イタリアは北の方が工業が盛んで豊かで、南は農業中心の・・・、との知識と風景がだぶる。坂を上ったり曲がったりしながら「右に見えるのが○○、左が・・」、目を凝らす。
 サンタ・ルチア港−卵城付近では下車しての写真タイム。あの、歌の"サンタ・ルチア"!! 海が碧い。空が青い。白い輝いた光。振り向いた丘に並ぶ街並みの壁の色、ナポリだぁ。『ナポリを見て死ね』なんて言葉があったっけ。2月末だというのに日ざしが日本のゴールデンウィークの頃のよう。きらきらとまぶしい。

 ナポリ港でバスを降り、ポンペイツアー組と別れ英語組と合流。ガイドのクミコさんビーノさん、どうぞよろしく。時間までちょっと港内歩く。ナッツ売りのおじさんがいた。おいしそうに袋に手を入れては食べている人を見て、買えばよかったと思ったときは遅かった。
 フェリーに乗っていよいよカプリ島に向かう。約50分。ナポリの港を出るときに防波堤の途切れるあたりに守護聖人らしき像を見かけて「ほら。ね、いいね、あれ」と。ほどほどの揺れも心地よくしっかりと眠ってしまい、目があいたらそこはカプリ島だった。この行きのフェリー、前から三分の一あたりの中央に座っていたのだが、フェリー最前列に、口ひげはやしてスーツをばしっと決めたがっしりした男性と、ミンクのコート(だと思う)羽織った金髪美人、富豪なのかそれともギャングと情婦か、といった感じ。まず日本では見かけることのない映画の中でしか見たことのないカップル。颯爽とあるくその物腰、わぉ! 彼らはいったい?? フェリーの乗客は観光客と地元の人で半々といったところか。


 フェリーを下りてここで中型のモーターボートに乗り換える。このモーターボートで行って帰るの含めてこれが青の洞窟−カプリツアーだ。一緒のモーターボートに団体客で乗ったのは私たちのグループ(グリーンツアー)、他二組。日本の某大手旅行会社の関係らしい(つけているバッチから判断)。その他は個人でグループでここまで来た人達のようだ。モーターボートがいっぱいになったところから出航するのでフェリーから下りてのんびりしてると後回しになってしまうのだろうな、フェリーを下りたら急いで歩いてください、との言葉通り早足でボート乗り場に来たのだ。
 これに乗って青の洞窟の前まで行きここで手漕ぎボートに乗り換えて洞窟内にはいるのだ。乗り換える手漕ぎボートは4〜6人乗り。2艘が交代に洞窟へ運んでくれる。順番を待って、待って・・・・・。そわそわ、わくわく。
 
 カプリの海は港のへりでも透明で、水底に届くロープの先まで、一つひとつの小石まで、光りの揺らめきのその影までがくっきりと見える。光りが海の下までさしこんでいるのだ。カモメが飛んでいる。
 青の洞窟へ向かう船、中ではなくて上甲板の前の方に座る。海の上、風が冷たく寒く感じるがそんなのどうだっていい。
 青い空、碧い海、船のたてる白い波。まさか本当にこられるとは。
 手漕ぎボートに今度は自分たちが乗り込む直前、「こられるとは思わなかったのに、よかった、よかった」とゆにと話していたら、同乗のカップルの女性の方「本当に・・・」としみじみとうれしそうに語り出す。
 
 ツアーがカプリ行きになる確率が5:5、さらにカプリに来たとしても青の洞窟に入ることのできるのはその2割、つまり10%位だろうと覚悟していた。多分ポンペイ見学になるだろうけれどそれでもいい、万が一を頼んでのツアー申し込みだったのだ。
 後でガイドのクミコさんが話してくれたことによると、冬に青の洞窟に入れるのは10日に1日くらい、夏は天気も安定していて波も大丈夫なのでほぼOKなのだけれど、シーズンただ中なので、手漕ぎボートに乗るまで船の上で3時間近くも待つこともあって具合の悪くなる人もいるとか・・・。2月末の今でさえ陽射しの強さ感じるのだから夏本番の太陽っていったら本当にぎらぎらだろうな。その太陽遮るもののない甲板の上で目の前に青の洞窟見ながらゆらゆら揺られて3時間、確かにきついだろうなあ。  青の洞窟は太陽光線の入り込む方向の関係で午前中の方が青が輝いてよいという、ぎりぎり午前中に、10分の1の確率をクリアして、おまけに順番を待ったといっても30分余り。なんて恵まれていたんだろう。


 手漕ぎボートを船に横付けするときの位置を整えるために時々船が向きを変える。ふうわりゆらゆら。空を見て、島を見て、海を見て、崖を見て・・・。待っている甲板の上。まずは個人客から順番に、と案内が入る。隣のグループが席を立っていく。空いたところに帰ってきた人が座って互いに感嘆の声。
「あっ、あそこにボート」
「ボートが、青の洞窟には行っていくよぉ」
「でてくる!!」

  空が
  海が
  岩肌が


 こんな時に詩人にならなくてどうしよう。

 青の洞窟にはいるのにここまでの代金(ナポリからのフェリーとか、モーターボート代)の他に青の洞窟の入場料を払う。これは洞窟の前の所定の位置でだが、それ以外にボート漕ぐ人に各自50セント、といわれてコインも用意。このコインは洞窟内も握りしめていて船に戻ってボートから降りるときに渡した。
 満ち潮時だったので小さい入り口が波の高さでさらに狭くなっている。船頭さんがたぐるチェーンで中に入っていくのだが、この時乗っていた私たち6人、揃って身体を仰向けに倒して岩にぶつからないようにしたのだった。
青の洞窟
『青の洞窟』
 透明な碧のひかり・光り・光。青・あお。光の輝き。


 記憶に留めるだけではたりずに叶うまいと知りつつ、洞窟内の奇跡に目を奪われつつも、カメラ(身体の感覚で方向合わせて)思いっきり押す。

 船頭さんの歌う「カンツォーネ」朗々と響き渡り酔いしれる。

 「神の創りたもうた」自然の神秘。
 【即興詩人;アンデルセン作】のなかでアントニオが天国と思ったのは当然のことだ。本の最後に、彼が妻とこの地を訪れる場面がある。その同じボートにのって、同じように今、青の洞窟にいるのだ、と思うと・・・。
 バルセロナ2日目に晴天のもと見上げたカテドラルのステンドグラス、日の光の中で輝いていたが人間の技(わざ)は自然にかなうものではない。
 「あお」の透明感。目を閉じても焼き付いて離れない。浮かび上がる「あおの光」。

 わずか10分足らず。
 この10分のためにだけローマから往復12時間半。
 でも、この一時のためだけの価値はある。信仰のない私でも思わず見えぬ神に感謝を捧げたくなる。
 
 ボートから夢見ごごちのまま降りる。ただ言葉もなく・・・。


「青の洞窟の見学に予定以上時間がかかってしまって・・」と、モーターボートを下りると桟橋から駆け足でマイクロバスに移動。はあはあ、ガイドのビーノさんが身体に合わせたおおまたでわしわしと歩き、みんなでそれを追いかける。こういうのってツアー、だね。それも健脚向き^^;。帰りのフェリーが決まっているのでその前に予定はたどらなければならないだろうし。
 うん、港から出るにしても狭いから早くしないと順番待っているだけで時間が経ってしまいそう。「みなさんの協力で早く港から出ることができました」、とそれがマイクロバス動き出しての一声。同じモーターボートに乗っていた他ツアーの案内の人に(顔見知りなんだね)「お先に〜」なんて声かけていた。
 狭い道、急な坂、カプリの島ののぼり道。
 バスはレモンチェロの工場へ。ツアーお約束の土産物店。時間の関係で15分くらいしかいませんが、とせかされつつ勧められてレモンチェロを試飲する。アルコール度高いがおいし^-^。しっかり買い込む。小さな店きょろきょろ周る。他にチョコレートに香水にろうそくに石鹸にキャンディ。みーんなレモン。これもこれもとレジに積み上げた。カプリの島はレモンの島でもある。

 徒歩で坂道を下り食事。中は狭くて机と椅子のあいだも狭いが3つのテーブルに別れて座る。定食だ。プリモはパスタかリゾット、セコンドはフィッシュかミートを選ぶようにとのこと。プリモは二人ともパスタを選ぶ。ガーリック・トマト・バジリコ&あさり。美味しいね。セコンドは私はフィッシュ、エビとイカのフリッタ。エビもイカも鮮度がよくてプリプリの食感、地中海食べてるよ〜。ゆにはお肉、ポークハムのブラウニーソースかけ、旅に出て以来魚ばっかり食べていて肉が恋しいから、と。これも美味しかったがやはり海では海のものの方がよかったんでは? ちょっとだけ交換して味見はしたのだ。付け合わせのサラダにかかっていたビネガーオイル、どのハーブで味付けていたのかな。パクパク。ドルチェがティラミス風のアイスクリーム、さらっとしたバニラにこくのあるカカオ、甘さ、口の中でぽわっと溶ける。別会計の飲み物当然エスプレッソの私だがゆにはフレッシュ・レモン・ジュース。絞り立てのレモンで氷なんて入って薄まっていなくてひたすらレモンでシロップ付いてきたがシロップ入れるなんてとんでもない、のおいしさだったようだ。同じテーブルの学生(兄ちゃんず)から「どんな味ですか?」と聞かれて答えていた。自分たちはお酒類頼んでいても興味あるんだな。
 バスに乗って港まで。この時に対向車に大型バスがやってきてのすれ違い、動かない動かない、どうするのだろう。私たちの乗ったマイクロバス(もちろんその後ろに何代か車が)がバックしだした。曲がりくねった急な狭い道をバックで登っていくのだ。えー、どこまで戻っていくのぉ。怖くてこんな道とても運転できないよねえ。崖の下を見ないようにどきどき・・・。
 無事港に着く。
 フェリーでナポリ、バスに乗ってローマへ。「あれはヴェスービオ火山だよね」! 途中のサービスエリアで行きと同じように休憩、小物を少々買い求める。外は暗くなってきているし、うとうと、とろとろ。


 7時半近くにローマに戻る。同乗の人の宿泊ホテル何件か回っておろしながら最後に朝出発したグリーンツアー社前に到着、下車。ローマ市内、ライトアップされた噴水や夜の街を楽しむ人、お店のウィンドウなど車窓から眺めていたのだが、降りる直前、道一つくらいのところに切り売りピザのお店発見。バスから降りてさっそくそこに向かう。
 大通りと細い路地との角にあった切り売りピザの小さなお店、カウンターと客が何人か入るスペースがあるくらいで、おばちゃんが切り盛りしている。中にはいると妙齢の日本人女性客とおばちゃんがなにやら楽しそうに話をしている。ピザの置かれたカウンター眺めながらいると、会計済ませた女性が「通訳してくれって、頼まれて・・・」と、私たちに話しかけてきた。「ここのピザどれもみんなおすすめだ、ぜひ食べてみて欲しい、って伝えてくれって」「私もよく利用してるんですよ、旅行楽しんでくださいね」と、おねえさん。おばちゃんとは「チャオ」と挨拶してお店の外にでていった。
 あれこれ相談している私たちに、おばちゃんが雛もの指さしながら、片言日本語で「なす。おりーぶ。ここでも。テイクアウトも」と。

 マルゲリータとマッシュルームピザの2種類に、こんがり焼けたチキンをテイクアウトで、と頼む。、適当な大きさのピザに半羽のチキン、オーブンにいれて温めてから渡してくれるのだ。日本ではコンビニなどもっぱら電子レンジ(家でも、か)で温めてしまうが、きっちり温度のあげたオーブンで温めるのとでは味が違うよね、それぞれをさらに2つに切って(2人分と食べやすくして)箱に入れてもらった。全部で12ユーロちょっと。
 とことこ箱をぶら下げながらホテルまで歩いて(このテルミニ駅そばの道はだいたいわかるゾ)終点。今日も終わる。
 部屋に落ち着いてから「いただきま〜す」。「おいしい」「おいしいよぉ」
 はぐはぐ。
 ながらで、テレビをつけてみる。チャンネル変えたらサッカーをやっていて「アッ、トッティだぁ」。W杯以降サッカー選手のレパートリーも増えたのだ。のんびりのんびり。
 チキンは食べきれずに翌朝も食べたほどだった。

 洗濯などしてゆっくり消灯。

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