片恋夜話7
したにのみ恋ふればくるし 玉のをの |
たえてみだれん 人なとがめそ |
滑らないように気をつけて歩いていた雪道が、急に明るく輝いた。新一が空を見上げると、今日さんざん雪を降らした雲が切れ、月明かりが差していた。上空は風が強いらしく、満月が雲間を泳いでいるように見える。
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したにのみ恋ふればくるし 玉のをのたえてみだれん 人なとがめそ 古今和歌集 巻第十三 恋歌三 667 紀友則 人に知られないように心の中でばかり恋しているのは苦しいので、貫き止める緒が切れて玉が乱れるように心を乱して恋しがろうか。世間になんと言われようとも。 |