OUR OPINION

  スクールカウンセラーを活かすために
 
 各学校に配置されている「スクールカウンセラー」。教育委員会などでは、学校現場で教員などとチームを組んでの活動を期待していると言われますが、私たちが相談を受ける中ではその連携がうまくいかず、スクールカウンセラーからも先生からも、そして利用する親からも不満の声を聞きます。スクールカウンセラーの役割について考えている中で、次の3つの話に出会いました。ひとつは京都市教育委員会「不登校フォーラム」のパネリスト竹村洋子さんの発言、もうひとつは「おすすめの本」コーナーで取り上げた『不登校支援ネットワーク』の中で紹介された様々な試み、そして伊藤美奈子さんの『スクールカウンセラーの仕事』です(下欄参照)。

 竹村さんはスクールカウンセラーとしての活動の中から、「子どもが不登校になったことに家族は自責の念を持っています。また教師も同じように自責の念を感じています。でも子どもが『自分の思いが出せるとき』が来たのです。その子どもの思いを受け止めて、形に出来る『機』が熟したのです」と話されました。親や教師の話を聞く中で、それぞれの持つ自責の念が取れてくると、子どものことや子どもが求めているものがよく分かり、今この子の持っているもので何が出来るかを考えることができます。この時「成長」という縦の線で見る親と、「同じ世代の子どもたち」という横の線で見る教師とが「チームを組む」ことができるよう支援することが、スクールカウンセラーとしての役割である、という説に共感するところがたくさんありました。

 しかし実際の現場からの、教師とスクールカウンセラーの連携がうまくいかない、スクールカウンセラーがお客さんのようになっているとの声を聞くと、せっかくの専門家の思いが生かされず、子どもたちの支援に結びつかないのは残念です。
 その点について『不登校支援ネットワーク』の中では、スクールカウンセラーと教師集団の仲立ちをする、「コーディネーター」の必要性について述べられています。この本には研究者、教師、スクールカウンセラーとそれぞれ違った立場から、学校での取組みの様子やそこから見えてくる問題点について書かれていますが、立命館大学の高垣忠一郎教授はご自身がある私立中学・高校で活動する中で、次のように述べています。スクールカウンセラーには様々な役割がありますが、主に「生徒や父母と直接あってカウンセリングすること」と「教師に対するコンサルテーション(相談・意見交換)」であり、中でも後者の役割が重要だということです。そのコンサルテーションのあり方は、スクールカウンセラーが教師とはやや異なる専門性と視点を持つ専門家として、「対等の立場で」教師という教育の専門家の活動を活性化したり援助することであるとしています。しかしともすれば、学校現場ではカウンセラーの意見を伺う、指導していただくという依存的、受動的スタイルになりやすいことを危惧しています。そこでスクールカウンセラーと教師が対等に話し合える関係作りをするためにも、コーディネーターが必要となるのです。
 高垣教授はこのコーディネーターの役として、養護教諭をあげています。この点について伊藤美奈子さんは『スクールカウンセラーの仕事』の中で、「養護教諭とスクールカウンセラーは『体か心か』という入り口は違っても、ともに癒しをもとめる子どもたちが対象という共通点があり、情報交換を密にすることができる」と述べています。互いに助言者となりながら、お互いの専門性を生かした連携の仕方を模索することが、いま大いに求められていると、やはり養護教諭にその役を期待しています。

 今の学校現場にゆとりがなく、教師も手一杯という現状も考えると、コーディネーターの必要性がますます高まっているように思われます。確かに養護教諭がその任を担うことも可能ですが、その負担は増すばかり。となると、やはり教育相談活動ができる専任の教諭が配置される必要性を強く感じますが、まだまだごく一部の自治体で配置されているだけです。
 また伊藤さんは「学校現場で起こっている問題は非常に多岐にわたっており学校だけで解決するのが容易でないものもある」とスクールカウンセラーの仕事として「外部との連携」もあげています。立命館大学の春日井敏之助教授も『不登校支援ネットワーク』の中で、「専門の心理・医療・福祉・司法機関など専門機関との支援ネットワーク」を作っていくことの必要性と、そのために教育行政の果たす役割と責任について触れています。
 スクールカウンセラーが親と教師と連携して、十分な子どもたちの支援ができる体制づくりを、今一度教育行政には考えてほしいものです。また私たちも引き続きこの問題に取組み、考えていきたいと思っています。
参考文献
 「不登校支援ネットワーク」 高垣忠一郎・春日井敏之編著 
   かもがわ出版  定価2300円+税

 「スクールカウンセラーの仕事」 伊藤美奈子 著
   岩波アクティブ新書 定価700円+税


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