撮影地:エア湖(レークエア)、ウナダッタトラック(ウードナドッタトラック)

● 逃避行-2
ウイリアム・クリーク・ホテルのおばさんのおかげでワシは"Road Closed"の看板を横目にエア湖へ続くダートへと進入できた。ポストに入園料を放り込んで、いよいよ出発だ。水たまりが幾つかあるが、そんなものは可愛いもの。我がランドクルーザーは快走を続けた。「このくらいで道を閉鎖するなんて随分と大げさなものだ」と楽勝ムード、しかし、ゲートから五分ほど走った辺りで、ワシの楽観は吹き飛んだ。200mほどの区間、道路が完全に水没している、しかも泥が深い。恐る恐る進入、泥にタイヤが滑り、駆動力が十分に伝わらない。「いきなりスタックか!」、エンジンは大きく唸るも、車は少しずつしか進まない。どうにか脱出はしたものの、正直、肝を冷やした。途端に不安が大きくなる、「確かにもう一雨来たら帰れなくなるな」と。もちろん水没区間はここだけではない、エア湖到着までの間、いくつもの泥濘を越えた。水の流れた勢いで道路が垂直に大きくえぐられ、天然の深い溝ができている所も多くある。その度に減速と加速、シフトダウンとアップを繰り返し、ラリーに出場しているような運転でようやくエア湖岸に到着。たかが60キロがとてつもなく長く感じた。しかし、目の前には陽炎の中にエア湖が浮かんでいる。疲れも心配も長年の夢がかなった感激でどこかに消えた。天気も快晴、雨の気配はない。エア湖訪問に際し、ワシにはあるプランがあった。今夜は満月、干からびた湖面 から大きな月が昇るシーンをモノにできるかもしれない。月の出までにはまだ相当時間がある。一通りの撮影を終え、ワシは車の中で一眠りすることにした。こういう時にキャンパーは便利だ。屋根を上げればベットができる。ドアを開けて風を通せば日の当たらない室内は心地よい。「zzzzzz」、「!!!」、目を覚まして目にしたのがこの光景である。そこまで嵐が来ている。急いで帰らねば。満月は次の機会、屋根をたたみ、キャンパーを走行可能な状態に大急ぎで戻す。ウイリアム・クリークまでの間に横たわる60キロは途方もなく長い。

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Nikon F5A with MF-28,
Ai AF-S Zoom Nikkor ED 17-35mm F2.8D (IF),
Fujichrome PROVIA 100F (RDP III)
Aperture-Priority Auto @ F8
Halligan Point, Lake Eyre North, South Australia
October, 2001

2002.07.31 掲載
2002.12.19 アクセス解析対応