eCRMにおけるインテリジェント・ウェブの役割と展望
 
【 アスクジーブスジャパンセミナー2001 】

                                                 大浦総合研究所 大浦勇三
                                                                                    

(1)全体トレンド イノベーション志向と組織のインテリジェント化
・インターネットのインパクトは「Economy」より「Psychology」の面が大きい
・具体的には、直接的な自社利益の追求より顧客心理の深耕を通じたロイヤリティ向上へ
・「顧客の求める固有の価値」を明確化し、独自商品・独自サービスの開発へ
・「スピード」「イノベーション」が不可欠
・それを実現する組識やプロセスは効率化ではなく「コラボレーションによる価値創造」へ
・「バスケットボール型」のハリウッド・モデルへ

 (2)eビジネス ブレイクスルーするための成功要因(ドットコム企業からの教訓)
「顧客の利益」は「商品・サービスの利益」より重要である
・顧客が発信したメッセージをプレゼンテーション、販売、サポートに反映させる
・更に顧客メッセージを分析し、顧客行動を「訪問客」と「購買客」に分類、実店舗にも活かす
・実店舗を含めたチャネル統合を徹底する
・eビジネスとサプライチェーン・マネジメントは表裏一体である
・投資収益率(ROI)を重視し、過剰投資に気をつける

(3)マーケティング・イノベーション
・顧客の声に忠実に応えるだけでは真の顧客サービスにはならない
・顧客は自らが欲するものを自らの口を通じて的確に説明できなくなっている
・顧客潜在ニーズを「アプリケーション・コンセプト(イメージ)」として顕在化させる
・商品やサービスとして市場に投入するには3つのステップで考える必要がある
・3つのステップは「アイディア創出」「アイディアのコンセプト化」「コンセプトの商品化」
・新商品や新サービスの投入にあたり各ステップの強み/弱み、必要な外部連携を検討する

(4)マーケティングにおけるデータ・情報・知識・知恵
・インターネット時代になって初めて自由に多様なデータや情報が活用できるようになった
・データや情報を更に知識や知恵にまで高めていく必要がある
・そのためにはコンセプト可視化スキルをもつ「ナレッジ・エディター」が欠かせない
・当初は社内外の適任メンバーを「ナレッジ・エディター」として位置づける
・徐々に組識メンバーの多数を「ナレッジ・エディター」として育てていく
・米国先進企業ではこのコンセプト可視化スキルの教育に熱心である

(5)eCRMの基本方向と構成要件
・「サービスの質」と「収益性」をリンクさせる
・顧客とのインタラクション強化(顧客インタラクション・マネジメント:CIM)をはかる
・「オペレーション」「分析」「コラボレーション」がeCRMのトライアングル
・どのチャネルでもやりとりできる期待から「コンタクト・センター」が台頭
・顧客の全体満足化と自社の全体収益最適化への期待が「統合CRMセンター」へ
・「アプリケーション」「インテリジェンス」「基本データベース」でシステム統合

(6)eCRMにおけるインタラクション構造と評価の視点
・インタラクションには「Q&A」「アンケート」「フォーラム」「コミュニティ」
・これを通じて、顧客の生の声、満足度、提案への反応、ネガティブ情報等を把握する
・「膨大なデータ・情報」の量に圧倒されることなく、分析を積み重ねる
・eCRM評価の視点は「課題の解決度」「分析の深耕度」「経営への貢献度」
・「顧客満足度」と「顧客から得られる利益率」を混同しない
・「ブランド力」強化には顧客の満足度が高い部分を前面に押し出す

(7)eCRM ケース・スタディ
・米大手通信機器メーカーのeCRM
・「顧客が何に関心を持っているか」をクリック・ストリーム分析をもとに把握する
・例えば、ウェブ(商品比較)を見てから店舗にきた顧客か、見ないできた顧客なのか
・顧客はウェブサイトで何を求めているのか、何を優先しようとしているのか             
・あらゆるチャネルを通じて顧客行動を分析し「顧客の全体像(活動空間)」を把握する
・明解な「プライバシー・ポリシー」を提示する

(8)eCRM導入から得られる教訓(例)
・CRMの目的は顧客サービス革新/ロイヤリティ向上にある(利益はロイヤリティから)
・CRM技術だけではなく長年蓄積したノウハウも織り込みながら顧客関係を改善する
・優良顧客ほど複数のチャネルを使い分ける
・顧客がどのチャネルを使って購入しても、単一のCRMシステムで追跡できる必要がある
・「顧客及びウェブ主体」の設計になっているかどうかを再確認する(Psychologyの観点)
・顧客から寄せられる質問の80%以上をオンラインで解決できるようにする