「魔女」属性萌え

0 はじめに

 久しぶりに漫画を整理した。そして、いくつもの懐かしい作品に再会した。それが自分の萌え属性について反省するよい機会になった。
 どうやら私は「魔女」が好きなようだ。魔法少女ではない。魔女である。属性として一般的に流通しているとは言いがたい規定であるが、なにやら一貫したものが見えてきそうなので、まとめてみたい。

1 「魔女」属性とはなにか

 「魔女」といっても、魔法を使えるかどうかは関係ない。魔法少女属性とはちょっと位相が異なる。
 「魔女」は単純な属性ではない。複数の属性の束からなる。
 「魔女」の構成要素として、以下のようなものが挙げられる。

(1)黒髪ロングでなければならない。
(2)目つきが悪い、もしくは鋭くなくてはならない。
(3)大人、もしくは大人っぽくなければならない。
(4)雰囲気が、陰気、腹黒、薄幸でなくてはならない。
(5)実力者でなければならない。
(6)振る舞いは自己中心的で冷酷でなくてはならない。
(7)にもかかわらず、根は情が深くなければならない。

 というわけで、今度は具体的な名前を挙げてみたい。
 七要素を羅列した段階では恣意的に感じられるかもしれないが、そうではないことが理解いただけるだろう。

2 私的「魔女」四天王

 まずは私に「魔女」萌えを自覚せしめた四人を挙げよう。私にとっては、この四人が魔女の典型である。

 まずは鈴木央『ライジングインパクト』の黒峰美花嬢である。
 上述の七つの要素がよく見て取れると思うのだが、どうだろうか。(7)に挙げた「根っコでの情の深さ」の具合とか、素晴らしい。作中でもっとも「いい女」ではないか。『Ultra Red』のヤマダや『僕と君の間に』のダリアにも魔女の血が流れているようだ。鈴木央のヒロインはつねに私の心をくすぐる。

 次いで、彩花みん『赤ずきんチャチャ』のどろしーちゃんに着目したい。
 ここでも七要素が揃っている。ポピィ君も惚れるわけだ。ここで(1)の黒髪ロングを強調しておこう。セラヴィーは間違っている。どろしーはカラス頭のほうが断然可愛いのだ。

 そして、さらに完璧な「魔女」が和田慎二『ピグマリオ』のメデューサ様である。
 七要素がきれいに揃っている。とりわけメデューサにおいて素晴らしいのが(4)の幸薄さである。雰囲気だけでもいいのであるが、彼女の場合、本当に幸薄いわけで。ああ、なんと幸せを掴むのが下手なことか。不幸道を一直線に驀進である。こういう不幸のオーラ出しまくりな感じがなんともいとおしい。もちろん最後は幸せになって欲しかったわけだが、悪役なので当然のように無理でした。

 最後にアニメ『プリンセスチュチュ』のるうちゃん、いやプリンセス・クレールを挙げておこう。
 もはや言うことはない。なんてったって黒いプリマドンナ、オディールがモデルである。超正統派。究極の「魔女」ということになる。

 以上四人が文句なしの「魔女」。ここに一貫性を見てとれない人、ここで魂が震えてこない人には「魔女」萌えの素質がそもそもない。

3 その他の「魔女」

 その他の「魔女」を、典型例境界例まじえて思いつくままに挙げていこう。ちなみに、先に挙げた七条件はあくまで一般的な特徴にすぎない。必要条件でも充分条件でもないので、注意されたい。

 まずは四天王以外の「魔女」から。
 「魔女」中の「魔女」、超大物といえば、松本零士『銀河鉄道999』のメーテルだろうか。上の七要素からは外れる点がいくつかあるが、まあこの人は別格である。
 松本零士の次は新谷かおる。『エリア88』のセイレーン・バルナックは要素をきちんと揃えている。しかし、88の男どもが濃すぎるせいで、ちょっと「魔女」にしては可愛すぎるように思えてしまうのが難点か。
 冬目景『羊のうた』の高城千砂もまあ「魔女」である。弟ともども今ひとつヘタレ気味で、(5)の「実力者」規定に反する気はするが。
 尾田栄一郎『One Piece』からはニコ・ロビンが文句なしだ。彼女が仲間になったあたりから作品のテンションが落ちてしまっているのが残念だが。
 同じジャンプでは、和月伸宏『武装錬金』の早坂桜花も「魔女」であろう。
 渡辺航『制服ぬいだら♪』陰宮寺呪々美はカッコなしの魔女だし、氷川へきる『ぱにぽに』橘玲は作中のニックネームがそのまんま「C組の魔女」。
 ゲームに目を移すと、『アトラク=ナクア』の初音姉様などが思い浮かぶ。一般に「女郎蜘蛛」は強力な「魔女」である場合が多いかと思う。
 『家族計画』高屋敷青葉も(7)の「根っコの情の深さ」が利いた上質の「魔女」である。
 『姉、ちゃんとしようよっ!』の柊要芽姉さんも素晴らしい。七要素を念頭において比較すると、なぜ高嶺姉貴がどう背伸びしても「小悪魔」どまりなのか、ということが理解できる。
 コンシュマーでは、『九龍妖魔學園紀』から、チャイナ保健医劉瑞麗先生を挙げておこう。中華魔女である。
 たしかに「魔女」ではあるが、「妹」であるがゆえに(3)にちょっと反してしまっているタイプもいる。ご存知『シスタープリンセス』の千影や『月姫』の遠野秋葉とかである。
 アニメでは、『少女革命ウテナ』姫宮アンシーなどが「魔女」であろう。「薔薇の花嫁」すなわち「お姫様」を名乗ってはいるが、あれは「魔女」だ。
 黒髪ではないが、カテジナ・ルースの暴れっぷりは「魔女」に相応しい。もちろん『機動戦士Vガンダム』である。

 今度は七要素はそこそこ揃っているにもかかわらず、「魔女」ではない場合を挙げてみよう。
 (4)の「陰気、腹黒、薄幸」といったネガティヴ要素がない、もしくは打ち消されている場合には、魔女にならない。このとき、(1)の髪型も変化しているのが普通である。デロリとした黒髪が記号として象徴するものがわかる。
 かなり強引なので、まあ話半分に読んでいただきたい。『武装錬金』津村斗貴子は(4)が「漢らしいブチマケなスパルタンさ」に打ち消されている。それに連動して、髪が短くなっている。『超獣機神ダンクーガ』の結城沙羅は(4)が「雌豹の攻撃性」に置き換わり、髪は赤毛に。『カレイドスター』のレイラ・ハミルトンは(4)が「女王の貫禄」に置き換わり、髪はブロンドになる。ゆえに、この辺はやってること滅茶苦茶でも「魔女」っぽさ皆無である。
 次いで、(6)が欠ける場合を考えてみよう。振る舞いがクールであっても自己中心主義がないと「魔女」にはならない。
 たとえば、冷たさが「ワケあり」の場合。懐かしの『エターナルメロディ』の楊雲や『みつめてナイト』のライズ・ハイマーを想起していただきたい。「ワケあり根暗女」は「魔女」ではない。
 これまた懐かしの『To Heart』来栖川芹香先輩も、「魔女」には届かない。彼女の「魔女」は「お嬢様」芸の域を出ていない。「不思議少女」であろう。同じ「不思議少女」としては、DVD化が嬉しい『伝説の勇者ダ・ガーン』桜小路蛍などだろうか。
 佐渡川準『無敵看板娘』の茅原智香先生は、ただただ一途に「ダメな人」なだけだな。
 このように、七要素をちょっと入れ替えるだけで、まったく異なる属性へと化学変化を起こしたりするようだ。このあたりの属性の錬金術は、なかなかに興味深い。

 実例としてはこんなところだろうか。曽我町子先生はどうなんだ、最強究極至高の「魔女」ではないのか、とかいうような意地の悪い突っ込みは勘弁していただきたい。

4 おわりに

 なんだがグダグダになってきたので、このへんで止めておく。
 「魔女」属性そのものは、非常に古典的なものである。ただ、これまであまり萌え属性として語られることが少なかった。どちらかというと悪役、敵役の属性として認知されていたようだ。
 それではもったいない。
 「魔女」は素晴らしいのだ。「姉」や「ツンデレ」あたりと共同戦線を組んでの展開を期待できる。そのポテンシャルはもっと評価されてしかるべきなのである。
 最後に、(4)の「薄幸さ」について注意を。基本的に私は「幸薄そうな女萌え」である。しかし、だ。愛する女性が不幸であることに萌えているわけではない。それではサディストである。そっちの趣味はない。ベタであるが「不幸な女の子が幸せになる話」が大好きなだけである。ここは誤解しないでいただきたい。
 しかしまあ、私の思いつく例はなんだか古い。どうにもならないが。

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