仮面ライダーにおける重力制御技術について

 2011年公開の映画『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』はなかなかによくできた作品であった。しかし、本稿で論じたいのは映画そのものの出来ではない。本作では昭和の七人ライダーの活躍が現代の特撮技術で描かれたわけだが、そこで私は、かねてより抱いていた疑問をあらためて問わざるをえなくなった。それは、仮面ライダーが重力制御技術をいつ手に入れたのか、というものである。

 言うまでもなく公式見解では、仮面ライダーが重力制御技術を手に入れるのはスカイライダーから、となっている。スカイライダーのセイリングジャンプこそが重力制御に成功した証というわけだ。しかし、私はつねづねこれはおかしい、と考えていた。

 そもそも、空を飛んだ仮面ライダーはスカイライダーが最初ではない。『仮面ライダーV3』で一号と二号はカメバズーカを抱えて飛んでいる。あの飛行は力学的にはきわめて不可解なものである。重力制御がなされている、と考えざるをえないようなものなのだ。

 さらに、昭和ライダーの必殺技を見てみよう。『フォーゼ&オーズ』がV3の反転キックおよびXライダーのXキックを描いてくれている。その描写は、重力制御技術の存在なしには説明がつかないものとなっている。

 V3の反転キックは、明明白白にまともな力学を無視した軌道を描いている。相手を蹴ったあとに空中で反転して戻ってまた蹴る、などということがどうして可能になるのだろうか。常識的には理解できない。この技は、重力制御に類する技術なしには実現不可能だと思われる。

 さらに、Xライダーである。Xライダーはライドルで大車輪をするわけだが、これまた力学的にはとんでもない行為である。ライドルはなぜ空中で静止したままでいられるのだろうか。重力を無視しているとしか思えないのである。

 ここで、私の仮説を述べておきたい。

 まず、スカイライダーが初めて重力制御に成功した、という説は誤り、あるいは誤解を招きやすい表現である、と考えたい。実情は、スカイライダーにおいて初めて安定して疑似飛行を可能にするレベルにまで重力制御技術が到達した、ということなのではないか。

 では、いつから仮面ライダーは重力制御技術を備えたのか。私は、一号のベルト、タイフーンの段階から仮面ライダーには一定程度の重力制御システムが装備されていた、と考えたい。もちろん、それは通常の状態で飛行を可能にするほどのものではなかった。ライダージャンプの制御やライダーキックの破壊力増加などに補助的に使われるものであったのであろう。ただし、それはあくまで通常の状態である。対カメバズーカ戦では、たぶん一号と二号はベルトの重力制御システムを臨界まで暴走させたのではないか。その状態でベルトを二本合わせれば、疑似的にセイリングジャンプを実現できるのである。

 V3のダブルタイフーンも基本的には一号二号のベルトと同様の重力制御システムをもっていたと思われる。ただし、ダブルタイフーンというだけあって、その出力は先輩ライダーを上回るものであったのだろう。V3にのみ、反転キック、つまりは一撃目のキックの反動のベクトルを重力制御でずらして二撃目のキックに繋げるというような反則技が可能なのは、その重力制御能力の優越ゆえなのだ。

 さて、Xライダーの場合には、ベルト本体ではなく、そこに装着されているライドルこそが重力制御システムの要をなしている、と想定される。ライドルはたんなる武器ではないのだ。ライドルが我々の知る物理法則を無視して空中で静止することができるのも、これで説明がつく。たぶんライドルによる打撃は重力制御が加わった破格の破壊力をもっていたのであろう。

 ところで、その動きに重力制御の痕跡があまり見られないのが、たとえばアマゾンである。アマゾンはこのシステムをもっていないのかもしれない。たぶん、重力制御技術はショッカー系の科学者の発明なのであろう。そして、その技術はインカ古代文明には存在しないものだったのである。まあ、ギギの腕輪とガガの腕輪が揃えば、重力制御くらいやってやれないことはなさそうではある。最近ではオーズのサゴーゾコンボがまったく別の理論に基づいて重力制御に成功している。方法は一つではない、ということだ。

 最後に問おう。誰が重力制御技術の発明者なのか。これはもう、スカイライダーの改造担当者、志度敬太郎以外にはありえない。志度博士がネオショッカーに協力を迫られていたことは周知の事実であるが、私は彼と悪の組織との関わりはそれだけではなかったと睨んでいる。たぶん志度博士は以前にショッカー科学陣の一員として、仮面ライダー一号のベルトの開発にも携わっていたのである。そこで志度博士は初歩的な重力制御システムの開発に成功したのであろう。そのシステムが一号のベルトに装備され、二号、V3にコピーされていった。同じシステムを元に、神啓太郎博士が深海開発用にかなりの改変を加えたのがXライダーのライドル。どこかで志度博士はショッカーから足を洗ったはずなので、このあたりの展開は彼とはかかわりないところで行われた可能性が高い。そして、それから十年ほど後、ついに彼は安定して疑似飛行を可能にするまでの重力制御システムを完成させる。それがスカイライダーのベルトに装備されたというわけだ。

 もちろん全部根拠のない妄想だけどね。

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