彼女には見えない様にビデオカメラが設置してある。この儀式を後生に伝え、縄神様に失礼の無いよう伝統を進化させて行くためには記録を撮っておく必要がある。昔はそれこそ巻物であったが、父の代の物はそれに加え写 真が相当数あった。これは父の趣味だったのだろう、長襦袢の女性が縛られている。 そしてこれからが私の考案だ。 私はガムテープを取り出し、彼女に猿轡をする。
  「せっかく神様が中に入っても口から出てしまってはどうしようもないから、ホント君には悪いんだけど…」
 「あ、何するんですか!やめて下さい…ウグウグゥゥゥッ」
 恨みがましい目がもうなんとも言えずたまらない、ここで私は自分こそが恍惚とし、興奮している自分に気付く。そうか、縄神様が降りたのはこの私なのか!まったくこまった神様もいたモンだ、まぁ、八百万というぐらい神様がいるこの国だから人間っぽい、しかもこれだけ変態チックで俗っぽいのがいても不思議はない。そんな罰当たりな事を思わせるほどの親しい神との邂逅。
 夕方になった。彼女の顔には情けなさと焦りの色、それが夕暮れに染まりなんとも言えぬ 哀愁を醸し出す。何かを訴えかける様な目もまたたまらない。彼女の微妙な身悶えや手首の縄ずれ、彼女自身の体臭等が複雑に絡み合い、そろそろいい頃合、縄神様が縄に宿りはじめたようだ。もう耐えられないと身体を激しく揺すり身悶えてもがきはじめるまで、それが縄神様が縄に全て宿った印である。後もう少し儀式は続く…。

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