僕の家には今、僕しか住んでいない。母は幼い頃に他界し父も半年前に死去している。その父が僕が校務員を継ぐ際に言った事がある。
「お前も俺と同じ目だ、同じ血だ。いいか、俺の部屋の押し入れがこれからお前の大切な場所になる。まぁ、その時になったら解る。がんばれ」
 一体何の事か解らなかったが父が死んだ後、押し入れを開けてみた…単に蒲団が入ってるだけ。いや、あそこまで父が言うからには何かあるはずだと思い奥の蒲団を除けてみると奥の方には…SM雑誌と言えばいいのか女を縛る指南書のようなものが何冊も隠されていた。その上父が縛ったと思わしき女性(しかも生徒らしい)の詳細なメモ書きまで。
 頭がクラクラするような出来事であり、父が遺した言葉「お前も俺と同じ目だ、同じ血だ」の言葉がクラクラした頭をさらに混乱させ、払拭しようにも払拭出来ない。
 そんな事を頭に残したまま眩しい生徒達を眺めていると、ついついと良くない感情が心にもたげてくる。一体何を考えているのかと自戒するのだが、一回頭をもたげた感情が欲情に変わるのにはそうたいして時間がかかるものではなかった。


「森山沙也乃」は僕のお気に入りの少女だ。彼女が体育の授業や部活中に見せる快活な表情、掃除の時間の真面 目な表情、何よりも全てに一生懸命なのはとても好感が持てた。
「校務員さ〜ん、落ち葉とかここでいいですかぁ」
「あぁ森山さんありがとう。しかしこんな寒い日でもよく頑張るねぇ掃除なんか」
「そりゃそうですよ、自分たちの場所は自分たちできれいにしないとね!…って言っても外の掃除なんてみんなサボるんですよねぇ〜今日は最後までいるの私ひとり!」
「まぁ僕が学生だった頃もよくサボって外で買い食いとかしてたしなぁ〜」

「そうだ森山さん。みかん持ってかない?1人だから一箱もらうと余っちゃって余っちゃって。最後まで外掃除頑張ったからご褒美だ」
「え、いいんですか?」
「うん、ちょっとウチまで来てくれる、そこだから」
「あ、そうなんですよね〜敷地内良いなぁ〜遅刻寸前まで寝てられそうで」
 こうして僕は彼女を誘い込む事に成功した。味見と称し睡眠薬入りのみかんを食べさせる事にも成功。そして彼女は眠りにつく。
 
  沙也乃が目を覚ますと暗闇の中。身体が動かない。口には何か咬まされている。一体何が起こったのか…縛られているようだということは理解出来た、けれども何故縛られているのか理由も解らない。暗闇で不自由な身体を動かしていると目の前の戸が開いた。

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