「森山さん。どう?そうやって縛られた気分は」
「グムぅっ!ムぅぅぅぅっ!!」
何か言おうにも猿轡で塞がれた口からは呻き声が出るだけ。キッとした目で彼女は僕を睨みつけた。
「うん、いいよその目。次は頑張ってその縄を解いてごらん。僕は一切手出ししないからね。さぁ解かないと逃げられないよぉ〜」

 沙也乃の抵抗がはじまった。しかし手足をギッチリと縛ってある縄はびくともしない。縄ズレのギリ…ギリ…という音。猿轡の隙間からフゥーっと漏れる息とうぅ〜っと呻く声。頭を振り、身体を振り、心を振り絞り沙也乃の抵抗は続いた。

 どのくらいの時間が起ったろうか?だんだんと表情が険しく…いや弱々しくなってきているのに僕は気付いた。必死の縄抜けで汗だらけの顔。口から漏れる上気の息づかい。そして僕の待望の…目にはうっすらと涙!
 そうなのだ。女子生徒の一生懸命の汗と涙!僕の見たかったものはこれだったのだ。これが父の言う「俺と同じ目だ、同じ血だ」なのだろう。押し入れの秘密をそのままにして僕に残しておいてくれたのは父の置き土産であったのだ。

 縄を解こうともがき苦しむ少女の暖かい汗くささが押し入れに隠る。もがき呻く声が次第に泣き声も混ざる様になってきた。もがく動作が弱々しくなり、食い込む縄目に苦悶する様な仕草に…しかしまだ足りない。もっと一生懸命に!がんばって森山さん!!

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