フウ (タイワンフウ)  Liquidambar formosana

フウ(タイワンフウ:2002.11.17 京都府立植物園

フウ (タイワンフウ:2002.11.17 京都府立植物園)

マンサク科* フウ属 【*APGⅢ:フウ科】

Liquidus: 液体+ambar: 樹脂 formosana: 台湾の

モミジバフウの集合果 フウの仲間をカエデと間違えるのは何も日本人だけではないようで、アメリカの本を読んでも、イギリスの本を読んでも、必ず「カエデに似ているけれども、カエデは葉が対生しているのに対し、フウの仲間は葉が互生しているから容易に見分けがつく」と説明がしてあるのでおかしくなります。もっとも、葉の形が似ているだけでなく、秋になると美しく紅葉しますし、おまけに「楓」という漢字は日本ではカエデと読ませますから、間違えてもある程度やむを得ない気もします。ただ、葉が対生するか互生するかは、非常に大きな違いですし、また果実の形が、カエデでは翼のついたプロペラ型のものであるのに対しフウの仲間は丸い集合果となってぶらさがっていますから、少し注意すれば両者の区別は容易です(右写真:アメリカフウの集合果(万博記念公園 1999.11.28))。

アメリカフウ(モミジバフウ:1999.11.28/万博公園) フウの仲間には世界に3~4種類あるようですが、日本でふつうに見掛けるのはフウ(中国中南部、台湾原産:タイワンフウともいう)とモミジバフウ(北アメリカ大西洋側中部~南部、メキシコ原産:アメリカフウともいう)の2種類だけのようです(右写真:アメリカフウ(万博記念公園 1999.11.28))

この両者を区別するのは比較的容易で、モミジバフウではその名前のとおり、葉の切れ込みの数が5~7と多く、また切れ込みも深くて、全体の形はオオモミジなどのカエデの葉を大きくした感じです。一方、フウの方はふつうトウカデのように3つに切れ込んでいますから、ここを覚えれば区別はそれほど困難ではありません。さらに、モミジバフウでは、2年目より古い枝に、ちょうどニシキギと同じようにコルク質の翼が発達してくる場合が多いので、この点にも注目することが必要でしょう。

ところで、隔離分布する植物の例として別項でユリノキを紹介しましたが、今回のフウの仲間も、アメリカフウとかタイワンフウという名前からすぐに想像できるように隔離分布する植物の例です。ただユリノキは北アメリカ東南部と中国南部の2ケ所に分布が限られるのに、フウの木の仲間は中近東(小アジア)の方にも非常に近い種類(L. orientalis)があるなど、多少様子の違うところがあります。