ユリノキ  Liriodendron tulipifera

ユリノキ(大阪市立大学理学部付属植物園:2005.5.5)

ユリノキ(大阪市立大学理学部付属植物園:2005.5.5)

モクレン科* ユリノキ属 【*APGⅢ:モクレン科】

Lirion:ゆり+dendron: 木 tulipifera:チュ-リップの形の花が咲く

黄葉したユリノキ(大阪府立大学:1999.11.17 私がむかしいた大学の研究室は4階にあって農場に面していましたが、建物と農場の間に幅15メ-トルほどの緑地帯があり、クスノキ、ケヤキ、シナサワグルミなどにまじってユリノキが1本植えられていました。 毎年秋になると鮮やかな黄色に色づきますが、色の変化は枝の付け根の古い葉から始まりますので、 枝先に残った緑の葉とのコントラストが美しく、そのバランスが1日ごとに変わっていくのが楽しみでした。 黄葉が終わると葉は水分を失って褐色に変色し、やがて散ってしまいます(右写真:大阪府立大学(1999.11.17))

ユリノキはコブシやオガタマノキなどとおなじモクレン科に分類されていますが、 ガク、花弁、離生した多数のおしべ、めしべが花床にらせん状に配列しているなど、 それなりの共通点はあるものの、一見しただけでは類縁関係がピンときません。 一番違うところは、モクレン属やオガタマノキ属では果托に埋まった果実がわれて、中から水分の多い赤い種子が白い糸にぶらさがって出てくるのに対し、 ユリノキ属では風散布ができるように翼をもった乾いた果実がらせん状に配列した集合果になっていることです(右写真:大阪府立大学(2000.11.20))

公園などで普通にみかけるユリノキは北アメリカ東南部に自生する樹木ですが、 これに極めて近い種類にシナユリノキ (L. chinense) があり、中国の揚子江以南に自生しています。 このように、何千キロメ-トルもはなれた別の大陸に、明らかに共通の祖先をもった非常に近い種類の植物が分布する例は 他にもたくさんあり、「隔離分布」として研究者の興味を引いています。そしてその成因につきいろいろな説が提出されていますが、 なかでも、非常に古い時代の赤道(古赤道)にそって広く分布していた植物が、地球の回転軸の変化、 大陸移動、気候変動などによって多くの場所で絶滅し、辛うじて生き残ったものが現在目にしているものだ という前川文夫説はなかなか説得力があっておもしろいと思います。

ユリノキ(大阪府立大学:2000.5.15.) 京都大学理学部属植物園にシナユリノキがあると図鑑に書いてありましたので、 何年か前に見に行ったことがあるのですが、残念ながら、樹形や葉の形などだけではユリノキとどう違うのかよく分かりませんでした。

 ユリノキという名前は属名をそのまま日本語にしたものですが、 葉の形からハンテンボクという名も付けられています。また英語の名前は tulip tree チュ-リップの木 といいますが、これは5月ごろに咲く緑色の花の形からきているようです(右写真:大阪府立大学(2000.5.16))