シャシャンボ  Vaccinium bracteatum

シャシャンボ(西武庫公園(尼崎市):2002.10.5)

シャシャンボ (西武庫公園(尼崎市):2002.10.5)

ツツジ科* スノキ属 【*APGⅢ:ツツジ科】

Vaccinium:古代ラテン語のvaccinus(牝牛) bracteatum:苞葉のある

シャシャンボはヒサカキ、アセビ、ソヨゴなどとともに大阪近辺の二次林にごくふつうに出てくるツツジ科の常緑樹です。5月頃、数cmから10cmぐらいの総状花序に白色の細長い壺型の花がたくさん咲き、また、秋には球形の果実が黒く熟します。同じ仲間で、こちらは落葉樹のナツハゼとともにかなり頻繁に出てくる樹木ですから、山の植物を勉強しようとする人は、是非知っていなければならない木です。ところが、慣れないうちは、葉や樹肌の似た他の常緑樹、たとえばヒサカキやアセビなどとの区別が難しく、初心者泣かせのところがあります。

しかし、この木には百発百中の鑑定法があって、これを会得するともう大丈夫、日当りの加減などで多少木の形や葉の形が化けていても確実に同定できます。その方法というのは、指先で葉の裏側の中肋をそっとなでてみることで、シャシャンボの中肋下面には蜜腺が変化したといわれる小さな突起が点々とあり、それが指先にすこし引っかかる感じになるので、これさえ確かめれば、シャシャンボだと自信をもっていうことができます(ヒサカキとシャシャンボの区別の仕方についてはヒサカキをごらんください)。

ところで、普通に見かけるシャシャンボは樹高3~4mのものが多いようですが、時々、幹も太く、高さも7~8mに達するものがあります。こんなに大きくなったシャシャンボの幹はやや赤褐色をおびた独特の色調をしており、林の中でも人の目を引きます。

もう、ずいぶん昔のことですが府立大学そばのニサンザイ古墳に入ったことがありますが、ここには大きなシャシャンボが何本もありました。また、何年か前、兵庫県西宮市内の保護樹林をいくつか案内していただいたことがありますが、確か、熊野神社だったと思いますが、平地にある古い神社の社殿そばに、思いがけず大きなシャシャンボが何本もあって、シャシャンボが必ずしも山の中だけの木ではないことを知り、驚いたことがあります。また、これよりもさらに数年前のことでしたが、意外なところとして、大阪市東住吉区の山坂神社に隣接した公園に、幹周り89cmのシャシャンボが1本ありました。通路の真ん中にあって根元が踏み固められたうえ、幹の上部が強い剪定を受けて切り飛ばされ、また、幹も傷付けられていましたので、その後、数年して見に行きましたらもう無くなっていました。少なくとも大阪の平地にあるシャシャンボとしては特筆すべきものだったと思い、残念な気がしました。

なお、このページの写真は2枚とも尼崎市西武庫公園で写したものですが、この公園には5、6本の太いシャシャンボがありました。ここは山林からずいぶん離れた場所にありますが、そばを流れる武庫川の古い堤防と思われる地形がのこり、そこにはアベマキ、ヒメユズリハ、ヤブニッケイなど自然植生と思われる大木があり、これらのシャシャンボも公園が出来る前からあった可能性が非常に高いと思います(右写真:シャシャンボの樹幹(尼崎市西武庫公園 2002.10.5))。