カナリーヤシ -A (フェニックス -A)  Phoenix canariensis

カナリーヤシ

カナリーヤシ (須磨離宮公園 1999.8.29)

ヤシ科* ナツメヤシ属 【*APGⅢ:ヤシ科】

Phoenix:不死鳥(フェニキア人などほかの語源説もあります)  canariensis:カナリア諸島の

大阪にすむわたしたちにとって一番身近なヤシ科の仲間はなんといってもシュロですが、シュロはあまりに身近にあるせいか、あまりヤシという感じがしません。これに対し、カナリーヤシはいかにもエキゾチックなヤシらしいヤシで、太い幹の先端に長く大きな葉を四方に広げています。3m以上もある大きな羽状複葉には先のとがったたくさんの小葉があり、切り口はV字型をしています。また、葉柄の付け根にある小葉はするどい針のようになっています。

一般にフェニックスと呼ばれているカナリーヤシは、その名のとおり北アフリカ西岸にあるカナリア諸島原産の大型のヤシで、耐寒性が比較的強いため、南ヨーロッパやアメリカなど、世界中の暖帯地方の都市公園や学校、街路などでよく植えられています。大阪でいえば、たとえば堺市の幹線であるフェニックス通りの分離帯にはたくさんのカナリーヤシが植えられており、中にはかなりの大きさになっているものもあります。大きくなったフェニックスの幹の上の方では、葉柄の付け根のところに鳥や風で運ばれてきた種子や胞子から発芽したシダや小さな木、草がたくさん生えていて、よくもこんなところにと思います。

フェニックスというのはアジア、アフリカの熱帯・亜熱帯に原産するおよそ17種を含むナツメヤシ属のラテン名で、たとえばシンノウヤシなど、鉢植え観葉植物として利用される小型のフェニックスもあり、単にカナリーヤシだけをさすわけではありません。しかし、カナリーヤシはフェニックスの中でも最も幹が太くなる種類で、幹の直径が数十cmから1m近くにまで達し、また、高さも日本では5~6m、熱帯地方では20~30mに達します。乾燥した亜熱帯地方での重要な食用作物であり、紀元前4000年ぐらい前から栽培されていたといわれるナツメヤシ (P. dactylifera) とともにフェニックスの代表といえるでしょう。

別記「カナリーヤシ-B(フェニックス-B)」の記事もご覧下さい。