ヌマスギ(ラクウショウともいう)は北アメリカに自生する落葉性のスギ科樹木です。 北アメリカでの分布域は、東海岸からメキシコ湾岸、ミシシッピー河流域となっていますが、生育立地は流れのある湿地や川岸の湿ったところなどで、 一年のうち数ケ月は水に浸かるようなところとされています。 円錐形の樹形や春の新緑、秋の煉瓦色の紅葉が好まれ、 また、湿地でなくてもよく育つので、 アメリカはもちろんヨーロッパや日本の各地に植えられています。
一年のうち数ケ月も水に浸かるような環境では、根の呼吸に必要な酸素が得られないため、
ふつうの樹木は生育できません。多くの植物はほんの数日間でも根が水に浸かって呼吸できなくなると、
非常に弱るか、ひどい場合には枯れてしまいます。それにもかかわらず、
ヌマスギがこのような酸素の少ない環境でも正常に生育し、
大きいものでは高さ50m、幹直径2mを越えるほど大きくなれるのは、
根の一部分がちょうど膝のようにまがって地面にあらわれ、
それが大きく発達して隙間の多い組織からなる膝根(しっこん:気根の一種)
を作るからです。根に必要な空気は、この気根を通して取り入れているのです(右写真:大阪市大植物園2005.5.5)。
ヌマスギはラクウショウともよばれ、落羽松という漢字が当てられます。 これは、短枝に短い線形の葉が2列にならんでつき、ちょうど鳥の羽毛のようにみえること、 秋になって紅葉が終わるとその短枝が葉と共に落ちてしまうことを表現したものですが、 マツとは全く類縁関係がありません。
ヌマスギに非常によく似た樹木にメタセコイアがありますが、
こちらは短枝が長枝に対生しており、長枝に短枝が互生するヌマスギとは容易に区別できます。
また、球果の種鱗がヌマスギではラセンに配列しているのに対し、
メタセコイアでは十字対生しています(右写真:ヌマスギの球果 大阪市大植物園 1999.8.14)。