モチツツジ  Rhododendron macrosepalum

(宝塚市武田尾:2000.5.19)

モチツツジ(宝塚市武田尾:2000.5.19)

ツツジ科* ツツジ亜科ツツジ属 【*APGⅢ:ツツジ科】

Rhodo=赤い色の+dendron=樹木 macro=大きい+sepalum=萼の

早春から初夏にかけて大阪近辺の山を歩いていてよく見かけるツツジに3種類あります。 コバノミツバツツジ、モチツツジ、それにヤマツツジです (この他、たいへん小さい葉と花をつけるシロバナウンゼンツツジ(R. serpyllifolium var. albiflorum) をみかけることがあります)。 この3種類のツツジは、花の咲きかたや葉の着きかた、葉の手ざわりなどで比較的簡単に見分けることができます。

早春、早ければ2月か3月ごろから、葉が展開するまえに紅紫色の非常に美しい花をつけ、 花が終わるころ、枝の先に3枚の輪生した葉を展開させるのがコバノミツバツツジ(R. reticulatum) です。

モチツツジのつぼみの腺毛(北山植物園:2000.4.29) 5月ごろから、うす桃色のやや大きな花をつけるのがモチツツジです。新芽やつぼみが白いネバネバした毛(腺毛といいます)で覆われており、 名前と実物がよくマッチしていて覚えやすい木です。コバノミツバツツジは完全な落葉樹ですが、 モチツツジは冬の間もかなりたくさんの葉が残り、「半常緑」といった感じになります。

一方、ヤマツツジ(R. obutusum) は赤い色の花をつけます。 常緑の葉は幾分細長い形をしていますが、コバノミツバツツジのように3輪生していませんし、 茶色の毛がありますが、モチツツジのようにネバネバした長い毛ではありません。

このように書きますと、全てのツツジ類の区別が簡単にできるように思えますが、 実はそうではありません。このような手掛かりで区別がつくのは極端に言えば大阪の里山を歩いているときだけで、 京都や滋賀の北の方へ行ったり、奈良の山奥へ入ったりしますと、よく似たものでも種類の違ったツツジがいっぱい出てきます。 このことは、図鑑のツツジのところに、何十という種類のツツジが記載されている事からもわかります。 とくに、枝先に3枚の葉を輪生させるミツバツツジの仲間は大変多く、〇〇ミツバツツジと名のついたものがたくさんあります。 また、街の中の公園や家の庭などにはヒラドツツジと呼ばれる大型のツツジ(常緑)のほか、サツキ(R. indicum) のいろんな品種が植えられています。 とくにヒラドツツジは、オオムラサキ(R. Oomurasaki)、リュウキュウツツジ(R. mucronatum) など多くの種類のツツジが交雑してできた園芸品種群をさし、 その類縁関係は明確ではありません。

写真:左から コバノミツバツツジ(阪市大・理・植物園:2000.4.16)、 シロバナウンゼンツツジ(神戸森林植物園:2000.5.4)、ヤマツツジ(西宮市北山植物園:2000.4.29)、ヒラドツツジ(大阪府立大学:2000.5.3)