ヤマツツジ  Rhododendron obtusum

ヤマツツジ(北山植物園2000.4.29)

ヤマツツジ(西宮市北山都市緑化植物園:2000.4.29)

ツツジ科* ツツジ属 【*APGⅢ:ツツジ科】

Rhododendron:赤い木  obtusum:鈍形の kaempheri:人名から

大阪府植物目録によりますと、大阪に自生が確認されているツツジ類は、金剛山に1株だけあるとされるミヤコツツジ(ヤマツツジとモチツツジの自然交雑種)をふくめ11種あるそうです。 しかし、ごく普通に見かけるものはそれほど多くなく、モチツツジ、コバノミツバツツジ、それにヤマツツジぐらいでしょう。

ヤマツツジは、ふつう、サツキに似た赤い色の花をつけます。葉の形も多少サツキに似て両端がとがった形をしていますが、 春に出る葉はサツキよりはかなり大きく、また、樹形も、渓流沿いの岩場などに生えるサツキが細かく枝分かれして背が低いのに対し、 枝分かれが比較的少なく、高さも1~3mくらいに達します。若枝には褐色の毛が密生し、また、葉にも褐色の寝た毛がありますので、 3枚の葉が枝先に輪生するコバノミツバツツジや、白い腺毛の多いモチツツジとの区別は容易です。

大和葛城山がヤマツツジの群生地として有名になり、花の時期にたくさんの観光客が訪れるようになったのはここ20~30年ぐらいのことではないでしょうか。 すくなくとも、わたしが学生だった頃はロープウェーもなく、山頂付近はススキの草原で、ここがヤマツツジの名所になるとは夢にも思いませんでした(右写真:大和葛城山のヤマツツジ 2003.5.18)

大和葛城山にヤマツツジが多くなったについては、山火事のためススキが枯れ、 かわってヤマツツジが一斉に勢力を伸ばしたからだと聞いた記憶がありましたが、 十数年前に信州で造園学会があったとき、当時東京農工大学におられた亀山章先生が、 《あそこのツツジは、昔、わたしが葛城山を調査した際、ススキの間に小さなツツジがいっぱいあるのに気がついて、 「このススキを刈ってやればツツジが大きくなって観光地にできますよ」と助言したのを、 地元の方々が忠実に実行されたからできたのであって、突然、ヤマツツジの群落ができたわけでは決してないのです》 と話してくれました。