キンカチャ  Camellia chrysantha

キンカチャ(長居植物園(大阪市住吉区):2015.4.2)

キンカチャ(長居植物園(大阪市住吉区):2015.4.2)

ツバキ科* ツバキ属(チャ亜属)【*APGⅢ:ツバキ科】

Camellia:人名(Kamel)から chrysantha:黄金色の花の

●別項「キンカチャ-2(2020.5.7掲載)」もご覧下さい。

中国の広西省南部、ベトナムに近い地方で黄色いツバキが見つかったという話を聞いたのは、私が私市の植物園につとめて2、3年してのことで、40年ぐらい前のことでした。ツバキやサザンカといえば、赤、白、ピンクの花しか思い浮かばない人間にとって黄色いツバキというのは、聞いただけでさまざまな想像をかき立てるものがありました。ただ、野生のサザンカやチャノキの白い花の中には、一部分、黄色みを帯びることがあり、黄色いツバキといっても、白い花弁がそこそこ黄色くなっている程度ではなかろうか、などと考えるのが精いっぱいでした。

キンカチャの葉

実際に黄色いツバキ、「金花茶」をみたのは、たしか、服部緑地の大阪府都市緑化植物園でしたが、花形はもちろん、その花弁の色が想像していたのとまったく異なり、鮮やかな光沢のある金色をしていたことには本当にびっくりしました。またその葉は、ふつうのツバキやサザンカと違ってかなり大きく、表面に強い光沢があり、葉脈が葉の表面で深くくぼんみ、葉の裏で突出していています(キンカチャの葉(長居植物園:2005.3.18))。印象としては、あまり目にする機会がありませんが、トウツバキに似ています。また、見方によってはふだん目にするチャノキに近いところもあり、その意味でも「金花茶」とはよくつけた名前だと思いました。

キンカチャの接ぎ木部分(長居植物園:2005.3.18) キンカチャが発見されたのは1965年とされていますが、発見が比較的新しいため、古い図鑑類にはこれに関する記載がありません。しかし、その後調査・研究が進み、現在では「小果金花茶」や「顕脈金花茶」など数種が種または変種レベルで区別されています。日本にこの仲間が導入されたのも比較的はやかったようで、種苗会社のカタログにもかなり前から載るようになりました。ただ、植物園で見る木も接ぎ木部分がひどくいびつになっているのをよく目にしますので、台木との相性に問題があり、栽培はかなり困難なのではないかと思います(右写真はキンカチャの接ぎ木部分(長居植物園:2005.3.18)。何しろあまり見ない植物で、手にとって詳しく観察する機会がなかったものですから、自分が一体何種類の黄色いツバキを見たのかさえ判然としませんが、葉の形や花の大きさなどから考え、少なくとも2種類は見ているはずだ、と思ったりしています。