カナクギノキ  Lindera erythrocarpa

カナクギノキ(金剛山:2000.7.19)

カナクギノキ(金剛山:2000.7.19)

クスノキ科* クロモジ属 【*APGⅢ:クスノキ科】

Lindera :人名から erythrocarpa:赤い果実

カナクギノキはかなり背が高くなるクスノキ科の中高木で、クロモジなどと同じ属に分類される落葉樹です。しかし、クロモジ属とはいうものの、樹形も葉の色や形もクロモジとはあまり類似点がなく、ちょっと異質な感じを受けます。その原因の一つは、葉が細長い倒披針形で数も多く、また、多少とも枝に沿うようについており、その点、かなりまばらに葉がつくクロモジとは明らかに違うところにあると思います。また、細い幹や枝が地際から出てくる、いわゆる株立ち型の樹形をとるクロモジなどと違い、1本の太い幹が直立し、枝と幹がはっきり区別できる単軸型の樹形をもつことも影響しているかもしれません。同じクスノキ科クロモジ属に属するヤマコウバシも直立する幹をもちますが、こちらの方は1枚1枚の葉が何となくクロモジなどと似ており、類縁関係を直感させます。

この木をみてどこが「鉄釘(かなくぎ)」なのかといろいろ考えたことがあります。幹は黄褐色で、何となく硬そうな印象を受けますから、この木を割ったり削ったりして丈夫な木釘をつくったのだろうかとか、冬芽がかなり大きくとがっていますから、その形から釘を連想したのだろうか、などと想像をたくましくしていました。しかし実際は、幹はもろくて弱く、とても釘をつくれるような代物ではないのだそうです。

実は「カナクギ」とは「鹿ノ子木(かのこぎ)」で、黄褐色の樹肌が不規則にボロボロはがれ落ち、その模様を鹿ノ子に見立てたものだそうです。つまり、鹿ノ子木がカナクギになり、さらに「ノキ」をつけ、「鹿の子木の木」となったというわけです。もっとも、鹿ノ子木という点では、おなじクスノキ科のカゴノキ(鹿子の木)の見事さにはとても及びませんが、カナクギが「かのこぎ(鹿ノ子木)」というのもなかなかおもしろい発見ではないでしょうか。