カゴノキ  Actinodaphne lancifolia

カゴノキ (箕面公園:2001.2.18)

クスノキ科* カゴノキ属 【*APGⅢ:クスノキ科ハマビワ(Litsea)属】

Actinodaphne:放射線状に葉をつけるDaphneに似た木 lancifolia:披針形葉の

木の中には、ある部分の特徴があまりに目立ち過ぎてそれに目を取られ、 そのほかの部分がどんなふうになっているのか、ほとんど記憶に残らないというものがあります。 カゴノキはさしずめそんな木の一つかもしれません。

カゴノキの樹肌(2001.2.18:箕面公園) カゴノキとは「鹿子の木」のことで、少し大きくなった木では樹皮が丸く斑点状に剥げ、 剥げた時期の違いによって斑点の色合いに違いがあって、 ちょうど子鹿のからだのようだというのが名前のいわれです(右写真:カゴノキの樹肌(2001.2.18:箕面公園))

わたしがカゴノキを初めて見たのは奈良公園での学生実習のときでした。 この木の見事な樹肌もようと、先生に教わった名前の的確さにこの木がいっぺんに好きになりました。 それからは奈良の山を歩くたびにこの木がどこかにないかとキョロキョロしながら歩くのですが、 太くて、樹肌が鹿の子もようになっているものがあればすぐ分かるのに、小さな木や若木を見つけることができませんでした。 それは、カゴノキはクスノキ科に属するものの、例えば葉がクスノキやヤブニッケイのような3行脈になっておらず、 また、クスノキ科特有の樟脳のにおいもそれほど強くないなど、決め手になる特徴があまりないのもその原因かもしれません。 8月に熟する赤くてきれいなカゴノキの実をみた人もそれほど多くないのではないでしょうか。

 カゴノキは箕面の山の中にもかなりたくさんあります。 分かり易い場所としては箕面弁財天の境内の滝道に面したところに2、3本、やや大きな木があります。 そのうちの一本のかなり高い枝の切り口から、高さ3、4メートルのイロハモミジが生えているのを I さんに教えていただきました(右の写真:矢印(2001.2.18。 残念ながら、この木はすでになくなっています。2014.4.27))。 このことは、このカゴノキの中心部は、かなりの大きさのカエデが根を張って何年も生きていけるほどに腐朽が進んでいることを示し、 こんなに腐りが入りやすいのなら材木としてはあまり役に立たないのではないかと考えさせられます。 しかし、いろんな本には、材は褐色ないし暗褐色を呈して硬く、床柱などの建築材や太鼓や鼓の胴、 小細工ものの製作などに用いられるとありますから、私が考えるほど役立たずではないのかもしれません。