カクレミノ  Dendropanax trifidus

カクレミノ(大阪府立大学:1999.8.3)

カクレミノ (大阪府立大学:1999.8.3)

ウコギ科* カクレミノ属 【*APGⅢ:ウコギ科】

Dendro : 樹木 + Panax : チョウセンニンジン trifidus :3裂した

樹木の名前には意表をついたものがあるものですが、カクレミノもそのひとつかも知れません。名前を聞いただけで姿が消えてしまい、なかなか見つけられないような気がします。本当はそれほど珍しい木ではなくかなりよく出合う木なのですが、あまり目立たない木で、おまけに葉の形に変異が多く、一度おぼえただけでは次への応用がききません。その点、実力どおりの名前を持った木と言えるでしょう。

カクレミノ:新梅田シティ(2006.7.9) カクレミノの葉は一本の木のなかで形が異なり、この葉は3~5裂しているかと思えば、別な葉はまったく切れ込みの無い形であったりして、一見しただけでは同じ木の葉とは思えないくらいです。ただ、詳しく観察すると、3本の葉脈(3交脈)が目立っていたり、葉のウラの葉脈がつくる模様がおなじであったりして、なるほど同じ木の葉だと納得できます(右写真:新梅田シティ(2006.7.9))。一般的に言って、若い木の葉は切れ込みが深く、老木になるにつれて切れ込みが無くなっていくようです。この点、科も違いますし、葉の形も大変違いますが、ヒイラギの葉の鋸歯(きょし)が若い木で特に目立ち、老木では鋸歯がなくなって、一見ヒイラギとは信じられない形になるのと似ています。

カクレミノはヤツデなどと同じウコギ科の常緑樹ですが、この仲間の植物は多くの場合、枝の先端の芽はそのまま止まってしまうか花になってしまい、新しくそこから枝を伸ばしてくることはありません。その代わり、枝の先端の少し後ろにある芽が伸び出して新しい枝になって行きます。こういう枝の出し方を「仮軸分枝」とよんで、枝の先端の芽がどんどん伸びていく「単軸分枝」と区別しています。機会があればヤツデなどの葉をかきわけて枝の出方を観察して下さい。