ヤツデ  Fatsia japonica

ヤツデ(1999.12.12:万博日本庭園)

ヤツデ (1999.12.12:万博日本庭園)

ウコギ科* ヤツデ属 【*APGⅢ:ウコギ科】

Fatsia:「八つ」のラテン語化 japonica:日本の

今年(1999年)は全般にかなり気温の高い年だったように思いますが、そんな中でも季節は着実に移り変わり、12月に入りますとケヤキやユリノキの落葉もほとんど終わり、 また、サザンカもすっかり咲きそろってしまいました。 そんな中で、他の樹木にまじってひっそりと植えられたヤツデが白い花を咲かせています。

ヤツデは文字通り「八手」で、大きな常緑の葉が手のひらのように7~9つぐらいに切れ込んでいることから名前がきています(しかし、8つに切れ込むことはありません)。 天狗(てんぐ)がもっている団扇(うちわ)はヤツデの葉でできているそうですが、 団扇にするには手頃な大きさなのかもしれません。テングノウチワとか、テングノハウチワという別名もこんなところからきているのでしょう。

ヤツデの花(1999.12.12:万博日本庭園) ヤツデの花を見ますと、小さな白い花がたくさん集まってゴルフボールのようなかたまりを作り、 そのかたまりがいくつか集まって円錐状の花序(花の集まった枝)を作っています。 この花の集まり(枝)には葉緑素がなく、しかも、ヤツデの幹の先端にできていますので、 幹はそこで一旦成長が止まります。新しく幹(本当は枝)を伸ばすときには、花序のつけねのところにある側芽が伸びてくるわけです。 このような枝の出し方、幹の伸ばし方を「仮軸分枝」とよんでいますが、 ウコギ科の他の樹木にも共通する特徴になっています。

ヤツデの花は虫媒花で、たくさんの昆虫が吸蜜にきます。集まってくる昆虫にはハナアブ、オオハナアブなどのほか、 オオクロバエ、キンバエなどもいます。ヤツデは同花受紛(一つの花にできた雌しべにその花の花粉がくっつく)を避ける仕組みの発達したものとして有名です。 花が開いたとき、花弁や雄しべは成熟していますが、雌しべはまったく未熟です。 だから昆虫がきて花粉を集めても、その時その花の雌しべが受紛することはありません(雄しべ期)。 3~4日後、花弁と雄しべが落ちた後雌しべが成熟し(雌しべ期)、他の花で花粉をくっつけた昆虫から花粉を受け取るというわけです。 ですから、一見すると雄花と雌花が別々についているように見えますが、実は両性花なのです。