ヒイラギ Osmanthus heterophyllus

ヒイラギ:1999.11.27(長居植物園/大阪市住吉区)

ヒイラギ (1999.11.27(長居植物園/大阪市住吉区)

モクセイ科* モクセイ属 【*APGⅢ:モクセイ科】

Osme:香気+anthos:花
hetero:同じでない+phyllus:葉

11月も下旬になりますとヒイラギの花が満開になります。 ヒイラギはキンモクセイと近い仲間でありながらトゲトゲの葉そのものが目立ってしまうため、 この花の本当の美しさを知らずにいる人が多いのではないでしょうか。 よく見ると、純白の花には何とも言えない清楚な美しさがあって、 ほのかな香りとともに捨てがたい魅力となっています。

ヒイラギの葉(1999.9.5:長居植物園) しかし、ヒイラギの特徴はなんといってもその葉の形にあります(右写真:1999.9.5:長居植物園)。 一枚の葉のふちに、左右対称に2~5対の鋭い鋸歯(きょし)があり、 その先端はトゲになっています。このトゲは、木が若いときには特に鋭く、 雑木林の林床を歩きまわっていて知らずにこの木の葉にふれ、思わずとびあがる痛さを感じる事も少なくありません。

ところが、ヒイラギの樹齢がすすみ、木が老木となるにつれてこのトゲも少なく、低くなっていき、 極端な場合、鋸歯が全くなくなってしまうことさえあります。このような鋸歯のない葉(全縁葉といいます)では、葉のサイズも随分小さくなっているので、 短い枝や葉一枚を見せられただけではなかなか見当がつかないこともあります。 そんな時は、葉が対生していること、葉の表面が暗緑色で光沢があるのに対し、 葉の裏はやや黄味がかった緑色で、緑色の点々が沢山あることなどでヒイラギだと見当をつけます。

ヒイラギに似ていますが、もっと大きな葉をつけ、10月ごろ、やはり純白の花をつける木が生け垣としてよく植えられています。 これは「ヒイラギモクセイ」で、ヒイラギとギンモクセイの雑種ではないかと考えられています。 また、クリスマスの飾りにつかう赤い実を付けたヒイラギは、セイヨウヒイラギといい、 イヌツゲなどとおなじモチノキ科の樹木(葉は互生)です。

なお、ヒイラギは他のモクセイ科の樹木と同じように、雌雄異株ですが、 実を付ける木は非常に少ないようで、目にする機会はめったにありません。 私が昔に見たことのある果実は小指の先ほどの大きさで、7月頃黒く熟していました。 その実から果肉を洗いながして種子を取りだし、すぐに蒔いたところ、 発芽は大変良かった記憶があります。 2枚の子葉の間から出てきた本葉は、とても鋭いトゲをもっていました。