少し前の1994年夏は、記録的な暑さと少雨を経験しました。そのこととの関係はよく分かりませんが、
その年は11月に入ってヒイラギモクセイの花が見事に咲きました。今年(1999年)もまた見事な開花を見ることができました。
ヒイラギモクセイの花は純白で芳香があり、大変美しいものですが、ふつうは花数も少なく、
また、葉のかげであまり目立たずに咲くので、今年の花がよけい目についたのかも知れません。
ヒイラギモクセイは庭木や生け垣などとしてよく植えられていますが、今までに結実した記録はありません。 また、その由来については、ほとんどの本に、ヒイラギとギンモクセイの雑種・中間種と「思われる」とか「考えられる」と、 きわめてあいまいな表現しかされておらず、雑種と断定したものはありません。
ヒイラギ、ヒイラギモクセイ、ギンモクセイ、さらにウスギモクセイの変種とされるキンモクセイをならべて比べてみますと、 まず、葉の形や硬さ、鋸歯の様子などからみて、ヒイラギとキンモクセイがもっとも遠くに位置することが分かります。 一方、ヒイラギとヒイラギモクセイは、葉の厚さ、裏面の色調、構造、鋸歯の形や大きさなどの点で類似点が非常に多く、 両者が近縁種であることは疑いありません。しかし、葉の大きさ、鋸歯の数、側脈の透視性(葉を光にかざすと葉脈が透けて見える) などの点では明らかな違いがあります。
ギンモクセイはキンモクセイに比べると鋸歯が大きく鋭いので、 その点ヒイラギモクセイに近いといえばいえるかもしれません。 しかし、葉の形や厚さが異なり、葉脈がギンモクセイでは(キンモクセイでも)表面でくぼみ、 裏面に突出しているのに対し、ヒイラギモクセイでは表面で少しだけくぼみ、裏面にはほとんど突出しないなど、 とくに際だった類似点は感じられません。
そもそも、中国西南部原産で、日本には雄株しかないとされるギンモクセイが、 中国本土には自生しないヒイラギとどんな場面で交雑したのでしょうか。 ギンモクセイが日本でもまれにしか栽培されていないこととあわせ考えると、 両種の雑種・間種とするには何となく釈然としないところが残り、 「~と思われる」という歯切れの悪い、あいまいな表現もやむを得ないことなのかも知れません。