エンジュ  Sophora japonica

エンジュ(大阪府立大学:2000.8.3)

エンジュ (大阪府立大学:2000.8.3)

マメ科* クララ属 【*APGⅢ:マメ科エンジュ(Styphonolobium)属】

Sophora:この仲間の観賞植物のアラビア名 japonica:日本の

エンジュには「日本の」という意味の種小名がついていますが、もともとは中国原産で、 日本へは古い時代に導入されました。中国名は槐樹で、出世の樹として中庭に植えられるそうです。

 エンジュはニセアカシアやイヌエンジュと同じ奇数羽状の複葉をもつマメ科落葉高木で、 この3種は良く似たところがあって、なれないうちは区別の困難なことがあります。 とくに花や実のないときには小枝の色や小葉の形や毛の様子などに注意しなければなりません。 しかし、夏の終わりから秋にかけてはエンジュ独特の形の実がたくさんなりますので、 区別は大変やさしくなります。

エンジュの果実(1999.10.9.:長居植物園) ほかの2種と異なり、エンジュの花は7~9月頃にかけて、大きな円錐花序に咲きます。花の色はクリーム色で、 花が終わりますとマメができてきますが、マメの形はニセアカシアやイヌエンジュのような扁平なエンドウ形のものではなく、 写真のように、丸い球や楕円体状のものが連なった念珠状になり、他の2種とは明らかに違います(右写真:長居植物園(1999.10.9))。  エンジュの果実には水分が沢山含まれ、マメが熟しても乾かず、サヤがはじけることはありません。 マメのサヤに含まれたねばねばした液体は石鹸の代わりになると書いてありましたので私もやってみましたが、 サヤが若いせいか、あまり泡立ちませんでした。

エンジュは薬用植物としても有名です。とくに花のつぼみを干したものは槐花 (かいか)とよばれ、 漢方で止血剤として使われます。槐花に高い含有率で含まれるルチンという色素は高血圧の薬を作る原料になります。 また、葉や樹皮、根などにもルチンその他の薬用成分がたくさん含まれています。 ただ、日本に植えてあるエンジュから薬を取るために花を集めたりすることはないようで、 槐花は中国から大量に輸入しているそうです。

シダレエンジュ(長居植物園(2001.8.11)) なお、エンジュにはシダレエンジュという品種があり、各地の植物園で見ることができます(右写真:長居植物園(2001.8.11))