針葉樹の仲間には非常にたくさんの園芸品種があって、しかもよく似たものに違った名前のつくことが多いので、 大体の見当はついても、きちんとした名前のわからぬものが少なくありません。 とくに、ヒノキとサワラの品種群には、名前も形態もそっくりなのがあり、正直いって自信をもって名前のいえるものはありません。 そんな中で、チョウセンマキだけは、だれでも、ほとんど間違いなく覚えることのできる木です。
チョウセンマキは朝鮮という地名がついていますが、朝鮮とは何の関係もなく、
箕面などでよくみかけたイヌガヤ(C.Harringtonia f.drupacea、
drupacea は核果をつけるという意味) の枝変わりから出来た園芸品種です。
イヌガヤの葉が2列にならんでつき、色もうすい緑色なのに対し、
チョウセンマキの葉は枝にらせん状につき、色も黒っぽく、おまけに樹形も株立ちのようになっているので、
この両者が同じ種に属するとは信じがたいくらいです。
しかし、チョウセンマキの枝からときどきイヌガヤとおなじ2列に並んだ葉をつけた枝がでる(先祖返りといいます)ので、
同じ仲間だとわかるのです (右写真:京都府立植物園(2000.4.2))。ただ、チョウセンマキが本来の姿でないせいか、チョウセンマキに花がついている例は、
まだ観察されたことがないそうです。
このように、同じ植物が全く違う形の葉や枝をつける例としてはイブキ (ヒノキ科イブキ属) の仲間が有名で、とくに公園や生け垣によく植えられているカイヅカイブキ(イブキの1園芸品種)では、 一本の木に鱗片状の葉をつけた枝と針状の葉をつけた枝が同居していることが少なくないので、 今までにご覧になったかたも多いと思います。