チャンチン  Cedrela sinennsis

チャンチン(大阪府立大学:1990.7.22.)

チャンチン(大阪府立大学:2000.5.15)

センダン科* チャンチン属 【*APGⅢ:センダン科】

Cedrela:シーダ(のような匂いのする) sinennsis:支那の

チャンチンという名前には音楽的な響きがあっておもしろいと思いますが、これはこの木の中国名「香椿」の中国読み(シャンチェン)に由来します。日本ではツバキをさす「椿」という字は、中国ではこの一字だけでチャンチンを意味し、中国の植物図鑑にはこのほか春芽樹、紅樹、椿樹の名もあげてあります。

チャンチンは新芽が赤くて美しく、東京や新潟、石川両県などでは植木としてよく植えられているそうですが、大阪では公園などに比較的まれにしか植えられていない、背の高い落葉樹です。まっすぐな幹が立ち、大きいものでは直径80cm、高さ20~30mにもなるといわれており、また、長さ30~50cmの大きな羽状複葉がついていて、一見したところ、ニガキ科のシンジュに似ています。しかし、シンジュの小葉は長卵形ないし卵形披針形で先端は鋭くとがり、基部は丸くて1、2の鋸歯があり、そこに明らかな腺体があるのに対し、チャンチンの小葉は卵形ないし長楕円形で基部に腺体がありませんから、小葉をよく見れば両者の区別は容易です。

チャンチンの樹幹チャンチンの彦生えチャンチンの果枝チャンチンの種子
写真左から:チャンチンの樹幹(万博記念公園自然文化園:2011.10.8)、チャンチンのひこ生え(同)、チャンチンの果枝(大阪市中央区靫公園(2013.1.3)、チャンチンの種子(同))

また、幹のようすもかなり違っていて、シンジュでは樹肌は平滑で樹皮がボロボロはがれ落ちることはないのに対し、チャンチンでは樹皮が縦に細長い短冊状にはがれ落ちますので、ここに注目しても区別ができます。また、チャンチンの根系からは小さな苗がいっぱい出てきて、木のまわりにたくさんのひこ生えがあることも大きな特徴といえるでしょう。

わたしは匂いがよく分からず、自分の経験としていえないのですが、チャンチンには花や若い葉に独特の香りがあり、「香椿」という中国名や、Cedrela という属名にその特徴が表されています。

中国では新芽を好んで食べるそうで、日本でも宇治の黄檗山万福寺の普茶料理に使われるそうなので、食べた経験をお持ちの方もあるかも知れません。