アスナロ  Thujopsis dolabrata

アスナロ(観心寺(河内長野市):2005.1.26)

アスナロ (観心寺(河内長野市):2005.1.26)

ヒノキ科* アスナロ属 【*APGⅢ:ヒノキ科】

Thujopsis:クロベ属(Thuja)に似た  dolabrata:斧状の

アスナロはアスヒ、アテ、ヒバなどとも呼ばれる日本特産の針葉樹で、大型の鱗片葉をヒノキと同じように十字対生させており、表面は緑色、裏面には白い気孔帯が目立ちます。大阪でも公園や植物園などにときどき小さな木が見本的に植えられています。アスナロという名前は、ヒノキに較べて性質がやや劣り、明日はヒノキになろうという意味だといわれています。芭蕉の俳句にも「さびしさや花のあたりのあすならう」としてでているそうです。

大阪府植物目録によりますと、アスナロは大阪府下でまれに産し、その採集地点として本山寺、和泉葛城山、金剛山などいくつか記載されていますが、金剛山以外のものは植林されたものだろうと注が付されています。

わたしがはじめてアスナロを見たのは、たしか学生時代に河内長野の岩湧寺でだったと思います。故・三木茂先生の学生実習だったか、先生主宰の観察会だったか記憶は定かでありませんが、岩湧寺の境内に案内してもらったとき、大きなアスナロの木のそばで葉の特徴や、枝が地面に接したところから発根する性質(伏条性)を持つことなどを教わりました。その後2、3度、岩湧寺へ立ち寄り、その木のそばへ行って観察会で教わったことを復習したりしていましたが、いつのまにか足が遠のき、その木の場所も分からなくなってしまいました。記憶ではかなり大きな木だったので、府の天然記念物に推薦できるかも知れないとおもい、20年ほど前、府の文化財保護課の人たちと岡中のイヌマキを見に行ったついでに立ち寄り、その木を探しましたが、結局、見つけることができませんでした(写真左:神戸森林植物園(2003.8.30)、写真右:観心寺(河内長野市):2005.1.26)

アスナロにはヒノキアスナロという変種があり、東北地方や石川県などでは重要な林業樹種の一つとなっています。ずいぶん昔に、下北半島恐山近くのヒバ(ヒノキアスナロ)の純林を見学する機会がありましたが、非常に背の高い林で、大阪でもっていたアスナロのイメージとはかなり違いました(ここの森林は、台風被害を機に伐採され、現在、壊滅しているそうです)

アスナロもヒノキアスナロも耐水性が大変高く、また腐りにくい材として有名です。