今回のXXXツアーで、川崎チッタとともにオールスタンディングでの会場。それを狙い、週末ということもあって、東京や鹿児島から来た人もいた。
12月の札幌はすっかり冬。開場の20分前に整列が始まったときには小雪が舞い、オーバーをロッカーに預けるタイミングがなかなか難しかった。そんな苦労の甲斐あって最前列正面右寄りをキープ。個人的には、夏の川崎に続き2度目。けれども開演までの1時間は長い。トイレには行けないし、ビールも飲めない(しかも売り子が目の前を通る!)。最前列を取るのはダテではないのだ。
今回のステージは、ごくシンプル。バックに飾りもなく、意表を突いた仕掛けもない。時間になるとメンバーも自然に登場した。 若干髪を切った(『風の歌』のころくらい?)田島もTシャツ(ディア・ヴァージョン)にジーンズという、また普段着の様な格好。
しかし注目の1曲目は、絶対に予期できなかった。なんと新曲。インディーズのころならともかく、こんなのはじめてではないのか!? なんの MC もなく、だれも知らないはずなのに興奮のるつぼ。ダンサブルな曲で掴みもバッチリ。そしてなだれこむように次の曲。身体は曲を知っているのだが、頭に曲名が浮かばない。ようやく「灼熱」とわかり、'97年のクアトロの熱狂が電撃のように身体を走っていった。
「新曲です」という短い紹介でわれに帰ると、木暮さんが重いリフを刻み始めた。歌メロはいつものポップ調なので、なんとなくブラック・サバスが思い起こされた。レコードで聞くとどんなだろうか。
最前列のため声がよく届く。思うに、女声よりも男声の方が田島の反応がいい。 自分が「ぐおおお!」と叫ぶと(なんか言えよ <オレ)、結構反応してくれた。「燃えろぉ!」と叫んだら、「燃えてるよ!」と言い返された。田島が客席に水を撒いたとき、そのポーズがあまりにイヤラシイ格好だったので「きたねーぞぉ!」とツッコミを入れたら、うれしそうに笑ってこっち指差してくれた(^^)。
続いて「ドラキュラ」。流れがいい。パーカッション抜きなせいか、『XL』のものとは微妙にアレンジが異なっていたか。だが「インソムニア」は前回ツアー的。ここ最近、毎回奔放なアレンジで楽しみだった「ブロンコ」も、今回は『XL』と同じだったのが残念。
「羽毛」は、前回までのソウル風アレンジでも小西ヴァージョンでもなく、オリジナルに近いアレンジだった。だがラストでやってくれた。バンドがブレイクして静まったところに、「ぅあ愛してるよ はにぃぃぃぃ!」と田島の絶叫! それを5回も6回も。この暑さ、バカさ加減、これを見にライヴへ来ているのだ!
ここで田島が動いた。ステージから最前列の柵に足をかける。ダイブの距離を測っているのか!?と見守っていたら、なんと客席から女の子をステージに上げたのだ。伴奏に任せていっしょにチークダンスをし、しまいにはベットへ運ぶように抱きかかえた。この僥倖に与かれたのは二人(もちろん女性)。オリジナル・ラヴファンの全女性が嫉妬すること必至だが、一番信じられなかったのは当の本人だったのかも。終演後に見かけたら、心あらずといった感じだったし。ちなみに、個人的にちょっと期待したのだが、残念ながらギターを弾かせることはなかった(笑)。
少しスローなこのあたりになって、ようやく木暮さんのギターのよさに気付いた。少し後ろに下がり黙々とリズムを刻んでいる。派手なソロ・ギターも悪くはないが、着々と自分の仕事をこなしているリズム・ギターというものは実にかっこいい。次の「接吻」でも相変わらず素敵で、つい「ナイス・ギター!」と叫んでしまった。(田島が嬉しそうに笑っていたけど…まぁいいか^^;)
「貞に捧げる!」と MC が入り「STARS」。ライヴではまさに音の塊と化す。とくに変わったアレンジでなくても、いや、ないからこそ満足できる曲だ。
続いて「ミッドナイト・シャッフル」。歌い出しのソロ部分は、ディストーションのないエレキ一本。田島のエモーショナルな歌は、本当にすごい! 歌の力だけで聴かされたようだった。途中の L?K?O のサウンドのはさみ方も、申し分なし。
今回は、ホーンが松本さんのみでしかもシンセを兼任、さらにパーカッション抜きという比較的シンプルな編成。音の厚みが気になるところだが、田島&木暮のダブル・ギターがかなり存在感があった上、小さい編成な分だけ個々のパートがよく聴こえた。レコードでは音の厚い「黒猫」を演奏したが、不足を感じさせることはなく、アコーディオン抜きのソリッドな感じは、かえって面白く聴こえた。ここでは間奏で、田島のフラメンコ・ダンスもあり。おバカでたまらなくカッコいい。
続いて、田島の長く早口な MC により、OFFICIAL ページで予告されていたカヴァー曲が紹介された。「E」ではじまるミュージシャンの曲、というヒントだったらしいのだが、答えはエルヴィスだった。以前よりカヴァーしていた "That's All Right" ではなく、"Suspicious Mind"という曲。明るく軽快な曲なロックンロールナンバーだった。恥ずかしながら元曲を知らないのだが、かなりアレンジしてあるような気がした。ラストを何度もブレークして客に跳ばせ、すごく楽しかった。パーティパーティ。
今回「大車輪」は後半なのが新鮮。ライヴ向きなので盛り上がれるのだが、アレンジが毎度ながらだったのが残念(この曲、ヒネると案外おもしろいと思うのだが…)。
「The Rover」も、アレンジはいつもながらだったが、ステージは熱かった。2番のあとの長い間奏で、田島&木暮のツインギターが、「突撃!」とばかりにギターを銃のように構えた。そして衛兵交代のように、曲に合わせてポーズを取る。さすが長年の親友、ナイスコンビネーション。今回のツアーのハイライトと言ってもいいだろう。
締めは「フラッシュ」。出だしと刻み方が「ラ」だったように思う。
残念ながら、アンコールを求める声は熱狂的というほどではなかった。うーん、北海道は今年唯一の公演のはずで、見たところ客の入りも悪くはなかったのだが。そういえば最前列なのに、後ろからも押されることもなかったし…。
そしてアンコールは、重いギターの「ティラノ」。ずっと振り続けてちぎれそうに痛む首をさらに振る。間奏の重さがよかった。ラストは久々の「BODY FRESHER」。これがアンコールなのは珍しいような。メンバー紹介は、またオリジナルな曲に載せながらだった。