ORIGINAL LOVE presents 《BURST!》

第105回 (2001年3月29日放送)


<オープニング>
T「今日は年度末という事で締めに相応しい方、山本ムーグ氏が久々に登場です。」


M-01.地球独楽/オリジナルラヴ
<近況>
 最近ね、先週もちらっと話したんですけど、僕は1個決意した事がありまして。
それは何かと言うと『サックスを吹こう!』と思ったんですね。何て言うのかな、
皆さんの前でサックスを吹いてる姿が自分のビジョンでパッとこうよぎったんです
ね。で、次の日、丁度テレビの収録のリハーサルがありまして、オリジナルラヴの
キーボードとかバイブとか、まあホントはサックス吹きなんですけど、松本さん…
松っちゃんに『俺サックス吹きたいんだけど』って言ったら『おう!いいじゃん!
俺の古いヤツじゃあ貸す!』って、貸してもらう事になりまして、今度借りに行き
ます(笑)。でね、まあ僕のサックスのイメージなんですけど『ジョンルーリー』
ですね。ジョンルーリーってラウンジリザースというニューヨークのパンクっぽい
ジャズ…ジャズっぽいパンクと言いますか、どっちにしろ偽物のジャズとか言われ
たりしましたけど、凄い僕大好きなバンドですね。ストレンジャーザンパラダイス
とかああいった映画にも出てますけどいい男なんですジョンルーリー。彼のあのサ
ックスのイメージがあって、あの線で行けたらいいんですけどダメだろうなと思っ
て。ジョンルーリーは上手いんだかヘタなんだかわかんないんですけど何か独特の
男気っつうのかハードボイルドなソロ…ソロっつったらいいんですか?世界があっ
て。ああいうのが吹けたらいいんですけど、まあ今からこの年で始めるんでね難し
いかって事で。じゃあ『ジェームスホワイト』、この番組でも散々かけましたけど、
みたいなのはどうだ?と。ジェームスホワイトになると俄然若返る訳ですけど何か
コンセプトが(笑)。ジェームスホワイトも老けてるんだか老けてないんだかわか
んない、上手いんだかヘタなんだかわかんないけど、何かこう勢いが凄い、カッコ
イイという(笑)ただ首からサックス下げてるだけでカッコイイっていう。何かね
『あの線もありか?!』と思ったりしつつ…サックスを今年はちょっと吹いてまず
音が鳴るぐらいまで河原とかで練習しようかなーと思ってる今日この頃でありまし
て。『誰かサックス新品買って下さい』と(笑)そんな感じなんですが。


<今週のリコメンド>
 あんまり話題が膨らまなかったところでですね(笑)、今日はその『ジェームス
ホワイト』何回かかけましたけどこの番組で。その12インチ『コントート・ユア・
セルフ』のB面の曲を聴いて下さい。


M-02.トロピカルヒートウエーブ/ジェームスホワイト


 はい。カッコイイ曲ですね。


<談話室バースト!>
ゲスト:山本ムーグ 以下:M

T「今日のお客様は、最近だと『AJICO』のポスターを作ったんですね?でお馴染み
 のグラフィックデザイナー、DJの山本ムーグさんです。どうも。」
M「こんばんは。」
T「AJICOのあれやってたんだね?」
M「やってたっていうかね、あれはUAがほとんど考えて『こういう風にして!』っ
 ていうのをマックで作ったって感じで。」
T「へえー。あれ面白かったよ、何か顔と果物がなかった?」
M「そう、それそれ。」
T「タワーで貼ってあったヤツ。」
M「そうらしいね(笑)。」
T「へえー。いや、そういう感じで(笑)。」
M「はい(笑)。」
T「他何やってたんですか?最近。」
M「何にもしてなくて、バンドもちょっとお休み中で相変わらず。」
T「そうだよね。」
M「丁度正月とか挟んだじゃないですか、それで何か新しい事しようと思って…」
T「(笑)」
M「(笑)。そう言えばレコードとか買いに行ってないなーとDJなのに。」
T「(笑)。全然買ってなかったでしょ?」
M「うん。ちょっと反抗してたとこもあんだけどこのDJブームにね。」
T「あー。」
M「でもレコード買いに行こうかな!と思って。でも何かもう普通にCISCOとか行く
 の嫌だなと思って、何か全然違うジャンルを聴こう!21世紀だしと思って。そし
 たら、クラシックっていうの俺全然聴いてなかったなと思ってさ。」
T「(笑)」
M「うん(笑)。それで全然わかんない訳。バッハとベートーベンと、名前は知っ
 てるけどさ、それがどういう関係にあるかとか。でね、ちょっと勉強しようと思
 って(笑)。」
T「(爆笑)突然ね。」
M「でまあ、そのきっかけになったのは、実は坂本龍一の『B-2UNIT』ってソロアル
 バムがあるんだけども。」
T「あー。もう名盤ですね。」
M「それをちょっと久々に聴いて。で、坂本龍一ってほらバリバリクラシックの人
 だったんでしょ?」
T「そうですね。」
M「芸大とかでさ。」
T「今もそうですよね基本的には。」
M「そうみたいですね。」
T「坂本龍一さんはね、間にいるからいいんですよあの人。」
M「や、それでその『B-2UNIT』は聴いてたんだけど、この背景にはきっとクラシッ
 クがあるんだなと思って、それ何だろう?と思ってさ…何したのかな?最初。」
T「(笑)」
M「最初街のCD屋に行った訳。でもさ何か『初めてのクラシック』とか『安らぎの
 クラシック』とか…」
T「(爆笑)」
M「いろいろあるじゃん?『モーツアルト100』とか、ピンとこねーなとか思って。
 で、何か1個面白いのがあって『リッチーブラックモアが選曲したクラシック』
 っていう(笑)。」
T「(爆笑)。あ、クラシック好きそうだもんねー。」
M「ハードロックの人はやっぱりクラシックとか好きだったり。」
T「そう、好きだよね。バロック調の何かさ。」
M「でも何かこれちょっと買いたくないなーと思ってさ。」
T「(笑)」
M「それで…図書館行ったんだ。」
T「あー。はーはーはー。あるね。」
M「クラシックってほら図書館にいっぱいあるじゃん?で、本もあるじゃん?何か
 『クラシック名曲』みたいな。そしたらね、『ドビュッシー』だ!って事に気づ
 いたんだよ。」
T「(爆笑)。そうだよだから坂本龍一さんはドビュッシーとかラヴェルとかさ。」
M「そうでしょ?」
T「印象派から近現代って感じですよね。」
M「みんな知ってるんだねやっぱり音楽やる人はクラシックの事。」
T「それはだって僕ドビュッシー大好きだったもん。」
M「あ、そう。」
T「うん。高校の頃なんてもうギターでコピーしてましたよドビュッシー。」
M「ホント?」
T「そうそう。ドビュッシーってさ、今のほらポップスとかの元なんですよ。」
M「そうなんだ。」
T「あのーメジャーセブンスとかあんじゃん?」
M「そうそうそう。」
T「だからあのコードはドビュッシーから始まって、ナインスとかさ。だからポッ
 プスっぽいんだよドビュッシーって。」
M「とにかくめちゃくちゃニューウエーブなもんだった訳ですよ。」
T「(笑)」
M「当時。俺が調べたところによると。」
T「あーなるほどね。」
M「メロディーとかそういんじゃなくて、何かこう雰囲気だけで。」
T「あーそうですね。ホールトーンスケールもそうだしさ。」
M「うん。『これだ!』」
T「(爆笑)。あ、そうなんだ。へえー。」
M「うん。まあ正月ってのもあったし、割とこう今まで繋ぎながらレコードとか聴
 いてたんだけど…拭いたりしてさレコード。」
T「(爆笑)」
M「バチッとこうかけて10分なり何なりじっとして。最初の頃は聴き方がわかんな
 かったんだけどねクラシックっていうもんが。リズム無いしさー。」
T「あー(爆笑)。」
M「もうBPMとか無いじゃん何か(笑)。」
T「へえー(笑)。大体ピアノでしょ?ピアノソナタとかピアノの曲じゃないの?
 ドビュッシーの。他も入ってるの?アンサンブルとか。」
M「何かね…そのいろいろ調べて、その印象派の画期的な作品と言われた、午後の
 牧神のナントカっていう…何っつたかなぁ…すぐ忘れちゃうんだけど…ナンチャ
 ラアプレミディっていう、それはフルートとか入ってましたけどね。」
T「ほおー。」
M「それでこう本とか読んで…で、図書館で大体わかった訳大まかに、自分の欲し
 てるモノが何かっちゅーのは。」
T「はあー。」
M「そのドビュッシーとかその辺のフランスの、まあエリックサティとか、ミヨー
 とかプーランクとか、何かいたらしくて。」
T「あー。でも何か懐かしいね。」
M「(笑)」
T「それ坂本龍一さんとかあのYMOの頃さ…」
M「言ってた?」
T「うん、流行ってさ。で、あれですよ、その辺とかよく…」
M「言ってた?」
T「言ってましたよ。よく再発とかされてさ。」
M「あー。そうだったんだ。」
T「うん。」

***

M「でも個人的にはメチャクチャ盛り上がってる訳全然知らないジャンルだからさ」
T「あーなるほどなるほど。」
M「次は、よし!アナログ買いに行こう!っつって。」
T「(笑)」
M「(笑)。絶対だからクラシックのマニアの人があって、やっぱアナログにこだ
 わる人とかいるんだろうと思ってさ。それで久々にレコードマップとか見てさ、
 やっぱ!お茶の水なんだよ。」
T「(爆笑)」
M「なんか(笑)。」
T「なるほど神保町、お茶の水。」
M「渋谷とかじゃ全然無い訳。」
T「無いよね。」
M「店の名前とかも『ハーモニー』とか。」
T「(爆笑)」
M「それで、行ったんだー土曜日かなんかに。地下鉄乗って。」
T「へえー(笑)。」
M「凄いね!DJなんて1人もいないよ?」
T「そりゃそうですよ(笑)。」
M「それがまず嬉しくてさ(笑)。何か頭の良さそうな人がいっぱいいてさ。」
T「(爆笑)」
M「おじいさんとかこうやってレコード見てるんだよスコスコスコとかいって。」
T「へえー。」
M「とにかく全然っ!わからん、何がどこに置いてあんのか(笑)。」
T「(笑)そりゃそうだよね。」
M「東欧のレーベルとかさ。でもジャケは凄いいいなーと思って。まあ貴族の音楽
 だからね。」
T「(爆笑)」
M「(笑)。王様とか聴いてた訳じゃん。」
T「あー、まあね、うん(笑)。」
M「何かこう…ボックスセットとかさ(笑)。」
T「(笑)。ちょっと品のいい感じでしょ?」
M「うん。凄いなーと思って。でもわかんないから3週間ぐらい通った。」
T「あ、通ったの?凄いすね。へえー。」
M「何か最初こうバン!とか行ってさ、いきなり『ナントカ下さい』っていうのも
 何か違うかなと思って、ちょっと勉強しなくちゃいけないなと。」
T「パーッと見てね、うん(笑)。」
M「3回くらい行くと向こうもちょっと話しかけてくれたりもして。」
T「はーはーはー。え?何話すの?(笑)」
M「だから最初はドビュッシーとか印象派をちょっと聴いてたんだけど、やっぱり
 何かね、印象派って現代音楽の始まりみたいなところあったみたいで…」
T「そうだね。」
M「結局現代音楽の方に流れてったんだけど。」
T「うんうんうん。なるほど。」
M「だからそのいわゆる電子音楽とか、そういうのもクラシックの店に売ってたり
 するんだよね。」
T「売ってるよね。」
M「で、今まではこうテクノとかそういうののルーツミュージックとしてDJショッ
 プとかで探してたんだけど、何かそういうクラシックとかがいっぱいあるお店、
 お茶の水とかの、バッ!と抜いたら、電子音楽♪ピューーッ!とか出てきたら
 すんごいビックリしない?」
T「(爆笑)」
M「うお〜〜〜!みたいな(笑)。」
T「あーでもね、カッコ良かったりすんだよね。あとあの何だっけな?サックスだ
 けでやってるクラシックとかあったりして、それ松っちゃん持ってて聴かしても
 らったりすんだけどさ、すげーカッコイイよ!」
M「いいよね。」
T「もの凄い新鮮なの(笑)。」
M「何かだからね、自分でもバンドとかやってんだけど、じゃあ次クラシックやる
 か?っつーとやんないんだよ別に。」
T「まーやらないよねー。」
M「だけど何かそういう場所とかの感じとか、こういうレコードマニアの人がいる
 んだとか、何かこうソサエティーとかあるじゃん?何となく。」
T「あるある(笑)。あとバレエとか見に行っちゃったりとかさ。」
M「うん。そういうのをちょっと垣間見て。それでこの間行ったレコード屋が究極
 だったんだけど、何かレコードマップ見てたら神田に1個レコード屋があって。」
T「神田!」
M「『ユニバーサル商会』とかそういう名前なの(笑)。」
T「(笑)。神田ってのもシブイ場所ですね。」
M「でしょ?で、行ったのよ電車乗ってさ、こんなとこレコード屋あんのかなー?
 って歩いてたら大手町の方で。」
T「ビジネス街?」
M「そう。お役所のデッカイ建物とかあってさー。」
T「あんなとこにあんだ(笑)。へえー。」
M「で、やっぱわかんなくて電話したんだけど、そしたらちょっと入った所の2階に
 ありますって。で、行ってガチャっと開けたら…おじいさんが2人いんの(笑)」
T「(笑)」
M「何だろうな〜…ちょっと区役所みたいな感じ?」
T「(爆笑)」
M「何か書いてんだよ物とか。」
T「はあー公務員っぽいんだ(笑)。」
M「まあ学者っぽいようなおじいさん。」
T「なるほど。カッコイイ。」
M「それでクラシックと現代音楽がちょっとあったんだけどアナログもあんの結構。
 で、アナログこうやって漁ってるじゃん?シーン!としてんだけどさ(笑)。」
T「音鳴ってないんだ?」
M「鳴ってないんだよ!」
T「(爆笑)。レコ屋なのに音が鳴ってない。」
M「で、客は誰もいない訳よ当然。平日の夕方でさ。」
T「カッコイイなあ。ヤバイね。もうそれだけで現代美術だね(笑)。」
M「で、見てるじゃん?そのレコードが異常にキタナイの。」
T「(爆笑)」
M「ホコリだらけなのよ(笑)。メチャクチャ放ったらかしてあるって感じで。」
T「はあー。」
M「で、ちょっと見てたら凄い手が汚くなっちゃってどうしようかな?と思ったら
 その1人のおじいさんが『あのこっちで手洗って下さいね』ってトイレに連れて
 ってくれて(笑)。」
T「(笑)手を洗う場所へね。」
M「手洗ってまた見てたら、日本茶がコトっとか出て(笑)。」
T「(爆笑)」
M「普通そんな所ないでしょ?(笑)」
T「すごーい(笑)。」
M「『ここ置いておきますから』なんつって。」
T「へえー。いいじゃん。もうさ、それほとんど無形文化財みたいなさ。50年ぐら
 い前の中古レコード屋が現存してるっていう。」
M「そう。で、実際そうだったのよ(笑)。」
T「あ、そうなんだ!」
M「そこに置いてあるアナログはいくらぐらいするんですか?って訊いたら、2700
 円かなんかなのね全部。」
T「全部?!」
M「全部値段一緒っておかしいでしょ?」
T「すーごーい!ヤバイねそれ!」
M「うん。そしたら、それ中古盤じゃないんだよ。」
T「(爆笑)」
M「40年ぐらいそこに置いてあるんだよ(笑)。」
T「マジ?(爆笑)」
M「マジマジ(笑)。だから中はピカピカなんだよもう。外はホコリだらけなんだ
 けど。」
T「へえー!新譜だったんだね。」
M「新譜っていうかデッドストックってヤツ?全部が。」
T「あーーへえーー。じゃ全然キズが無いっていうか?」
M「無い、キズが。」
T「(爆笑)」
M「で、何か言ってんのよ『うちもねードルとかが200円とかの時代でしたからね』
 って。」
T「360円でしょ?きっと(笑)。」
M「そうだよねー40年前だったらねー。」
T「40年前だったらまだ通貨がほらあれんなってない固定の時だったでしょ。」
M「『マルクも高かったし』とか言って。」
T「(爆笑)」
M「『だから値下げできないんですよ』って言っててさ。」
T「(爆笑)関係ねーっつの。」
M「すっごいよね。」
T「何でだ?って(笑)。」
M「選んでる時も…より年を取った方のおじいさんが先に帰っちゃったのね。」
T「あー、疲れちゃったのかな。」
M「何か知らないけど。で、若い方のおじいさんが残ってて現代音楽の事訊いたら 
 『いやー私はちょっと詳しくないんですよ』『あ、じゃさっきのもう1人の方が
 詳しいんですか?』って言ったら『いや、あれ親父ですから』、親子だったんだ
 ね(笑)。」
T「(爆笑)」
M「で、買って。レコード袋とか今いろいろあるじゃん?」
T「買ったの?(笑)」
M「うん。2枚買ったんだけど、入れる袋が茶封筒みたいなの。あれにユニバーサル
 なんとかって書いてあって。」
T「へえー。カッコイイじゃん。」
M「でもさー、そんなレコード屋初めてでさ。」
T「僕も行ってみたいですよそれ。」
M「でしょ?ちょっと。」
T「うんうん。でも笑っちゃいけないんだよね?(笑)」
M「笑っちゃいけないっていうかさ(笑)、別に笑ってもいいかもしんないけど、
 いい人だよ凄く。」
T「あ、そう。へえー。すげえー。」

***

M「それでは坂本龍一の『ザットネス&ゼアネス』です。」

M-03.ザットネス&ゼアネス/坂本龍一

T「懐かしいですねこれ僕聴きましたよ昔。」
M「ねー。」
T「うん。今聴いてもいいね全然。」
M「歌ってるってのがいいよね(笑)。」
T「そうね(笑)。」
M「あとねこれ最近図書館で読んだ本で知ったんだけど。あれなんだって、全共闘
 ん時に火炎瓶とか投げまくってた時に、坂本さんが、何だろ…詳しい事忘れたけ
 ど…機動隊とぶつかってる時のめちゃくちゃな風景の一瞬が凄い綺麗に見えたん
 だって。」
T「へえー。」
M「何か『美しい』みたいなその瞬間の風景が。何かそういう歌詞なんだよ確か。」
T「あ、そうなんだ。火炎瓶が?」
M「火炎瓶だったかもう忘れちゃった。?T?何かデカダンスな。割と。」
M「うん。それがねその戦ってる所が『美しいなあ』という風に見えたんだって。
 その風景が。」
T「はーはーなるほど。」
M「スローモーションとか何かそういう歌詞が入ってたような気がする。」
T「へえーなるほどね。坂本龍一さんってさ、あのー僕はだから畑が違い過ぎても
 う何とも言えないっていう感覚。」
M「(笑)」
T「坂本さんに関しては。」
M「俺も知らないんだけどさ(笑)。」
T「うん。だから何も言えないっていうね。全然違う所の人だなって気がしてさ。
 だから一緒の事やろうとしても無駄だっていうか。」
M「うん。まあねー。」
T「(笑)」
M「この曲とかも何かそんなマロニエの葉が…冬の、なんか…」
T「(爆笑)何だ?マロニエって!」
M「わかんないけど(笑)。」
T「何ですか?マロニエって。」
M「いや、俺のクラシックはそこから始まった訳です。それで何かお茶の水とか行
 くと買ってたね。」
T「うん。でもさほら、YMOだジャパン、デヴィッドシルヴィアンとかさ、あの頃の
 時ってエリックサティとか聴いてさ、もうウォークマンでエリックサティ聴いて
 完全にハマっちゃってるヤツとかいてさ。」
M「あーなるほどね。」
T「それでデザイナーズ着て。あーいうの俺大っきらいだったな(笑)。」
M「『何でデザイナーズ買えるんだろ?こんな高い服を』と思って。」
M「デザイナーズ…」
T「うん(笑)。だけどエリックサティとか好きでしたよ凄い。パンクとか聴きつ
 つそういうのも聴いたりしてましたよね。」
M「何か反動だと思うんだ要は。今って割とほら、音楽がストリートベースになっ
 てから随分年月経つじゃないですか。『B-BOY』とか言ってさ。」
T「うんうん。」
M「それでこう街でループ音楽多いじゃないですか。」
T「そうね。僕がドビュッシーとかに入ってったのはね、ブライアンイーノがララ
 ージって、デヴィッドバーンと一緒にやって、ああいった環境音楽なくみたいな
 のをやり始めたでしょ?」
M「うん。」
T「それでブライアンイーノのアルバム僕持ってたの。田舎にも売っててさ、郡山
 の(笑)。」
M「(笑)」
T「そん時初めて環境音楽っていうのを知ったんだけどさ。高校2年か3年の時。」
M「うん。」
T「ブライアンイーノのアルバムに、ピアノばっかりの曲なんですよ。ブライアン
 イーノが弾いてるヤツなのかな?で、ブライアンイーノが自分で原稿書いててさ
 ほいで『このアルバムはできる限り可能な限り小さい音で聴いてくれ』って書い
 てあって。小さい音で聴くとこのアルバムがわかるから!とかその他にもいろい
 ろ書いてあったんだけど。で、聴いてみたんですよ僕すっごい小っちゃい音で。
 したらね、すっげー良かったの!」
M「へえー。」
T「ほいでビックリしちゃってさ。『何だこれ!』」
M「(笑)」
T「そのぐらいからですね、環境音楽とかイーノとか今で言う『アンビエント』の
 走りみたいな。」
M「うんうん。」
T「あーいうのもしばらく聴いてる時期ありましたけどね。で、それとはまた別で、
 ドビュッシーだ何だかんだって同じ所にあったからさ、聴いて。」
M「うん。」
T「ドビュッシーはもう素直にいい曲じゃない?」
M「そうだね。」
T「もの凄い有名な『亜麻色の髪の女』とかあるじゃん。あれなんて僕こないだピ
 アノでコピーしましたよ(笑)。」
M「(笑)」
T「あれとかはさ、絵画もそうでしたけど、あの頃の印象派の…あの、ジャパンブ
 ームだったでしょ?」
M「あ、はいはい。北斎の浮世絵とかね。」
T「北斎とかそうそう。で、ドビュッシーもそうでさ。だから『亜麻色の髪の女』
 とかもそうじゃないですか。あのメロディー、何っつったらいいの?♪タンタン
 タン…何とか抜きっていうヤツ。2つの音が無いんですよ、ドレミファソラシド
 の内の。」
M「あー…和風な。」
T「そう昭和歌謡のさ、昭和歌謡じゃないや、大正歌謡?わかんないけど、古賀メ
 ロディーみたいなああいう音階。あれなんですよね『亜麻色の髪の女』も。で、
 それを更に坂本龍一さんはまた変えて。」
M「あーなるほどね。」
T「『戦メリ』なんてそうじゃないですか。」
M「うん、そうだね。」
T「『戦メリ』は♪タタタタターンって、ああいうメロディーは、そういうの何っ
 つーの?ラとシだっけ?何か抜けてるんだよ。童謡みたいなさ。」
M「そうだね。」
T「『赤とんぼ』のメロディーみたいな、ああいう音階で作ってあって。」
M「うんうん。」
T「何かね、そういうのを凄い聴いて『あ、そうなんだ』とかやってた時期ありま
 したけどね。」
M「うーん。」
T「で、それとまた別に、ドビュッシーで好きなの僕はね、ピアノソナタっつーん
 ですか?ピアノだけのヤツが好きなんだすよドビュッシーの。」
M「はいはいはいはい。」
T「『沈める寺』とか、ああいうの大好き。」
M「タイトルもカッコイイんだよね。」
T「そうそうそう。『沈める寺』とか凄いいい。めちゃくちゃいいっすよ。まあ要
 するにホールトーンスケールなんだけど。」
M「うんうん。」
T「ホールトーンスケールって『地球独楽』のイントロの♪ダダダダダラララ…」
M「そうだね。」
T「あれなんてホールトーンスケール。あれをただダーン!低音と下でバーン!と
 やるだけみたいな。そうすると凄いドビュッシーっぽくなって。僕ピアノ弾く前
 ドビュッシーのマネとか言ってホールトーンスケール弾くだけでね、最高気分い
 いっす(笑)。」
M「あー(笑)そうだね。」
T「クラシックはね、ドビュッシーとあとメシアンって知ってます?」
M「はいはいはい。」
T「アウシュビッツにいたんですよね?」
M「そうだね、うん。」
T「まあ近現代の音楽で。ドビュッシーあたりから要するにドレミファソラシドっ
 ていう普通の音階から崩れて行くんですよね。で、ドビュッシーが全音階のホー
 ルトーンスケール作って、メシアンになるとそれが全音半音全音半音っていうさ、
 何だっけあの、タモリの番組でさ『あなたの知らない世界』じゃない、何だっけ
 なー、ちょっとオカルトっぽいドラマの番組あったでしょ?」
M「あったねー何かねー。うん。」
T「あれのテーマ曲で♪タラリラリン ティラリラリンって知ってる?」
M「はいはいはい。」
T「あのメロがさ、だからメシアンが使った音階なんですよ。ナントカ・ディミニ
 ッシュ・スケールっていうんですけど。あれにハマった時期もあって。高校の
 時ね、メシアンとか好きで聴いてて。」
M「カッコイイ…」
T「それとあとね、ライヒとか。そっから僕はライヒとか入っていったの。」
M「あ、そーか。じゃあ今の俺と一緒じゃん。」
T「(笑)」
M「(笑)」
T「だからさ、テクノの…ミニマルからライヒとかっていうんじゃなくて。ライヒ
 ってミニマルだけやってた訳じゃないでしょ?」
M「うん。」
T「最初は近現代の中でやっててさ。で、その中からミニマルみたいなああいった
 のが出てきたんだけど。」
M「うん。」
T「初めて来日した時もミニマルの曲とかあまりやってないんですよ。」
M「ふーん。」
T「あ、っていうかミニマルのコーナーがあって、あと普通の近現代のコーナーが
 あって、みたいな。で、僕その当時は近現代みたいなああいう方が好きで聴いて
 たんだけど。」
M「ふーん。」
T「最近やっとその、ここ5年ぐらいでライヒのミニマルみたいなものもまあ面白い
 なあと思うようになりましたけどね。」
M「凄いよね。ちょっと見直した。」
T「(爆笑)」
M「高校時代でそういうの聴いてたんでしょ?」
T「高校の時ホント大好きでしたよ。」
M「うん。」
T「それと、訳わかんないだから普通のパンクとかも好きだしさ。」
M「ね。そうだよねうん。」
T「そうそうそう。でもねあの当時そういう雰囲気あったよ。」
M「あ、ホント?」
T「うん。」
M「俺バカだったのかなぁ。」
T「(笑)」
M「(笑)。とにかくでもまわりの子とかに聞いてもね、クラシックとか言っても
 わかんないねみんな意外と。」
T「わかんないですよね。うん。」
M「僕もそうだったけど。バッハとかさ、こう毛とか巻き巻きな(笑)この、いか
 にも昔の人っていう感じじゃないですか(笑)。
T「うん(笑)。」
M「それとドビュッシーってさ、どれぐらい離れてる?もう何百年って離れてるで
 しょ?」
T「あーそうですね。うんうん。知らない俺。」
M「ドビュッシーなんかさ今世紀の人じゃん。今世紀っていうか20世紀初めぐらい
 まで生きてたから。」
T「あ、そうなんですか?俺よく知らない(笑)。」
M「そうそう。20世紀初めまで生きてたから。だからまあ20世紀の人か。まあつい
 この間の人なんだよ。」
T「うんうん。」
M「SP盤とかでも残ってるらしんだね音源が。」
T「あ、そうなんですか?自分で弾いたヤツが?へえー。それ聴きたいですね。」
M「ラヴェルとかその辺はまだちょっと残ってるとかっていう話が。」
T「あ、そうなんですか。へえー。」
M「わかんないよ。残ってないかもしんないけど。」
T「(笑)」
M「だから割と今の人な訳じゃん。そのメシアンとかもさ。」
T「うん。」
M「それがね、最近やっとわかってきた(笑)。」
T「あーそう。メシアンね、すげーカッコイイっすよ。」
M「ね(笑)。そうみたいね。」
T「うん。あのね、めっちゃカッコイイよ。普通にクラシックのNHKとかでやってる
 じゃんよくナントカ公会堂で学生とかがメシアンの曲。めっちゃカッコイイっす
 よ。もうヤバイくらい。普通に曲としてカッコイイっていうかね。」
M「うん。」
T「凄い好きですけどね。ジャズとかに似てますよ。セロニアスモンクとかメシア
 ンに似てるなあ。あとエリックドルフィーとかさ。」
M「うん。」
T「エリックドルフィーの『アウト・トゥ・ランチ』聴くのと、メシアンの音楽聴
 くのと同じように聴けるっていうか。」

***
M「で、俺なんかリゲティとか割と好きでさ。」
T「リゲティ。知らないです。」
M「割とドイツ系が好きなんだけど。で、シュトックハウゼンとかになるんだけど
 さ、だんだん。」
T「あー。」
M「でもね、ドイツの現代音楽、キツイねー!やっぱり。カッコイイけど。」
T「あーそうですか(笑)。」
M「みんなね、黙る(笑)。」
T「(笑)。え?ドイツの現代音楽って誰なの?ジョンケージってドイツ人?」
M「ジョンケージはアメリカ人だけど。いや、それでね、そのクラシックで結構凄
 いレコード買っちゃったのよ何か。」
T「うんうん。」
M「その3回目買いに行った時に、お茶の水の神保町のお店で、お店の人が『こうい
 うのがちょっと入ったんですけど』とか言って出してきてジャケット見たらさ、
 10インチってほら小っちゃいサイズのアナログでさ、グラムフォンっていうレー
 ベルのもう字だけのヤツでさ。」
T「うんうん。」
M「これ何のレコードかわかんねえなあとか思って『ちょっと聴かして下さい』っ
 つったら、電子音楽なんだよ。」
T「これ電子音楽なの?このジャケ?」
M「うん。」
T「カッコイイねー!」
M「しかも50年代の半ばなんだよね。」
T「へえー。」
M「50年代の半ばってさ、エレキギターとかが出たか出ないかって頃じゃない?」
T「まあ(笑)そうですよね。」
M「それでドイツのケルンのWDRっていう放送局があって、そこで電子音とあと声楽
 をミックスしたようなレコード。」
T「あーなるほど。やってたんだ。」
M「だから記録的なレコードらしくて。」
T「うん。ではね『アーネスト・クレネイク』と読むのだろうか?わかりません。
 で『スピリタス・インテリゲンチェ・サンクタス』…」
M「凄いね(笑)。」
T「はい(笑)。」

M-04.スピリタスインテリゲンチェサンクタス/アーネストクレネイク

T「これがさ、だからもう…」
M「(笑)」
T「1950年の音なんですよね?」
M「これ何かトイレ行けなくなっちゃうよねこんなの聴いてたらさ、もうオシッコ
 …(笑)」
T「(笑)行けないね。でもマジだよね?これこの人の作ってるの。」
M「うん。」
T「凄いね。」
M「面白いでしょ?」
T「まあ面白いけど(笑)。」
M「こういうのがあったっていうのが面白いなあ。」
T「面白いよね。でもさ、今でこそテクノとかドイツに『カン』っていうグループ
 もいましたけど、あーいう流れでこういった音楽も聴けたりするのかもしれない
 ですけど。恐らくこれやってる人達はやっぱりクラシックの流れに対する破壊…
 ダダか何かわからないですけど、そういう流れから真剣にこの40、50分からなる
 曲を毎日毎日こう考えて作ってる訳でしょ?(笑)」
M「うん。」
T「凄いですね(笑)ホントに。」
M「いやホント(笑)笑っちゃいけないんだけどね。」
T「笑っちゃいけないんけど(笑)。あれですね、レコードいくら聴いてもやっぱ
 聴き足りない未知の部分ってあるんですね。」
M「そう。そういうのが面白かったりね。」
T「面白い、なるほどな。それ刺激だなあ。僕もちょっと行ってみよう。そういう
 場所に行くだけで何か…」
M「行かない?今度。」
T「行こうよ!うん。何かねかなりアイデア出てきそう。変なアイデアって意味じ
 ゃなくてね。発想の転換という意味でね(笑)。」
M「そうそう。ちょっとピクっとくるよ何か。」
T「あーそうね。こういう世界があるんだ。」
M「だって俺の隣でレコード見てるこの人は指揮者かな?とか思うよなんか(笑)」
T「(爆笑)」
M「思うじゃんこうやって(笑)。それだけでも凄い楽しい。」
T「楽しいね(笑)なるほど。何かこう思考回路の風穴みたいなの開けられますね。
 バコーン!と。」
M「うん。だから俺タートルネックとか着て行こうかなと(笑)。」
T「どーしてそれ(笑)…凄い厚手のね。」
M「うん(笑)。」
T「なるほど、はい。」

<エンディング>
T「も〜何なんでしょう(笑)、話が何か訳のわかんない方向に行きました。」
M「変なもんかけたね〜。」
T「かけましたけどね。で、今ちょっと話してたんですけどこの間随分前ですけど、
 バレエを僕連れられてしょうがなく行った事があるんですよ。」
M「うん。」
T「そうするとね、もの凄い人が入ってんですよ!」
M「そうなんだよねー。」
T「何千人も。で、こういうコミュニティーがあるんだ!って事で僕ビックラこき
 ました。凄ーいめちゃくちゃ盛り上がってんですよ。バーっ!って拍手が、カー
 テンコールで花束バーン!と。」
M「そういう世界もあるよね。」
T「こういう世界があるんだ。そこに桃井かおりさんがいたんですけど…関係ねー
 や(笑)。」
M「(笑)」
T「でも、凄いやっぱ我々のね、こうロックとか聴いてる人の知らない世界がね、
 やっぱ、ある!」
M「そうだねー。リキッド行ってるだけじゃーわかんないよ。」
T「リキッド行ってるだけじゃ(笑)。わかんない世界がまだまだあるなと。だか
 ら音楽聴く事も捨てたもんじゃないなってね(笑)。」
M「そうですね、うん。両方聴くのがいいよね。」
T「そうですね両方。そっちだけっていうのはやっぱつまんないですね。そういっ
 たこういろいろな振り子を行ったり来たりする人生の面白さ、楽しさってあるな、
 という事で。えーと、リクエスト/感想/ムーグさんに対する質問とか、あとクラ
 シックに関する情報…」
M「クラシックに関する情報って何だよ!(笑)」
T「そうそう。あとバレエとかね。えーと(笑)そういったノウハウとか、わかん
 ないですけど。今日のお客様は山本ムーグさんでした。」
M「ありがとうございました。」
T「ありがとうございました。また来週。バースト!」

 


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Listening & Reported by Jun Arai
Page Written by Kiku^o^Sakamaki