オケラのくりごと  定休日

 オケラの店の定休日は毎週水曜である。 曾ては年中無休で午前11時から午前3時まで営業していたが、6年前に当時の統計で最も売上の少なかった水曜を定休日にした。 その後午後10時以降を担当してくれていた二人の従業員が、夫々の理由で同時に辞め、徐々に閉店時刻が早くなり、開店時刻は遅くなって、遂に二人だけとなった現在では、午前11時半から午後9時半まで、場合によっては途中で一時閉店と、ひと頃に比べると営業時間は約半分になってしまった。そもそも金曜日のピークは午後10時過ぎで、今の営業時間ならば金曜定休の方が良いと思うのだが、迷いつゝも未だに水曜定休を続けている。 会社勤務の時には感じなかったけれど、この社会はすべて子供達とサラリーマンの生活を基準にして成り立っており、大半は土、日曜日に休み、僅かな残りが月曜から金曜までの5日間に夫々の都合で分散するので、特に天気の良い水曜に休むのはほんの一握りになってしまう。 結婚式も法事も同窓会も皆、日曜を中心に設定されるし、生存者の顔合わせが目的のような葬式も、水曜になることは少ないから、有給休暇のないオケラ達の世間との付き合いは段々、益々狭くなる。日々お会いするお客様の数は多いけれど、コケラのいないオケラ達には、老人ホームに入っても訪ねて来る人は少ないだろうし、告別する相手もやがていなくなるのだろうと思うと、一寸寂しい気がするけれど、これも仕方があるまい。さて、待望の水曜日、メケラに連れられて買い物に行こうとすると手近の百貨店も定休日、オケラの好きなプラネタリウムもうまいラーメン屋も定休で、何も一緒に休まなくてもと恨めしいが、オケラ達の為に開けてくれる気配はない。結局これを書いたり、SFC(もぅ判った?)をしたりで、銭湯に行く以外自宅でごろごろしがちになるが、しかしそう悪いことばかりではない。 例えば、水曜日には割引が多い。 健康ランドも、温泉旅館も、団体旅行も割引日を水曜に設定することが多いし、そんな風だから何処に行っても比較的空いている。海や山、映画館も寂しいくらい。 同じ費用でゆったりと中身の濃いサービスが受けられるわけ。 待ち時間は少なく、交通渋滞は首都高速を除いて殆ど無いから、時間を有効に使える。 オケラのアルトなどは軽のくせに自分の能力を超えて疾駆する。 お役所や金融機関、一般会社との話は相手が営業しているから好都合だし、巷にガキメラが少ないのもうれしい。 一番嬉しいこと? そりゃマァ、何といってもオケラの店が休みであること。 ヘヘヘ、メケラと別れていられること、なんてこれっぽっちも言わないところが憎いでしょ。
−−−−−−−−−−1994.05記

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