オケラのくりごと  工夫

  うどん屋になって約七年、オケラも種々工夫した。 先日も国会議員になる方法を考えたのだが、僅かに日本新党の公認の取り方が判らなくて挫折した。だから今回の提案募集には、沢山あるネタの内のどれで応募しようかと悩んだが、大きな提案は不要なようだから、兎に角誌面一杯まで数を揃える事にした。
○その一、茹で釜の排水バルブの漏れを止める方法。
1. 現状および問題点: 茹で釜の排水バルブからチョロチョロと湯が漏れる。この為常に湯量に気を配らねばならず、麺の二次茹でもまゝならない。
2. 改善案: 処分麺が出来た時、一本づつ丸めてラップで包み、冷凍保存する。 釜に湯を入れ3〜5cm位になった時、排水口にうどん半本を攪拌棒で手加減しながら突っついて詰めてやる。 残りの半本は次回用に冷蔵する。
3. 効果: 漏れが止まるので作業がスムーズになり、当面の修理費が要らない。 この安心感は、経験してみないと判らないかもしれない。
○その二、麺の賞味時間を引き伸ばす方法。
1. 現状および問題点: 小人数で店を運営する場合、混雑時を前にどうしても茹でだめをする必要があるが、水を使って玉を取ると劣化が早い。
2. 改善案: 麺の腰は麺の表面と中心部の水分含有量が異なることに由来する。 だから、腰を維持するには余分な水を与えなければよいとの発想で、茹で上がった麺を冷水、夏場は氷水を使って冷却し、その後完全に水を切る。蒸籠の水切りは勿論、上に掛ける布もできれば乾いたものを使う。
3. 効果: 生地や茹で時間等、その他の条件に左右されるので具体的な時間は決められないが、これをするだけで賞味時間が大分伸びる。
○その三、半端のかやくご飯の素の保存方法
1. 現状および問題点: かやくご飯を五合炊く場合、かやくご飯の素の分割と、残りの保存に苦労する。 特に肝心の汁気を等分するのは至難の業。
2. 改善案: かやくご飯の素の封を切る前に、全体を平にし、分けたい所に指で線を引くようにして内容物を押しやり、シーラーでシールしてしまう。このシールの線のどちらか片側に鋏を入れて使用し、残りを保存する。
3. 効果: 残りを清潔に保存できる。 四分の一まで可能。 ポテトサラダの場合はシールの線を二本作ってその間を切り、袋の角を切って絞り出す。
○その四、柄付きモップを前後にずれなくする方法
1. 現状および問題点: モップが少し古くなると、特に左右の両端の何本かが前又は後に廻って片重りになることにより、前後にずるずるとずれて使い難くなる。 一度ずれ始めると、なおしても直してもその度にずれる。
2. 改善案: モップの左右両端の前後の五〜六本で、モップそのものを、モップが引っ掛かっている太い針金に縛りつける。 更に中間の二〜三点で、内側の前後の夫々二〜三本を同様に針金に縛りつける。
3. 効果: やってみればすぐ判るが、とても快適に掃除ができる。
○その五、取り鉢に麺を簡単に取り分ける方法。
1. 現状および問題点: お子様に取り分ける時や、鍋から取り鉢に麺を取る時、大抵のお客様は小鉢を鍋や丼の上に持ってきて、箸で麺を高く持ち上げて小鉢に入れようとするが、麺が長くて入らず、難儀している。
2. 改善案: お客様に麺が手よりも長いことと、小鉢を鍋や丼に対し手前下に持ってきて引っ張り込むことを、事務的に、且つさりげなく教える。
3. 効果: コロンブスの卵。 お客様が恥ずかしそうに驚くのが楽しい。
○その六、中華ドレッシングなど、掛けダレの節約方法。
1. 現状および問題点: 夏は過ぎてしまったが、五目冷やしの胡麻ダレやコールドチャーシューの中華ドレの量が多く塩っぱいというお客様がいる。
2. 改善案: タレを醤油差し等に入れ、お客様に好きなだけ掛けながら食べて戴く。 器によっては出が悪いので要注意。
3. 効果: 結果的に消費量が半分若しくは三分の二程度に減少する。 冷やしきつね等のざるだしについても検討中だが、適当な器がないために実行していない。 丈夫で透明な 300ml位の器があるといいのだが。
○その七、本誌の配布が待ち遠しくなる方法。
1. 現状および問題点: 本誌の記事がつまらなくて読む気がしないし、配布されてもそのまま捨ててしまう。
2. 改善案: 身辺雑事、芸術性の有無を問わず、自ら投稿すること。 但、最初から読まない人にどうやってこの案を知らせるかは、別途考えること。
3. 効果: 時にボツになったりするから、どうなったかと心配で配布が待ち遠しくなる。 又、他の読者が楽しむし、第一、仲間が出来てオケラが喜ぶ
○その八、これぞ小さな提案の見本。 こんな場合の記念品は、一人一つではなく、一件一つにすること。 そうすれば発案者が取るに足りないと思っている‘小さな’提案を拾い上げられるかもしれない。 例えば、食器の欠けた面にマジックインクを塗るなど、取るに足りないけど実用的だと思うよ。
これで記念品八つに賞金八封を頂戴する心算。 表彰式用のモーニングのほこりはもうメケラが払ったし、後は吉報を待つばかり。 エ? 所定の応募用紙に書かないと駄目? それに匿名では受付けない? そんなこと言って‥‥、きったねェ。 でも、これじゃやっぱり無理かなァ、客観的に‥‥。
−−−−−−−−−−1993.10記

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